新しい新型コロナワクチン接種券の送付が始まる 接種はどうすればよいか
9月20日から全年代を対象に、新型コロナワクチンの「秋開始接種」が始まります。そろそろ接種券が届き始めるかもしれません。使用されるワクチンは、新しいオミクロン株XBB.1.5対応1価ワクチンで、現在流行しているXBB系統に対しても有効です。この概要について説明したいと思います。
現在の流行はEG.5系統
XBB系統は、現在流行している新型コロナのオミクロン株の一種です。EG.5系統(エリス)という変異ウイルスがもっとも多いとされています。
症状は、その他の変異ウイルスと同様で、発熱、のどの痛み、咳、鼻水などがよくみられます。
当院は軽症から中等症まで広く新型コロナを診療していますが、ワクチン接種をすでにやめた患者さんで、パンデミック初期によく目にした「新型コロナ肺炎」を再び見かけるようになりました。
変異ウイルスの毒性が強いというよりも、「ワクチンの重症化予防効果切れ」のような現象を目にしているような印象です。
「令和5年秋開始接種」
9月20日から始まる「秋開始接種」では、新しいXBB.1.5対応1価ワクチンが用いられることになりました。
これまで年代別に接種条件が非常に分かりにくかったと思いますが、「初回接種」(5歳以上は1・2回目、4歳以下は1~3回目接種)を終えた人であれば、ほぼ全ての年齢層がこのワクチン接種の対象になります(図1)。
未接種の人は当該接種事業の枠組みには入っていないものの、「新ワクチン」が用いられますので、結局のところは全員がこのワクチンの接種対象になります。
生後6か月~4歳の初回接種(1~3回目接種)でも、今後「新ワクチン」が使用されていく予定です。
接種費用・接種券について
ワクチンの接種費用は無料です。現時点では、令和6年3月31日まで「特例臨時接種」に位置付けられており、自己負担なしでワクチン接種が受けられます。
接種券は、対象者全員に送付する自治体と、申請がなければ送付しない自治体があるので、お住まいの自治体のウェブサイト等を参照してください。
XBB.1.5対応1価ワクチンの効果は?
新しいXBB.1.5対応1価ワクチンは、現在流行しているEG.5系統に対しても、中和抗体を獲得できると報告されています(1)(図2)。
オミクロン株対応ワクチンが登場したときも、「BA.4/5ワクチンはBA.2には効かない」などの誤解がありましたが、直近で変異しているウイルスはそれほど遠い親戚関係ではなく、今回の「新ワクチン」も広い範囲で新型コロナに有効と理解してよいでしょう。
ただし、初期の従来株ワクチンを3回接種していても、XBB系統の新型コロナに対して十分な免疫は獲得できていません。この点には注意が必要です。
接種はどうすればよいか
「いつまで接種し続ければよいのか」「いたちごっこではないか」と思われるかもしれませんが、インフルエンザワクチンでさえも、流行株を年ごとに狙っているので、いたちごっこといえばいたちごっこです。
ワクチンによって終生免疫まで期待されるわけではないので、いたちごっこ自体は悪いことではありません。むしろ、メッセンジャーRNAワクチンの技術変革によって、これほどスピーディに対応できることに感嘆すらします。
「新ワクチン」の接種が強く推奨されるのは、高齢者や基礎疾患がある人など重症化リスクの高い人です。病気がない健康な人については、定まった推奨はありませんので、個々が接種を判断することになります。
新型コロナは、インフルエンザより周囲への伝播性が高く、感染するとウイルス性肺炎を起こしやすく、つらい思いをされている方も多いことから、個人的にはインフルエンザワクチンより優先度が高いと認識しています。
インフルエンザワクチンを普段から接種している人は接種してよいと思います。新型コロナワクチン未接種あるいは1年くらい接種していない人は、「特例臨時接種」が終了する令和6年3月31日までに一度接種しておくことをおすすめします。これはあくまで私見です。
(参考)
(1) Chalkias S,et al. medRxiv DOI: 10.1101/2023.08.22.23293434.