就活なんかでうつや自殺をさせてしまうことがないようにするために~キャリア教育で解決できることは何か~
■毎年のように就活でメンタルをやられてしまう人がいる
今年も3月1日、新卒の就職活動の解禁日を迎えました。これから大手企業を中心とした新卒採用のピークがやってきます。一方、就職活動がうまく行かずうつになったり、自殺したりする学生が毎年のように出てきています。
ある調査によれば、7年間で200名超の就活自殺者がいるといいます。就活に失敗(そもそも失敗とは何かわかりませんが)したから人生終わりではもちろんありません。いくらでもやり直しはきくのが人生です。
また、就活で成功したように見えても、その先にはどんな人にも様々な壁が待ち受けており、本当は、就活一つで一喜一憂しているような場合ではないように思います。それなのに、なぜ就活自殺のようなことが起こるのでしょうか。
■市場の効率の悪さが一つの原因
最大の原因は、現在の新卒就活市場の効率の悪さではないかと私は思います。
このような数字はあまり表に出ることはありませんが、大手企業の平均的な合格率(合格者÷受験者)はおおよそ1%です。つまり99%の人は落ちてしまうということです。裏を返せば、100社受ければようやく1社受かるというような状態なのです。99回も「お前はダメだ」と否定されるような経験をすれば、確かに精神的に病んでしまうかもしれないと思う数字ではないでしょうか。
■学生に問題を押し付けず、大人が解決すべき
この非効率さの理由の一つは、学生の企業を評価する目の無さにもあります。自分に合わない企業ばかり受けてしまう人が大量にいるため、大量の「不合格者」が生じるわけです。極端な言い方ですが「学生の敵は学生」でもあります。みんなたくさん受験するから倍率がこれほどまで上がるのです。
ただ、経験の無い学生たちが企業を見る目がないのは当然のことです(私の学生時代を振り返ってみると恥ずかしい限りです)。ですから、問題の解決策は、学生のキャリア教育に関わる私たち大人たち(親御さん、先生方、キャリアセンター、人材ビジネス、企業人事、OB/OG・・・ほぼすべての学生に接点のある方)の方にあると思います。
我々が自分の周辺以外の世の中の会社や仕事(「すべきこと(must)」)の現在や未来展望を知らな過ぎて、たとえば新進気鋭のベンチャーなど認知度は低いが雇用能力の高い会社を勧めることができていないのではないでしょうか。
■「やりたいこと」ばかりに焦点を当てたキャリア教育
また、多くの周囲の大人たちは、学生の「やりたいこと(will)」ばかり重視し、willを実現する仕事探しを勧めるが故、知名度の高い大企業やB to C企業にばかりに学生が殺到してしまうことになります。
ところが、企業側は「やりたい」学生を採るのでなく、「できそうな(can)」学生を採るので、will軸で受験先を絞った多くの学生は不合格になってしまいます。しかも、そもそものwillは就活時になんとか捻り出した言わば「ねつ造したwill」であることも多く、学生の本音としても「実はそれほど、やりたいことでもない」というようなことも多いのです。
■「伸びる業界」を知ることと「できること」の理解と向上が重要
これを解決するには、上記の逆を行けばよいのではないかと思います。キャリア教育で「自分探し」ばかりさせるのでなく、まず「労働市場の今後」「これから伸びる仕事や業界」についてもっと学ばせるべきです。やりたいことでも、今後世界で望まれない仕事の未来は暗い。逆に、隠れた「伸びる仕事」を見つければ、受かる可能性も高いからです。
また、学生それぞれが持つ仕事での「能力」(の可能性)を正確に評価してあげて、それを基に「やりたいこと」より「貢献できること」で会社や仕事を選べば、合格率は高まっていくはずです。
もちろん「やりたいことを仕事にする」のは幸せだと思います。しかし、それは今でなくてもよいのではないでしょうか。自分にあった能力で貢献できる仕事をすれば、成果も出ますし、人から感謝もされます。そうすれば、そのうちそれが「やりたい」仕事になるものではないかと思います。そういうサポートを学生にすることで、少しでも就活うつや就活自殺がなくなれば、と思います。