新聞を読む人の閲読時間の実情をさぐる
新聞閲読者の平均時間は27分
紙媒体としての新聞の購読率、さらには閲読率も減退中。それでは現在新聞を読んでいる人は、一日にどれほどの時間を割いているのだろうか。財団法人新聞通信調査会が2016年10月に発表した「2016年メディアに関する世論調査結果」(2016年8月19日から9月6日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法で実施。有効回答数は3308人。有効回答者の属性は男性1568人・女性1740人、18~19歳70人・20代306人・30代460人・40代539人・50代524人・60代696人・70代以上713人)から、確認していく。
今調査対象母集団では朝刊の毎日閲読率は5割強、頻度は問わずにとにかく読んでいる人は7割強。夕刊だとそれぞれ1/4近く、1/7程度となる(購読では無く閲読なので、回答者自身が新聞を購入していなくとも読んでいれば該当する)。このうちとにかく読んでいる人(朝夕刊を合わせると全体の70.9%)に対し、その新聞の1日あたりの閲読時間を尋ね、その平均値を算出した結果が次のグラフ。
平均は30分足らず。男女別では男性の方が4分ほど長く、年齢階層別ではほぼきれいな形で歳を経るに連れて長くなる傾向がある。
経年変化を見ると、1年では大きな変化は起きていないようだが、例外的に30代における減少ぶりが目に留まる。18~19歳の前年度における大きな下げ方と同じようでもあり、イレギュラー的な減少だとは思われるが、下げたことには違いない。他方20代に限ればこの4年ではむしろ増加しているようにすら見えるのが興味深い。もっとも20代は30代同様に新聞を読む人自身が大きく減っていることから、熟読する人のみが閲読者として残り、結果として平均値が上昇している(より厳選されていると表現すべきか)のかもしれない。
ざっとしか読まない人、若年層を中心にかなりの割合
今調査項目は一日の閲読時間に関して、「数分」「10分くらい」「20分くらい」「30分くらい」「40分くらい」「1時間くらい」「1時間半以上」の選択肢から1つ、自分の実情に近いものを選んでもらっている。その回答状況から平均値を出したわけだが、選択肢のうち「数分」、つまり実質的にはざっと読み、あるいは自分の好みの部分にしか目を通していない(例えばテレビ欄のみ、四コマ漫画のみ、一面のみ、株式市況面のみなど)人の割合を示したのが次のグラフ。
全体では1割強だが、男性よりは女性の方がやや多く、そして当然ながら閲読時間が短い若年層の方が「数分」の人は多い。10代では新聞を読む人の半数が、1日あたり数分しか目を通していないと答えている。興味をそそる部分が無いのが主要因だろうが、若年層の新聞閲読層の実情は、ごく一部しか目を通していない現実を知っておくべきだろう。
逆にシニア層では「数分」の人はほとんどいない。50代以上は新聞を読む人の1割強、70代以上では4.0%に留まっている。ちなみに70代以上で1日1時間半以上読む人は1割強。10代では40分以上読む人は皆無との結果が出ている。
7年間の変化をさぐる
今調査では毎年ほぼ同じ条件で今項目に関する問いも実施している。単純比較できる最古のデータが2009年度分なので、それと比較した上で7年間の動きを見ていくことにする。
まずは平均閲読時間の変化。18~19歳と70代以上がプラス値、つまり増えている以外は大よそマイナス、すなわち平均閲読時間が減少していることになる。
大よそ数分ずつ平均閲読時間は減っている。元々閲読時間が長いこともあり、歳上ほど減る分数も大きくなるが、18~19歳と70歳以上は逆に伸びているのが興味深い。もっとも前者は閲読者自身が少数であることから、多分に誤差による可能性も否定できない。ともあれ多くの属性で、頻度だけでなく新聞への注力時間の点でも、新聞離れは起きているようだ。
またざっと読みと判断できる「1日の閲読時間は数分」との回答率は増加しており、新聞は読むものの、注力して隅々まで読み通す人が減っている、つまみ食い的な読み方をしている人が増えているのが分かる。
元々閲読時間が少ない20代以下は増えようも無いが、中堅層となる30~40代で大きな増加を起こしているのが大いに気になる動き。また、閲読時間の長い女性の方が「ざっと見」的な読みをしている人も増加しており、今後男女の閲読時間数の差異が縮まる可能性の示唆とも読み取れよう。
新聞を読む理由は人それぞれで、その理由を充足するのに必要な時間も多種多様。その閲読時間が大よそ減っている現状からは、新聞で必要とされている情報が減少している実情が推測される。情報の流れ方そのものが加速化しているのも理由として挙げられるが、情報取得ツールとしての新聞の立ち位置が、相対的に少しずつ変化している現状もまた、閲読時間の変化に影響を与えているのかもしれない。
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