「知人との交友」「情報探索」…ソーシャルメディアの利用目的をさぐる
・インターネット利用者のうちソーシャルメディア利用者は49.8%(2017年)。
・ソーシャルメディアの利用目的のトップは「従来からの知人とのコミュニケーション」、次いで「知りたいことについて情報を探す」「暇つぶし」。
・「従来からの知人とのコミュニケーション」は全般的に女性の方が高めの回答率。
目的は「知人との交友」が8割強
スマートフォンやタブレット型端末の普及で加速度的に浸透しつつある、ウェブサービスの一つ「ソーシャルメディア」。今や寝食を忘れてアクセスを続ける人も多い。そのソーシャルメディアの利用目的について、総務省が2018年5月に詳細値を発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、確認していく。
今件における「ソーシャルメディア」だが、補足説明の用語集では「インターネット上の交流を通して社会的ネットワーク(ソーシャルネットワーク)を構築するサービスのことである。Facebook やTwitter、LINE などが代表的」(ソーシャルネットワーキングサービス(SNS))とある。LINEなどのようなチャット系コミュニケーションサービスは厳密な解釈では定義から外れるが、社会全般的には同一視されていること、質問の上でもそのような区分がされているため、該当するものとみなす。他方、広義では含まれることになる掲示板や動画投稿・共有サイト、ブログは他項目で別途言及されていることもあり、該当しないものとする。
今調査によればソーシャルメディアの利用率は、インターネット利用者においては49.8%(無回答者除く、以下同)。見方を変えると、インターネットにアクセスできる機会を持ちながら、ソーシャルメディアの類を使っていない人は5割強に及ぶことになる。
年齢階層別では20代がもっとも利用率が高く7割超え、40代までは過半数で、50代でも5割近く。むしろ60代以降でもインターネット利用者の1割台から2割台が利用している実態には驚かされる(もっとも高齢者にとっては、インターネットの利用そのものが高いハードルなのだが)。
それではソーシャルメディア利用者は、何を目的としてアクセスしているのか。全体的な回答が次のグラフに示されているが、最上位の同意率を示している項目は「従来からの知人とのコミュニケーション」。つまり利用者のうち86.5%は、ソーシャルメディアで身近な知人とのお話、交流を望んでいることになる。
これは手紙やメール、電話と比べると利用ハードルが低く、気軽にコミュニケーションができるのがポイントとなり、多くの人に使われていると見てよいだろう。また、自分の状況を披露しておくことで、自分の知人に間接的な意思表示(例えば「忙しい」「元気だ」「明日は暇だ」)をすることも可能となるのがポイントか。
次いで多い目的は「知りたいことについて情報を探す」で48.2%。ソーシャルメディア内で知的好奇心の充足を望んでいることになる。昨今ではソーシャルメディア上で情報を直接、あるいは間接的に(URLなどでガイダンスする形で)公知するケースも多く、これらをたどることで望んだ情報を取得できることになる。あるいは関連する情報を得られそうなアカウントに追随し、日頃からチェックをする場合もあろう(芸能人、著名識者、関連会社、報道関係など、対象はいくらでも想定しうる)。
一方、はっきりとした目的意識は無い「暇つぶし」との回答率も3割近くと高い。交通機関を使った移動の際に雑誌や新聞を読み進めるような、あるいは休日の午後、特にすることも無く外出するのも面倒な時間の経過を過ごす際に、ソーシャルメディアをざっと眺めて場の雰囲気を楽しんでいるであろう人は案外多い。
やや回答率は下がるが、「同じ趣味・嗜好を持つ人を探す」も2割近く。いわゆる「類友」「同好の士」を探す主旨。趣味が同じならば有益な情報交換もでき、ともに語らうことで有意義な時間を過ごせる。さらにこれと類するものだが、相手を特定せずに情報発信をし、自己顕示欲の充足やストレス解消とともに、「自分と同じ立場にある人」を探す(探してもらうきっかけを作る)動きもある。
震災以降その役割が重要視されるようになった「災害発生時の情報収集・発信」は16.7%と1割強。普段から意識して利用する、明らかな目的として認識した上で注視する人はさほどいないとの意味であり、使うことが無いわけではあるまい。
年齢で変わる、変わらない利用目的
この結果についていくつかの属性別で再計算を行い、その動向を確認する。まずは年齢階層別。
どの年齢階層でも「知人との交友」が最多回答項目であることに違いは無いが、年とともにその値は下がっていく(6~12歳でやや低めなのは、実社会でも交友範囲が限定的なのが原因。また、利用したくとも保護者などに止められている場合も考えられる)。他方「情報を探す」は中年層以降は年とともに上昇していく動きがある。一番高い値を示しているのは、意外にも80歳以上。シニア層にとってソーシャルメディアは、情報の名前を冠する宝物が散在している場所に見えるようだ。
いわゆる「同好の士」を探す動きも「知人との交友」と同じ流れで、若年層ほど高い。ソーシャルメディアを使い、新規にしても従来のつながりにしても、積極的にコミュニケーション網を広げていこうとする意志が見える。
「災害発生時の情報収集・発信」や「情報を探す」など一部を除けば、大よそ若年層ほど回答率は高い。つまり、複数の目的でソーシャルメディアを利用していることになる。年上になるほど利用目的が絞られているようだ。
男女別では?
男女別ではどうだろうか。こちらは同一性別内における年齢階層別の流れを見やすくするため、上記のグラフとは項目の表記を変えてあることに注意。また「上位陣」と「下位陣」では回答率に差異がありすぎるため、縦軸の区切りも変更してある。
「従来からの知人とのコミュニケーション」は全般的に女性の方が高め。女性がデジタル・アナログを問わずコミュニケーションを好むことはすでに知られている通りだが、それがソーシャルメディア内でも結果として表れている形。一方で「情報を探す」は中年層では男性の方がやや高くなる。
「暇つぶし」は若年層と高齢層では男性、中年層では女性の方が高い値。中年層の女性で高めの値が出るのは、家事や育児の合間に生じる時間を費やすとの意味で「暇つぶし」と答えたのかもしれない。
法的に、そして利用規約的に問題が無い限り、ソーシャルメディアをどのような利用目的で使おうと、他人がそれを束縛する権利は無い。一方、ソーシャルメディアはあくまでもツールでしか無く、そのツール経由で伝達される情報の真偽性は、ソーシャルメディア自身が担保しているわけでは無いことに注意しなければならない。例えば「世界最大規模のFacebookで語られていた話だから、この情報は絶対に真実だ」と盲信すると、痛い目にあう可能性は十分以上に存在する。
情報の「確からしさ」を精査するには経由されたサービス以上に、情報発信源について、そして内容そのものの確認をすべきであることはいうまでも無い。
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※通信利用動向調査
2017年分は2017年11月~12月に世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施)。有効回答数はそれぞれ1万6117世帯(4万1752人)、2592企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。過去もほぼ同様の条件下で実施されている。
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