期待先行の日銀への注意点
4月3日、4日の金融政策決定会合が新体制となる日銀にとっての初会合となる。すでにマスコミ等では、次元の異なる大胆な金融政策の内容がいろいろと報じられているが、特に目新しいものはない。つまりは次元の異なるという掛け声は勇ましいが、政策そのものはこれまでの金融政策の延長線上にしかないことになる。もちろんサプライズが用意されているかもしれないが、あまりに極端な政策を行うと財政ファイナンスとの認識が強まりかねず、そのあたりのバランスの取り方も難しい。
難しい金融政策が迫られる中、黒田日銀総裁は就任早々に忙しい日々を過ごしているのではないかと予想される。3月26日、28日と国会での半期報告と質疑応答を無難にこなした。そして4月2日には衆院予算委員会に黒田日銀総裁も呼ばれ、7時間の集中審議を行うとか。与党側は5日にするよう主張したものの、民主党は8日に黒田氏がいったん任期切れになることを理由に譲らなかったそうである。黒田総裁にとっての初会合なのだが、ブラックアウト期間中に呼び出してどうしようと言うのか。とにかく、この質疑に向けた準備にもかなりの時間を要するはずで、金融政策をしっかり詰める時間は果たしてあったのかどうか。
半期報告には総裁だけではなく、副総裁も呼ばれており、中曽副総裁はとにかくも岩田副総裁も準備に追われた可能性はある。そんな中での4月3日、4日にどのような格好で新たな金融政策を打ち出せるのか。六人の審議委員は果たして新体制となった執行部に対してどのような見方をするのか。結局、具体的な政策決定は持ち越すのではないかとの見方もあるようだが、銀行券ルールにかわるルール作り等も必要となれば、大枠だけを決定し細かい政策は事務方に預け、今月2回目の26日の会合であらためて詰めるといったことも考えられる。
新体制となった日銀にとって、最も意識しているのがコミットメントの強化と思われる。コミットメント効果とは、将来の金融政策を現時点で約束するという政策運営の方式であり、つまり物価が目標とする2%となるまで金融政策を継続するというものである。これは時間軸政策とも呼ばれる。このコミットメントメントに信認を得られれば、長期金利は低下し、それにより経済活動を刺激する、というものである。
たしかにイールドカーブの形状をみると、比較的割安となっていた超長期債に買いが入り、カーブはフラットニングしており、一見すると日銀の政策を先取りした動きにも見える。しかし、ここには円安・株高の影響による年金のリバランスの動きなどもかなり影響したと思われ、日銀の政策期待だけで動いたわけではない。
そもそもイールドカーブを動かして、長い金利を低下するとしても例えば10年債利回りはすでに0.5%近辺に低下しており、仮に過去最低利回りを更新するとしてもあとわずかに0.1%程度しかない。超長期債の利回りにはまだ低下余地はありそうだが、それで何かしら経済活動に刺激を与えることができるとは考えづらい。
そもそも長めの金利を低下させれば、物価が上昇するということは実証されていない。つまりコミットするのは良いが、その約束を果たす手段と結果が繋がっているのかが、かなり疑わしい。そこで出てくるのが期待に働きかけるというものであるが、これもまた心許ない。タイミングのよかったアベノミクスの登場でたしかに期待は強まった。それを新体制となった日銀は政策で実行に移そうとしている。しかし、その政策そのものが結果をもたらすことができるのかと疑問視されれば、期待が剥げ落ちてくる可能性は十分にある。このあたりのことも注意しておく必要があろう。