「この仕事向いてないんじゃない?」新社会人にグサりと響くその言葉
大人として初めての社会生活を営む新社会人に向けて、先輩諸氏が投げかける言葉には注意が必要となる。何気ない語りでも、大きな傷を負わせてしまうかもしれない。ソニー生命保険が2015年4月に発表した、新社会人に対する意識調査結果「社会人1年目と2年目の意識調査 2015」から、「先輩社会人から言われたらやる気が奪われてしまう」類の言葉の実情を確認していく。
次に示すのは新社会人の調査対象母集団(「今春就職する社会人1年生」「就職してから1年経過した社会人2年生」(いずれも20代)、それぞれ500人ずつ、男女比は1対1)に対し、「自分ならばこんな言葉をかけられたら、やる気が減退する」と思うものを3つまで挙げてもらった結果。2014年にも同じ条件下で調査が行われているため、その結果も併記する。
もっとも多くの人が「これを先輩社会人から言われたらへこんでしまう」と同意を示したのは「この仕事向いてないんじゃない?」。36.7%と4割近い値を示している。仕事の成果がうまく出せない、作業でもたつく、さらにはミスをしてしまった時に、このような言葉をかけられると、追い打ちをかけられた気分になり、やる気を失ってしまう。たとえ声をかけた先輩側が深い考えで発したわけではない、「奮闘してもらうように発破をかけた」と自覚し意図的にやったのだとしても、その通りに行く、新社会人が認識することは多くない。仕事に関しては絶対的権威と経験を持つ人からの言葉であるからこそ、なおさら心の痛手は大きい。
「この仕事向いてないんじゃない?」と似たような言い回しとしては「やる気ある?」も該当する。新社会人側の人格そのもの、仕事面における本人そのものを否定するような、自らの誠意や努力そのものを無下にするニュアンスにとらえてしまう。
また、自分個人にではなく、属する世代全体にレッテルを貼るがごとく酷評する「ゆとり世代だなぁ」「私が若いころは●●だったのに」「学生気分が抜けてないんじゃない?」も、モチベーションを下げやすい。自分自身の具体的な問題点の指摘ならまだ改善のしようもあるが、所属属性全体で云々と酷評されてしまっては、反論のしようもないからだ。さらには「自分を個人としてでは無く、世代・属性全体の一部としてしかとらえてない」と、個人の否定としてすら認識してしまうかもしれない。
価値観の相違を先輩側の絶対真理として押し付けるような、いわば理不尽な指導的言い回し「そんなことは常識でしょ」「空気読もうね」「言い訳はするな!」「いや、そうじゃなくて」「社会ってそういうものだから」なども新社会人のやる気を削ぎやすい。
前年からの変化を見ると、順位も含めあまり変化がない。上位陣の回答項目で回答率がやや下がっているが、「私が若いころには」「社会ってそういうものだから」が上昇している。上昇項目はいずれも先輩側が「社会全体の代表」であるかのように表現し、優位であることを含めた上での発言であることが気になる。
これらの言葉に関して(一部を除けば)一律で否定するのも問題。とはいえ、その多くは新社会人に理解納得してもらい知識や経験として会得して欲しいとの想いから発せられる「叱り」ではなく、単なる「怒り」あるいは「嘲笑」的な意味合いが強い。決して指導では無く、新社会人には何らプラスとならないどころかマイナスの影響すら与えかねない。
なかなか上手くいかずに、なぜこうなるのか、それを理解した上で行程を覚えて失敗しないようにしたい実務に関して、先輩から「そんなことは常識でしょ」さらには「社会ってそういうものだから」と指導されたら、どのような想いを抱くだろうか。くれぐれも配慮をしてほしいものである。
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