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「爆破予告」はテロである! 

森井昌克神戸大学 名誉教授
(写真:アフロ)

東京都教育委員会は25日、都内の複数の小学校を爆破するとの予告メールが届いたと明らかにした。全国の自治体にもメールで爆破予告があり、各地の警察が捜査を進める。

出典:爆破予告 東京都教委にメール…各地で相次ぐ【毎日新聞】

先週から都道府県単位だけでなく市町村等への「爆破予告」が続いています。自治体だけでなく、教育委員会等関連団体にも送られ、先週末から週明けにかけ、その対処に追われています。一部には、犯人と思われる人が自供し、逮捕拘束されているということですが、その後も、各所に、良く似た手口(文面)での予告がなされていることから、独立した複数の模倣犯の存在が危惧されています。一時期、青少年を中心とした、いわゆるネットでの「犯行予告」が話題になりました。実際に、その「犯行予告」どおりの悲惨な事件も起こっていることから、深刻な問題として取り上げられました。この「犯行予告」を行う大半は、些細な「イタズラ」としての意識が根底にあっても、実社会では大きな混乱を引き起こすことから、警察を中心とした捜査側によって厳格な取り締まりを行うとともに、ほとんどが摘発されることとなりました。ネット内でも自浄作用がはたらいて、罰則以上の報復、つまり「炎上」や個人情報の「晒し」といった過度の報復を受けることから沈静化しているように見えていました。

インターネット上の違法・有害情報の通報窓口「インターネット・ホットラインセンター」が昨年1年間に警察に通報した爆破・殺害予告は、前年比342件増の2328件。22年の614件から約4倍に増えている。自治体への予告に限ったデータはないが、捜査関係者は、同様に増加傾向にあるとみる。

出典:ネットが拍車、役所に相次ぐ「爆破予告」 統一マニュアルなし 「全員避難」…翻弄される自治体【産経WEST】

しかし、これは新聞やテレビ、いわゆるマスコミでの話題性を失ったこと、模倣犯や刺激を受けての青少年のイタズラの増加を危惧して話題にすることを控えている結果であって、実際は増加しているのです。ネットでの「犯行予告」が問題となった当初から、それまでの手紙や電話による犯行予告に比較して、その犯行に至る「障壁」が非常に低いことから、特に倫理意識が低い青少年のイタズラとして問題視されました。手紙であれば、文字を書いて、封筒にいれ、宛名を書いて、投函するという作業が必要であり、その途上で事の重大さに気付くことになり、電話であったとしても、一方的であるとは言え、相手に対話する必要があり、やはり犯行を思い止まる障壁となりました。ネットでは、それらの障壁は低く、特に自治体等では、公開されているウェッブで意見投稿が可能であり、簡単に書き込むことができるのです。理性を押さえる間もなく、犯行予告を投稿してしまうのです。

現在、やはりテレビや新聞等では、模倣犯を危惧する事から、やや自粛気味の報道ですが、改めて、この犯行の「罪と罰」について広く公知すべきでしょう。単なる「イタズラ」で済む事はなく、また「偽計業務妨害罪」という3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるだけでもなく、とんでもない額の民事賠償や、個人情報の「晒し」といったネット上での報復も有り得るということを知らしめるべきなのです。

テロとは、人の恐怖心を利用して、特定の政治的、宗教的な目的を達成しようとする、組織的暴力の行使、手段、およびそれらによって敵対者を威嚇することです。目的は稚拙としても、恐怖心と敵対者、つまり社会への威嚇と言う意味では、「爆破予告」はテロに他なりません。その犯行の著しい容易さに比較して、非常に重い「罪と罰」を知らしめるべきでしょう。

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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