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小中学校における給食費の未納状況を探る

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 学校給食はとても楽しいものだが…(シルバニアファミリーより)

未納問題は改善の方向に

義務教育課程にあたる小学校・中学校において、定期的に話題に登り社会問題として論議されるのが、学校給食費の未納問題。経済的に困窮し支払いが困難な事例の他、保護者側の怠慢や倫理観の問題などによる未納が殊更に報道で取り上げられ、視聴者・購読者の興味関心を集めるのが一因ともいえる。それでは実態として学校給食費の未納はどの程度の割合で起きているのだろうか。

文部科学省では不定期的に学校給食の徴収状況を調べて発表している。次以降のデータはその直近分、2012年度のものとひとつ前の調査、2010年度分について精査を行ったものである。公立学校に限定されるが、直近における学校給食費の未納は、(一人でも)発生している学校数では小学校で4割、中学校で6割近くとなっている。

↑ 学校給食費徴収状況(小学校)
↑ 学校給食費徴収状況(小学校)
↑ 学校給食費徴収状況(中学校)
↑ 学校給食費徴収状況(中学校)

未納生徒が居ない学校の生徒も含めて、生徒数比率ではそれぞれ0.8%、1.2%。そして金額を計算すると0.4%、0.6%に留まる。人数比より金額比の方が小さいことから、給食費の低い学校・事例で未納が多分にあることが想像できる。また、概算で「未納生徒が”居る”学校における、生徒数比率」を求めると、それぞれ1.7%・2.0%になる。未納問題が発生している学校では、おおよそ2クラスに1人、該当する生徒がいる計算になる。

2年前の前回調査の結果と比較すると、未納生徒比率・額共に減少している。学校給食費の未納問題は、数字の上では改善の方向にあると見て良い。

保護者の経済上から責任感・倫理観の問題へ

これら未納生徒に対する、教師や学校側が認識した限りでの主な原因を大別すると、大体6割は「保護者の責任感・規範意識」となる。残り4割の大半は「経済的な問題」。あくまでも教師サイドの意見で実態をどこまでつかんでいるかは不確定要素が多いが、参考になる値ではある。

↑ 未納児童生徒の主な原因についての「教師による」認識(未納児童生徒対応の教師回答)
↑ 未納児童生徒の主な原因についての「教師による」認識(未納児童生徒対応の教師回答)

小学生保護者よりも中学生保護者の方が、多少ながらも「保護者の責任感・規範意識」によるところが大きい”と教師などが認識している”事例比率が高い。また、前回調査と比べると、小中学生共に経済的な理由による事例比率が減り、保護者自身の責任感などによるとするものが増えている。未納率そのものが減少していることを合わせて考えると、経済的な問題と比べて倫理観による未納の減り方が小さく、相対的に比率が上がっていると見た方が良いだろう

文部科学省ではこれまでの各種通知に従う形で、補助制度の活用、保護者への周知啓蒙活動を継続すると共に、説得に応じない保護者へはやむを得ない法的措置も含め、適切な対応をするように求めている。児童手当法に基づいた天引きの仕組み導入においても、各部局との連携を図るよう指示している。

一方、一部報道機関では今回の発表をもとに、必要以上に未納の概算額(調査対象学校内では4534万9000円。日本国内の学校全体数比率から逆算すると、日本全体では約22億6000万円と試算できる)を強調する向きもある。事由の比率では親のモラル低下が懸念されるが、一方で全体額、発生比率共に改善の動きを示していることもまた事実である。インパクトのある数字に惑わされたり、誤った印象で感情的な判断・行動をしないよう、そして正しい事態把握を願いたい。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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