令和の鬼退治(疫病封じ)は政府頼り
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2020年も押し詰まってきた。2020年に流行ったものといえば、「新型コロナウイルス」と「鬼滅の刃」ということになりそうだ。この両者は意外に関係性が深い。鬼滅の刃は、「日本一慈しい鬼退治」というキャッチコピーがあるが、まさに鬼退治の物語である。そして、日本の鬼退治といえば、飛鳥時代の聖徳太子の弟の麿子親王による鬼退治、平安時代の酒呑童子を討った源頼光の物語が有名だが、この鬼は疫病のことだという説がある。
2020年は新型コロナウイルスという疫病、つまりは鬼が出現し、それをどのように退治すべきかと、世界が鬼退治に動いた年であったともいえる。だから「鬼滅の刃」がヒットしたわけではないと思うが、偶然とは思えない組み合わせではある。
その令和の鬼退治の主役となったのは、麿子親王や源頼光ではなく、各国政府であった。スウェーデンは他の欧州諸国のようにロックダウン(都市封鎖)など厳しい規制を導入しなかったことで注目されていたが、スウェーデンのカール16世グスタフ国王は、自国の新型コロナウイルス対策について「失敗したと思う」と述べていた。
主な国ではロックダウン、もしくはそれに近いかたちで感染拡大防止を図った。それによる経済活動が抑制されたことで、日本を含む各国の4~6月期GDPは過去最大規模の落ち込みとなった。これに対して各国政府は財政による支援活動を行い、こちらも過去最大規模の財政出動となった。
日本も例外ではなく、2020年度の新規国債の発行額は当初の33兆円弱から三次補正後には113兆円弱に膨らんだ。つまり三倍を超す規模となったのである。毎年度の歳出と歳入をグラフ化すると上顎の歳出は延びて、下顎の歳入は伸びずにワニの口のようになっていた。しかし、2020年度は上顎が外れてしまったかのようなグラフになった。
2021年度の新規国債の発行額は2020年度の113兆円弱から2021年度は44兆円弱となっているが、年度の国債発行総額は2020年度の263兆円規模に対し、2021年度は236兆円と減ってはいるが、それほど大きく落ち込みわけではない。このためカレンダーベースの国債の市中発行額は40年債が増発されるなどむしろ増えている。
新型コロナウイルス感染拡大とそれによる経済への影響をなるべく抑えるために政府支出が増加するのもわかるが、政府債務の増加による新たな鬼が債券市場を中心としていずれ出現してくる可能性がある。こちらの鬼退治もなかなかたいへんなことになると思われる。