日銀の金融政策決定会合の全員一致は打破できるのか
3月20日から日銀の副総裁が交代し、元日銀理事の内田氏と元金融庁長官の氷見野氏が就任した。元日銀理事の内田氏はいかに異次元緩和を継続させるかに力を注いでいたとみられる。しかし、そのために政策委員の結束を固めたかのようにも見受けられた。
2022年7月23日付で片岡審議委員が日銀審議委員の任期を終えたあとの日銀金融政策決定会合では、今年3月の決定会合まですべて全員一致となっていた。
特に昨年12月20日の金融政策決定会合では、超金利コントロールのレンジを拡大するという、市場参加者にとってもサプライズとなったことを行っても、それに疑問を呈する政策委員はいなかった。
2022年7日に任期満了で退任した片岡剛士審議委員、鈴木人司審議委員の後任は高田創氏と田村直樹氏である。それまでは片岡委員が単独で反対票を投じていた。その理由は公表文によると下記の通り。
(イールドカーブコントロールに対し)片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。
(資産買入れ方針に対し)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。
片岡委員はリフレ派であり、それによる追加緩和への要求であり、かなり違和感はあったが、それでもリフレ派としての意思を通していた点については評価できる。
しかし、片岡委員以降については、個々の政策委員は沈黙を保ってしまっている。しかも、2022年からは物価の高騰、欧米の中央銀行の積極的な利上げ、それらによる長期金利の上昇等々。どう考えても異次元の緩和継続に全員一致で賛成することはむしろ考えづらい状況であった。
しかしその意地、いや維持を通すため、政策委員がワンチームになったかのようにも見えた。実はこれでは日銀法改正以前の日銀に戻ってしまったとも言える。
いわゆる円卓問題である。日銀執行部が決めたことを形式的に政策委員が決定するという、いわゆる政策委員が「スリーピングボード」と揶揄されていた。それに戻ってしまったかのようにみえた。
これが良い意味で打破できるか。日銀の新体制はむしろスリーピングボードの継続強化のようにも見えてしまう。政策委員には新体制となった以上、しっかり仕事をしてほしいと思う。