平均は約70歳…運転免許を自主返納などした高齢者の年齢実情
高齢者の人口比率の増加や一人暮らし世帯数の増加などを主な原因とし、高齢者による自動車の交通事故が社会問題化している。その対応策の一環として進められているのが、高齢者に運転免許の自主返納などを勧める動き。そのような社会情勢の中で、実際に運転免許を自主返納などした高齢者は、どれぐらいの年齢だったのだろうか。内閣府が2021年3月に発表した調査「高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)」(※)の結果を基に確認する。
次に示すのは調査対象母集団のうち、実際に自主返納などをした人に対し、その時の年齢を尋ねた結果。自主返納などをした人全体では59歳以下でした人が8.8%いる計算になる。
自主返納などをした人全体では70代前半が34.0%ともっとも多く、次いで60代後半で25.1%。大体6割が70歳前後で運転免許を自主返納などすると見ればよいのだろう。
居住地区別ではおおよそ地方に行くほど年齢が上になる傾向があるように見られる。都市部では80歳以上が8.7%しかいないが、過疎地では16.3%もいる。過疎地など地方になると、日常生活の上で自動車が必要不可欠なものとなり、なかなか運転免許を手放せないのだろう。ただし過疎地では59歳以下で自主返納などをしてしまう人ももっとも多く、16.3%に達しているのは興味深い。
他方、運転頻度別では大体頻度が低い人ほど年齢が下のうちに自主返納などをしているようだ。ほぼ毎日運転していた人は、80歳以上で自主返納などをした人が26.7%もいる。
この結果を各年齢階層の中央値などを用いて平均を概算したのが次の結果。自主返納などをした人全体では69.7歳との結果が出ている。
都市部では70代前半が多いためにイレギュラーが生じてしまっているが、おおよそ地方にいくに連れて自主返納などをした年齢は上がる傾向がある。やはり地方では買い物などで自動車が必要不可欠のため、運転免許を手放し難いのだろう。
運転頻度別では大体高頻度の方が自主返納などをした年齢は上になる傾向がある。まったく運転していなかった人は69.2歳だが、ほぼ毎日の人は72.0歳。
もっとも差異を強調するように下限を67.0歳にしたグラフの表記上、大きな差が出ているように見えるが、今件の属性区分の限りでは、最大値と最小値の差異は3.2歳分でしかない。運転免許を自主返納などする年齢は、居住地区や運転頻度の限りではあまり大きな差異はなく、大体70歳と見ればよいのだろう。
■関連記事:
【40代男性の過半数が「居眠り運転事故」を起しそうになったと自覚】
【60-70代の自動車運転者、4割は毎日運転・地方居住者は5割近くも】
※高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)
2020年12月から2021年1月にかけて65歳以上の人に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。免許保有者は832人、自主返納者などは668人。都市区分では都市部在住者416人・地方都市在住者416人・その他417人・過疎地251人。都市区分に関しては「都市部」は特別区や指定都市、「地方都市」は中核市や施行時特例市、「過疎地」は過疎地域自立促進特別措置法により過疎地域とされている市町村、「その他」は都市部・地方都市・過疎地以外の市町村。「自主返納者など」は運転免許の全部の自主返納者および一部の自主返納者、免許を更新せずに置いておき、そのまま自主的に失効させた人。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。