FRBの利上げ一時停止の背景
FRBは5日、6月13、14日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。この際には全員一致で、金融政策の現状維持を決定した。利上げの停止は11会合ぶりとなった。
議事要旨は「この会合で政策金利を0.25%引き上げることを支持したり、そうした提案に賛同したかもしれないと話したりした参加者が何人かいた」と明らかにした。「何人か」は2~3人を示す「数人」よりも多いことを示す(6日付日本経済新聞)。
ある意味、この会合での利上げのスキップは会合までに既成事実化されていた。市場もそれを織り込みに行っており、スキップ決定は予想通りということになった。「全員一致」となっていたことも、この会合ではスキップの選択が無難かとの認識を詰めていた結果かとみられる。
ただし、これで利上げが終了したわけではないことも積極的にアピールしていた。議事要旨では、今後の利上げ方針について、参加者は物価や経済のデータ次第で会合ごとに決定していくことで一致したともあった。
前回の利上げ局面(2015~2018年)は、最後の1年間は1会合おきに利上げを見送った経緯があり、今回も同様となる可能性がある。
「物価上昇率が目標である2%に落ち着く明確な兆候はほとんどない」こともあり、FRBは積極的な金融引き締めを持続させるが、その持続性を確保するためにも、利上げの間隔を拡げる必要が出てきたのかもしれない。
市場では少なくとも、FRBによる早期の利下げ観測は後退している。いずれ米経済はリセッション入りし、利下げに転換せざるを得ないとの見方も強い。
このため短期金利が長期金利を上回る逆イールドがリセッション入りを強く示唆しているとの見方もある。ただし、急速な利上げ局面での逆イールドの発生は、リセッションを意識したものというより、期間の違いにおける違確実性によるところが大きい。
短期金利は政策金利によってそのまま引き上げられるが、長期でみれば過去にあまり経験のないような急速な利上げによる先行きの不実性は当然高くなり、長期金利は短期金利ほど上昇しなくなるのはある意味、当然のことである。