自己顕示欲を満たしたい、報酬が欲しくて…撮影者以外による拡散と炎上騒ぎ、その理由
拡散された写真投稿者と当事者は別人…状況説明
夏休み期間中に世間を大いに騒がせた、学生やアルバイト店員による「問題行動を捕えた投稿写真による炎上騒動」。冬休みに入り、再び活性化を見せている。中でも昨日、12月24日に牛丼チェーン店松屋からプレスリリースとして発表された話では、少々これまでとは異なる動きも見受けられている。
まずは簡単な状況説明。今件は松屋の発表リリース「お詫びとお知らせ(PDFファイル)」にある通り、「松屋店内で、調味料の唐辛子容器に鼻を刺している学生の写真がインターネット上で広まっている件について、この店舗を特定。唐辛子の廃棄と容器のクリーニングを実施」「該当学生には法的対処を検討」とするものである。
同リリースや写真の周知拡散経由を探ると、大体次のようにまとめることができる。該当学生が松屋で食事をした際に、おふざけ(のつもり。少なくとも本人はそう考えていたはずだ)で調味料の唐辛子のチューブに鼻を突っ込む。写真そのものを見るに同席者がおり、その同席者が該当写真を撮影し、投稿。
その写真を「他者による『不毛で非難対象とりうる行為をした自慢写真』を自分が撮影・行為を実行したかのように投稿し、当事者に成りきって他人へのリアクションを行うことで、注目を集め集客する」、いわゆる「釣り行為」を日常茶飯事的に行うアカウントが取得し、撮影者本人のふりをして投稿。その写真に対する意見などに撮影者本人のごとく反応し、これが元で該当写真は大規模に拡散される。
「釣り行為」者は成り切りをしたまま追い詰められたふりをし、事情をリアルタイムで説明すると泣き言をもらし、自分のポッドキャスティングへ誘導。その上で「自分は関係者ではない。釣りでした」と暴露を行う。
今件の「釣り行為」者は、この類の行為の常習犯。これまでに何度も同じような行為を繰り返しているのが確認されている。釣り行為中はアカウントのプロフィール写真やハンドル名、プロフィール内容まで変更し、投稿写真の撮影者であるかのようにふるまう、念の入れよう。
ちなみに現在は通常のアカウント名・プロフィールに戻しているのが確認されている。
写真がある以上、実際に「調味料の唐辛子チューブに鼻を突っ込んだ」学生がいるのは事実であり、行為当事者はしかるべき対応を成される必要がある。それと同時に、その写真をあおりに用い、自分(のアカウントやポッドキャスティング)に注目が集まるよう釣り行為をした者にも、それなりの対処が成されねばなるまい。百歩譲って「このような行為はしてはいけませんね」という戒め的な投稿ならともかく、当事者のふりをして周囲を煽動したのだから言い逃れは出来ない。
注目を集めそうなネタがあった、だから他人のふりをした
「調味料の唐辛子チューブに鼻を突っ込んだ」「その状況を写真に撮り掲載した」ことの理由は、以前「若者のSNS炎上騒動は利用目的誤認が一因、かも」で解説した事由だと推測される。要は「身内だけのジョーク」としてやったつもりが、世間一般に広まりうる手段を用いてしまったため、不本意に拡散した面が強い(当人らも世間一般に広げる意図はなかったのだろう)。もちろん行為そのものは非難され罰せられるべきものである。
ではその写真を取得した第三者が、どうして「釣り行為」、つまり自分が撮影当事者であるかのようにふるまい、他者との対応を行い、意図的に相手を怒らせる反応を示したのか。それは「お手軽に目立ちたい、集客したい」「自己顕示欲を満たしたい」から。そして「自分は集客する、目立つような材料を持ち合わせていない」状況で、「目の前に目立ちそうな材料があった」から。
「このようなことがあったよ、という情報共有を望んでいただけだ」とする弁護の声もある。しかしそれなら、写真撮影の当事者に成りきる作業を行い、対応する必要性は無い。
積極的な「釣り行為」にまでは至らないものの、他者のコンテンツ、例えば写真や文章をそのままコピーし、自分が創生したかのように発言をする行為、いわゆる「パクり」は、ソーシャルメディア上ではよく見かけることができる。こちらも理由は多分に同じで、「気軽に目立ちたい」からに他ならない(いわゆるアフィリエイトの類をしていれば、「より多くの報酬を得たくて」という理由も加わることになる)。今件はその上に成り切り行為を継続して他者とやり取りを行い、挙句の果てに自分のポッドキャスティングへの集客を図っており、さらに悪質である。
報いはありやなしや
写真の当事者(容器を鼻に刺した本人)の行為が業務妨害に相当するのは言うまでもない。一方で「釣り行為」をした者が法的要件上抵触しうるか否かは、判断が難しい。
しかし少なくとも多大なる迷惑行為には違いなく、各ソーシャルメディアにおける複数の利用規約に違反していることには間違いない。今件ではツイッターを介した釣り行為だが、「Twitterルール」に照らし合わせれば「なりすまし:他者に誤解や困惑を招いたり欺くような方法で、Twitterサービスを通して他人になりすます行為」をはじめ、複数の規約に抵触していることは明らかである。
しかもこのタイプの「釣り行為」は、用いられる「素材」が何度となく時を経て再利用される可能性がある。以前の事件を忘れてしまった人もいれば、知らない人もいる。場合によっては数か月の間隔で、再び同じ素材が投入され、「釣り行為」者側の思惑通り、話題として取り上げられ、多くの人が惑わされ、結果的に迷惑をこうむることになる。同じリサイクルでも、これほど地球に厳しいリサイクルなど必要はない。
しかるべき行為にはしかるべき結果を。それが無ければその行為は繰り返され、さらに多くの人が迷惑を受けるばかりなのはいうまでもない。
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