シーズン2年目を迎えたBリーグと京都ハンナリーズの光と影
今年3月まで米国滞在だった自分にとってBリーグ取材は今回が初めての経験だった。これまで米国でNBA、WNBA、NBADリーグ、ABA等々メジャーからマイナーまで様々なプロ・リーグを取材してきたが、率直に言ってBリーグは期待以上の存在だった。会場内の雰囲気はトップ・リーグのそれに近いものがあった。
取材に回ったのは京都ハンナリーズ対三遠ネオフェニックスの2連戦。ホームの京都は、昨シーズンB1で唯一平均観客数が2000人を割り込んだチームだ。2年目のシーズンを確かめる上でも、最適なケーススタディになると感じていた。
結果から見れば第1戦が2324人、第2戦が2427人と多くのブースター(Bリーグではファンをこのように呼ぶらしい)を集めることに成功している。試合自体も連勝を飾り、昨シーズン西地区5位に終わったチームにとって上々のスタートとなった。
この2試合で感じたのは運営側のブースターを飽きさせない演出だ。単にバスケットボールを見せるのではなく、試合前、ハーフタイム、タイムアウト、試合後と空いた時間も工夫を凝らし、常にブースターを盛り上げ続けた。そのエンターテイメント性の高さはNBAに匹敵するように思えた。会場に足を運んだブースターは老若男女あらゆる層が顔を揃え、それぞれが心地良く試合観戦を満喫している様子だった。
特に印象的だったのが子供連れの家族の多さだ。どの競技であれプロチームにとって最も重要なターゲットは家族だろう。週末に家族みんなで楽しめる娯楽としてBリーグを選んでもらえるようになれば、観戦で楽しい思い出をつくった子供たちが、今度は彼ら大人になった時に自分の子供たちを連れて会場に足をくれるようになる。そうした“プラスの連鎖”が起こる可能性を秘めた理想型がそこにはあった。
しかしその一方で、2試合ともに会場が満員に膨れあがったわけではなく、空席も目立っていたのも事実だ。すでに固定のブースターが定着しているようだが、やはり更なるブースターを集める必要が求められるだろう。ただそのためには選手たちの素晴らしいプレーや運営側の演出だけは限界が生じてしまうのも確かだ。
端的な例がインフラだ。会場となった『ハンナリーズアリーナ』は元々京都市の総合体育館だ。いわゆる米国でプロスポーツ競技が実施されている「アリーナ」とは別次元のものだ。音響機器やビジョンなどはかなり旧式で、運営側の演出を最大限に引き出せるようなシステムではなかった。トイレの数も少なめで、ハーフタイム中は長蛇の列ができていたし(しかも選手たちのロッカールームにもトイレがないらしく、ブースターと同じトイレを使用している場面に遭遇している)、飲食施設もまだまだ十分とはいえなかった。こうしたインフラ整備ができるようになれば、まだまだブースターを満喫させる環境を整えることができるはずだ。
ただインフラ整備をするにはどうしても地元行政の支援が必要になってくるし、彼らにインフラ整備を決断してもらうには、納得してもらえる十分な実績を残すしかない。それまではチームが従来通り、最大限の努力をしていくしかないという難しい側面もある。その辺りについて浜口炎ヘッドコーチはどのように感じているのだろうか。
「僕たちチームが現場でできることは、ブースターにしっかり気持ちが伝わるようにアクティブに、ハードにプレーするということが1つだと思います。もちろん勝敗によってチームも地域も盛り上がりますので、勝ってチャンピオンシップ争いに絡むというのが最低ラインだと思います。
あとは京都ハンナリーズが継続的にやっていることなんですけど、地域の貢献活動であったり学校でのクリニックと、草の根で地域に密着して活動するということで子供たちを含め地域の人たちがやって来るようになると思います。そういう部分でもチームとしての活動がより必要になってくると思います」
さらにキャプテンの内海慎吾選手にも聞いてみた。
「まず1つはホームゲームを大切にするということを感じていて、ホームゲームでホームチームが勝つというのは、応援してくださる人たちが喜ぶ試合だと思います。ですので今シーズンは特にホームゲームでしっかり勝ちを重ねていけるようにしていくことが大事ではないかと思っています」
やはり現場のコーチ、選手たちができることは、ブースターを熱狂させる質の高いプレーを続け、勝利を重ねていくしかない。今回の開幕2連戦を取材した限りでは、浜口ヘッドコーチの言葉通り、選手たちの気持ちが伝わってくるような熱いプレーを披露していた。
新たに7人の選手を加え今シーズンに臨んだ新生・京都ハンナリーズ。今後どんな戦い方をみせてくれるのか、ハンナリーズを中心に2年目のBリーグに興味津々だ。