リトアニアで大量に発見されたホロコースト前のユダヤ人の貴重な資料、デジタル保存へ
発見された「北のエルサレム」の貴重な資料
リトアニアの首都ヴィリニュスにある教会からリトアニアのユダヤ人に関する大量の資料、メモ、写真が出てきた。倉庫の本棚を整理し、掃除をしていたら発見された。イディッシュ語で書かれた当時のメモや日記、ホロコースト時代のゲットーでのメモ、ポグロムに関する証言もある。詩人でホロコーストを生き延びたアブラハム・スツケヴェル氏のオリジナル作品など貴重な資料もいくつか発見された。古いものは18世紀中ごろの資料もある。
リトアニアは日本の外交官の杉原千畝氏がナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人にビザを発行したこともある国で、日本でも知られている。戦前、リトアニアのヴィリニュスは約6万人のユダヤ人が住んでおり「北のエルサレム」と呼ばれたほど、ユダヤ人のイディッシュ文化が栄えた都市だった。だが1941年にナチスが占領するとヴィリニュスの多くのユダヤ人は虐殺され、同地のユダヤ文化は徹底的に壊滅されてしまった。ユダヤ人の作家や知識人たちも捕えられゲットーに収容され、約20万人のリトアニアのユダヤ人が殺害された。そのような状況でもいくつかの資料がこのように隠されていた。
ニューヨークのユダヤ教神学院のDavid Fishman教授は「あまりにも大量の様々な種類の貴重なドキュメントに驚いている。ホロコースト時代前のリトアニアでのユダヤ人の生活が資料から垣間見ることができる重要な発見だ」とコメント。
Fishman教授によると、イディッシュ語やヘブライ語ができる専門家であっても、これら大量のドキュメントを読解していくには5年はかかるとのこと。イディッシュ語を話すことができるSimonas Gurevicius氏によると「ヒトラーやスターリンはイディッシュ語を絶滅させようとしたけど、それは出来なかった。ホロコーストで『北のエルサレム』と言われたリトアニアのユダヤ人文化の多くが壊滅されたが、今回の新たな発見によって、日差しが見えてきた」と語っている。
デジタル保存しネットで世界に公開へ
そして現在、リトアニアで発見されたかつてのユダヤ人のドキュメントをデジタル化してネットで公開をしていこうと準備が行われている。ドキュメントは古い紙で傷んでいるため、デジタル化での保存が急がれている。デジタル化されることによって世界中で閲覧できるようになる。
ニューヨークの非営利団体YIVOユダヤ調査研究所が主導してデジタル保存とオンライン化を進めている。同組織では1946年にヴィリニュスからアメリカ軍がニューヨークに持ち帰ったドキュメントのデジタル化も行っている。このデジタル保存とオンライン化は「サイバースペース・ヒストリー・プロジェクト」と呼ばれ2年前から進められている。
ホロコースト時代に多くのユダヤ人の資料はナチスによって処分されてしまった。それでもホロコースト時代とソ連時代に処分されなかったホロコースト以前の東欧諸国でのユダヤ人の生活に関する100万以上の貴重なドキュメントをデジタル保存され、アーカイブ化が進められている。そして近い将来、オンラインで公開されて世界中の人が当時のユダヤ人の生活を垣間見られるようになる。