公開裁判に公開処刑、動画で暴かれる北朝鮮式「見せしめ」統治
英テレグラフ(The Telegraph)が4日、北朝鮮国内で行われた公開裁判の動画を公開した。動画は、2013年9月に北朝鮮北部の清津(チョンジン)市の公設運動場で100人以上の住民を前にして行われた公開裁判の様子だ。2人の北朝鮮住民が、米国映画を視聴し、さらにUSBメモリを使って、録画機能のあるDVDプレイヤーにダビングした罪状に問われた。判事が、容疑者に強制労働の罪を言い渡す場面も記録されている。
今回の「公開裁判動画」が公開されたことには、大きくわけて二つの意味がある。第一に、北朝鮮で公開裁判が行われている事実が、改めて証明されたこと。第二に、韓流をはじめとする外国映画などの「違法動画」がUSBメモリやDVDなどを介して広まっていることと、視聴やダビングが発覚すれば「強制労働刑」などの罰を受けることだ。
デイリーNKでも内部情報をもとに報じているが、北朝鮮国内で韓流をはじめとする外国映画がDVDやメモリなどのデジタルメディアを通じて拡散している。最近の例を挙げると、今年4月、北朝鮮の「喜び組」を描いた韓流ドラマを視聴した罪で、大学生が大量に処罰される異例の事態が起きた。
また、テレグラフの公開裁判動画公開と時を同じくして、デイリーNKの内部情報筋は、英メディアが公開した動画と同じ清津市で50人以上に対する大規模な公開裁判が行われたと伝えてきた。罪状は、「貴金属の密輸」。金鉱の労働者や周辺住民が、金(ゴールド)を密輸業者や中国の貿易業者に売り払っていたという。しかし、その量は一人あたりにすると1グラムにも満たなかった。
国際社会からの批判を顧みず、北朝鮮当局が頻繁に公開裁判を行い、最悪の場合、公開処刑を行うのは、国内統治のための「見せしめ」の意味合いが強い。
韓国の国家機関の調査によると、北朝鮮では2000年以後、公開処刑された住民の数が1400人近くに及ぶという。とりわけ金正恩体制になってからは、恐怖政治が強化されており、幹部を中心に処刑のケースが増えているが、気になるのは処刑方法がエスカレートしていることだ。
昨年10月には、金正恩氏に異議を唱えたとして15人の当局者が処刑されたが、大口径の高射銃を乱射し、人体を文字通り「ミンチ」にするやり方で、衛星画像によっても確認されている。
今年3月にも、韓国の諜報機関「国家情報院」のスパイと関係を持った疑いで、芸術関係者が400~500人の前で、機関銃で体が粉々されるなど、その方法は残忍極まりない。
暴力は一度使い始めると、どんどんエスカレートすると言われているが、独裁体制の頂点にいる金正恩氏の暴力統治は、どこまでエスカレートするのだろうか。