金正恩氏「美貌の妻」の「異性問題」で殺された北朝鮮の芸術家たち
韓国の情報機関である国家情報院は8月28日、国会情報委員会で北朝鮮の金正恩党委員長の夫人、李雪主(リ・ソルチュ)氏が「今年2月に第3子を出産したようだ」と報告した。ソルチュ氏は昨年、およそ9カ月にわたり公の席に姿を現さなかった時期があり、出産説が囁かれていた。
ポルノ撮影説も
国家情報院の報告によると、ソルチュ氏は正恩氏と2009年に結婚。翌年の夏頃に第1子を生み、2013年1月に第2子を生んだ。2番目の子は「チュエ」という名の女の子であると伝えられているが、第1子と第3子は性別も名前もわかっていない。
ところで、脱北者で韓国紙・東亜日報の名物記者でもあるチュ・ソンハ氏が31日、自身のブログで興味深い記事を公開した。ソルチュ氏の「元カレ」に関する話だ。
ソルチュ氏は正恩氏と結婚した時には20歳だったから、男性遍歴を重ねるような時間はなかった。しかし彼女の出身校である金星学院は、他のエリート校に比べれば恋愛についてかなり自由な空気があったという。
ちなみに、正恩氏は「親友」である元NBAプレーヤー、デニス・ロッドマンが北朝鮮を訪れた際、金星学院の女学生たちを呼び出して、乱痴気騒ぎにつき合わせたと言われる。
(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙)
芸術家を養成する同校は、全国から選抜された人材が11歳からレッスンを受ける。卒業後も同じ芸術団で同僚となる例が多く、卒業生らは互いの私生活をよく知っているものだという。
それが、ある悲劇を生んだ。
ソルチュ氏が正恩氏のパートナーとして選ばれた際、彼女が所属していた銀河水(ウナス)管弦楽団の同僚や友人ら数人が、ソルチュ氏に「元カレ」がいたことを示す「証拠写真」を回し見した。これが、北朝鮮当局の知る所となってしまった。
当局は、写真の持ち主は誰で、回し見したのが誰であるかを執拗に調べ、突き止めた。そうして銀河水管弦楽団と旺載山(ワンジェサン)芸術団のメンバーら9人の名前が挙がり、2013年8月、姜健総合軍官学校の射撃場で銃殺されたという。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
ただ、この銃殺事件を巡っては、これとは大きく異なるストーリーが伝えられてもいる。芸術団メンバーらが処刑された主な理由は、自分たちどうしでポルノを撮影していたことがバレたからだというものだ。
こちらの説も、なかなか詳細な話が出てきており、まったくの作り話だとも思えない。
(参考記事:美貌の女性らが主導…北朝鮮芸術家「ポルノ撮影」事件の真相)
女性関係を隠すため
しかしチュ記者は、「写真のせいで殺すとは言えないから、性的に堕落したとの罪状をたっぷりとかぶせたのだ」とポルノ撮影説を全面的に否定している。
いずれにしても、この時に芸術団のメンバーらが無残に殺されたのは事実のようだ。チュ記者によれば、メンバーらは丸太に縛り付けられ、1人に対しAK47自動小銃から90発が撃ち込まれたという。口径7.62ミリの小銃弾を90発も浴びせたら、人体は文字通りズタズタになる。
当局はその様子を、射撃場に集めた芸術関係者数千人に見せつけた。前列で見ることを強要された女性歌手らの中に、失禁しなかった者はいなかったという。そして当局はさらに、芸術関係者たちに死体を近くで見るよう強要した。「彼らが、数日前まで一緒に笑い合っていた友人や同僚の血と肉片を踏みながら感じた恐怖を、いかに文章で表現できようか」と、チュ記者は書いている。
それにしても、人々がこれほど無残に殺されねばならないほどの「証拠写真」とは、どのようなものだったのか。
チュ記者は、「内幕を良く知る脱北者によれば、ソルチュが学生時代の彼氏といっしょに、万景台少年宮殿の隣の芝生の上で肩を抱き合って撮ったものらしい」と説明している。
ポルノを撮ろうが彼氏と写真を撮ろうが、そんなことは、人間が殺される理由になどなり得ない。
正恩氏の父である故金正日総書記もまた、自らの乱れた女性関係を隠すため手を血に染めている。
(参考記事:金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち)
やはりどう考えても、金王朝に人間社会を治める資格などないのだ。