一日あたりの平均歩数は成人男性で7200歩、女性6200歩
朝起きてから夜寝るまで、人は多様な場面で足を使って歩く。一番シンプルで気軽に行う運動活動でもあり、歩数計による計測も多々行われている。実態として平均歩数はどれほどなのか。厚生労働省が2016年11月に発表した「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」(調査時期は2015年11月。今回調査分では調査実施世帯数は3507世帯で、調査方法は調査票方式)から探る。
一般に徒歩で行けると回答者自身で認識している距離は、歳を重ねるに連れて減少する。また健康の指針の一つ「健康日本21」では、成人男性9000歩・女性8500歩以上を一日の目安としている。さらに世間一般的には区切りの良い「1日1万歩」を目標に歩くよう指示される場合も多い。
今回の調査結果では、一日平均の歩数は男性7194歩・女性6227歩となり、女性より男性の方が高い値が出ている。これは平均値だけでなく、各年齢階層別に見ても同様の結果が確認できる。
体力の減退などの理由から、歳を重ねるに連れて歩数が減っていくのは仕方のない話ではある。しかし男性が20代をピークとして30代から50代まではほぼ同数、60代以降は漸減していくのに対し、女性は20代以降60代までほぼ変わらず、70歳以上ではじめて大きく減る動きを示しており、歩数の減り方に男女差が見られるのは興味深い。単純に肉体的な変化だけでなく、生活様式の違いも歩数に大きな影響を与えているものと考えられる。
男性の動向は就業者による外出傾向が多分に影響しているようだ。また女性では30代から40代でややでへこみが生じるのは妊娠・出産で減るため、50代で再び増加するのは子育てとパート関連で歩く機会が増えるのが原因と推定される。この動きはここ数年来続いており、単にイレギュラー的なものではない。
以前の調査結果も含めて中長期的な動向をグラフ化したのが次の図。2012年分以降では100歩未満、5万歩以上の回答値は除外して平均値を算出している。
何度かの起伏を繰り返しながら、中期的には漸減する動きを見せている。10年強の間に平均値は500歩前後ほど減っているが、これは交通網の発達に加え、全体に占める高齢者=歩数が少ない人の増加が要因として挙げられる。直近では特に男性で持ち直しの動きが生じているが、これが単なるぶれの範囲なのか、トレンド転換なのかは、今後の様子を見守りたい。
なおこの「高齢者の調査対象母集団比率増加に伴う、有意な平均値の減少」を鑑み、前回分(2014年調査分)からは「国民健康・栄養調査結果」の年次推移公開値のいくつかにおいて、年齢調整が成されたものも併記される形となった。これは2010年分の国勢調査結果における人口構成比を基準として、各年の値で補正を行ったもので、年齢階層別人口構成比の変化によるぶれを補正することができる(公開されているのは2004年以降の分のみ)。
男性は2004年から2008年にかけてやや減る動きがあるが、それ以降は横ばい。女性もほぼ横ばいで推移している。歩数平均値の減退が、実質的には高齢者の増加によるものであることが確認できた次第。
ケガや出産、高齢によるケガのリスクを考えた上での自制は別にしても、若さがありあまる世代のうちは、積極的に歩くよう心がけたい。それだけでも十分な運動になり、体を鍛えることにもつながるのだから。
昨今では数百円で歩数計を手に入れることもできる。携帯電話には歩数計機能を有するものもある。最近ではIngress(イングレス)や「ポケモンGo」のように外歩きを促進させるデジタル世代の遊びも提唱されている。自分の歩数実態を把握し、「歩くこと」を健康管理の一環としてみてはいかがだろうか。
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