8割近くが「関心あり」…自衛隊や防衛問題への国民の関心度合いの実情をさぐる
内閣府が発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書によると、自衛隊や防衛問題に対して関心を持つ人は8割近くいることが明らかになった。年齢階層別では高齢層ほど高い関心を持つ傾向が確認できる。
自衛隊、そして防衛問題に対して否定肯定を問わず、興味関心があるか否かを「非常にある」「ある程度ある」「分からない(・無回答)」「あまり無い」「まったく無い」の5段階評価で尋ねたところ、全体では78.2%の人が「非常にある」「ある程度ある」を合わせた「関心あり派」に属する回答を示した。「あまり無い」「まったく無い」を合わせた「関心無し派」は20.2%。
男女別では男性の方が、年齢階層別では高年齢層ほど強い関心を示しているのが分かる。関心がまったく無い人は18~29歳では1割ほどいるが、60代以上では1%未満となっている(ただし「分からない・無回答」が50代以上では1%を超えている)。「非常にあり」の値も40代でいくぶん落ちるが、それ以外では高年齢層ほど高い値が出ており、高齢層ほど強い意思で関心を抱いているようすがうかがえる。
ちなみにグラフ化は略するが「非常にあり」の値が凹んでいる40代について詳細値から関心の無い人の理由を確認すると、「自分の生活に関係ないから」の値が他の年齢階層より大きなものとなっている。40代は他の年齢階層よりも自分自身の生活に精いっぱいで、関係のない自衛隊や防衛問題に関心を寄せる余裕がない人が多いのではないかとの推測ができる。
「関心あり派」の思いはそのまま自衛隊や防衛問題の肯定にはつながらない。否定をしているからこそ関心を持つ、あるいは否定肯定とは別次元で関心を持つ場合もある。そこで「関心あり派」「関心無し派」それぞれに、その理由を選んでもらった結果が次のグラフ。前回調査にあたる2018年分の結果と併記し、その変化も確認する。
「関心あり派」の最大の理由には「事態対応」、特に「大規模災害」などにおける「緊急展開可能な”まとまった実戦力(実践力)”」としての意義が挙げられる。これはいうまでもなく、これまでの実績に加え、先の東日本大震災での奮戦ぶりによるところが小さくない。震災からはすでに10年以上が経過しているが、昨今の各種天災での出動の実情を受け、前回調査結果よりも大きく値は増加している。
自衛隊の最大存在意義とされる「国土防衛問題」は第2位の理由として挙げられている。前回調査と比べると3.3%ポイントの下落を示している。昨今の日本を取り巻く周辺地域環境問題で、該当国による軍事的・疑似軍事的圧力の事案が多数生じているものの、それを受けての反応は低下するという意外な結果となった。
「関心無し派」では「よく分からないから」がトップの回答値で41.8%。前回調査からは4.2%ポイントものアップ。啓蒙不足が懸念される値ではある。
次いで「自分の生活に関係がないから」が33.4%。これはある意味望ましい結果とも解釈できる。警察や消防同様に、本来なら「生活に関係がない」平穏無事が一番望まれる状態であり、それを陰から支え、いざという時にだけ存在を再認識されるのが自衛隊のあるべき姿と表現できるからだ。「縁の下の力持ち」的なものとして、各種インフラもまた同様の立場といえる。もちろんこれは「ないがしろにして構わない」を意味しない。
他方「差し迫った軍事的脅威が存在しないから」は22.0%で前回調査から5.6%もアップしている。今調査は2022年11月17日から12月25日にかけて実施されており、その調査期間でこの値なのかと首をかしげる人もいるかもしれない。
なお自衛隊や防衛問題に対する関心度はおおよそ上昇する傾向にあり、今項目調査開始の1978年と比べ、「関心あり派」は30%ポイント強の上昇を見せている。特に直近の2022年調査分では前回調査から大きな値の増加が確認できる。ロシアによるウクライナへの侵略戦争そのものや、それに関連して日本周辺でも軍事的緊張の高まりの気配を感じる人が増えているのが、大きな値の増加の原因だろう。
ちなみに1991年において湾岸戦争を機会としたものと思われる「関心あり派」の大規模な増加が確認できるが、この時にもその内情としては「日本の平和と独立に係わる問題だから」が48.9%、「国際社会の秩序維持にかかわる問題だから」が22.7%と多数を占めており、否定派的な関心を意味する「自衛隊は必要無いから」は2.0%にとどまっている。
政府機関への関心が高まること自体はよい傾向ではあるが、不十分な情報や無理解による過度な期待を寄せられたり、逆に誤解による反発が高まるのは好ましい話ではない。関心に応えるだけの適切な情報提供・啓蒙を行い、理解を深めてもらう努力が欠かせまい。
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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査
2022年11月17日から12月25日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、郵送法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1602人。有効回答者の男女構成比は757対845。年齢階層別構成比は18~29歳が170人、30代が162人、40代が240人、50代が276人、60代が306人、70歳以上が448人。
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