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意外に就職活動は「売り手市場」だが、相変わらず大企業は難関。優良な中小・ベンチャーも同時に受けるべし

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
日本には優良な中小企業はたくさんあります!(写真:アフロ)

■「ゆるい売り手市場」なのに不安になっている

リクルートワークス研究所の調査によると、2022年3月卒の新卒求人倍率は1.50倍を維持しています。前年の1.53倍からは少しだけ下がっていますがほとんど変わりません。

新聞などでも、主要企業の内定者数はあまり変わりません。就職氷河期やリーマンショック後の底の水準から見ると、「ゆるい売り手市場」と表現するぐらいがちょうどよいのではないかと思います。

その一方で、マスコミ報道や周囲の心配の声などからか、学生の不安感はとても大きいと感じています。私も学生と接する機会は多く、生声を聞くと「自分はちゃんと就職できるのだろうか?」と不安がっている人は大変多いです。それはどういう理由なのでしょうか。

■応募が激増しても、辞退も激増する可能性

この背景には、学生の就職活動量の増加があります。21卒の学生は、面接を受ける会社は1年間で約5から6社程度というレベルでした。

しかし、22卒の学生は10社以上の会社を受けていました。その状況が23卒でも再来するのではないかと思われます。

さらに採用がオンライン化したことで、より受験がしやすくなっています。実際、インターンシップの応募や通年採用をしている会社の応募状況を聞いていると、22卒はここ数年の2~3倍の応募があったようです。

「売り手市場」に苦しんでいた企業採用担当者にはうれしい悲鳴ですが、注意しなければならないのは学生の絶対数が増えたわけではなく、2倍応募があったからといって人が2倍採れるわけではないということです。

つまり、学生が行ける会社は1社だけなので、応募は激増しても、辞退も激増する可能性が高い。応募の増加で面接などにかかる人手も増えるのに、企業は大変です。

■実践的な対策は「優良中小企業を狙う」こと

この状態は学生にとっても、あまりよいものではありません。1人1社しか行けないのに、不安感からたくさん受験をするため、各社の競争倍率は軒並み上がります。特に大手企業や人気企業は売り手市場でも100倍超が珍しくなかったのに、今年からは数百倍となってもおかしくない状況です。

学生が不安でたくさんの会社を受けるので、その不安が自己成就して競争倍率が上がってしまうというわけです。しかし、これはある意味どうしようもありません。自分だけ受けなくても競争倍率が上がることは間違いなく、となれば、たくさん受けないと受からないかもしれないからです。

では、どうすればよいのか。私はお勧めするのは、難化する大企業だけではなく、優良な中小企業を狙って受験をすることです。

合格率が1%にも満たない企業ばかり受けても、多くの学生は1社も受からない可能性が大。同じ活動量を増やすのであれば、大企業や有名企業は選別して受け、残ったパワーを優良な中小企業に向けるべきということです。

ここではその探し方について深掘りしませんが、経済ニュースを見たり、OBOGやキャリアセンター、ゼミの先生などいろいろなオトナに聞いたりすれば、優良中小企業は日本にはいくらでもあります。

■「大企業が終わってから」では遅い

ポイントは、多くの学生がしてしまう「大企業の就活が終わってから中小企業に」というスタイルを止めることです。

優良な中小企業は採用数も少ないので、結果そこそこの人気企業となっており、大企業ほどではないにしても、就職活動の初期に採用を完了してしまうところが少なくありません。

大企業が終わってから探しても、狙い目の会社はすでに採用活動を終えていて、残っている中小企業は「人が採れなかった」企業ばかりです。

もちろんそれらの企業にも良い企業はありますが、採れないのは採れない理由があるわけで、その中から自分にとって魅力ある企業を見つけるのは容易ではないでしょう。ですから「大企業と並行して優良な中小企業を先に受ける」ことは、とても重要な行動なのです。

キャリコネニュースにて人と組織に関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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