新型アフリカツインは都会で使えるか!? 「足着き性」に絞って検証してみた
「ぜんぶ盛り」ES・DCTは威風堂々の巨漢
ここ半月ほどお借りしていた、新型アフリカツインCRF1100Lの印象をお伝えしたい。ただし、ストリートがメイン。装備やパフォーマンスの素晴らしさは既にいろいろなメディアで紹介されているので、ここでは主に「足着き性」について検証したいと思う。
新型アフリカツインは従来型に比べて排気量を拡大しよりパワフルに、そして軽量・コンパクト化されているのは周知のとおり。電子制御系も進化し、乗り味もさらに洗練された。
今回試乗したのは、長距離ツーリング性能を重視した「アドベンチャースポーツ」の中でも最上級グレードの「CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES Dual Clutch Transmission」(以下、ES)である。ESは電子制御サスペンションにDCTも付いた、言わば「ぜんぶ盛り」タイプ。軽くなったとは言え、車重は250kgとまさに威風堂々たるものだ。重量級になるほど、グラッときたときに支えにくくなるのは皆さん経験済みと思う。あのヒヤッと血の気が引く感じ、イヤなものですよね。
どこでも足が着けるから、どこでも行ける
そこで気になってくるのが足着き性である。まずその目安となるシート高だが、標準で830mmとなっている。これは従来型に比べると40mmも低い値で、さらにシート前側部分もより絞られた形状になったため、格段に足が着きやすくなった。830mmというと、大型のスポーツネイキッドやスーパースポーツと同等レベルである。
実際のところ、自分(身長179cm/体重75kg)の場合、両足が踵までべったり着いてヒザも十分曲がるほどだった。それだけでも感動ものなのだが、実はシートの取り付け位置をずらすだけで、さらに810mmのローポジションに下げることもできる。こうなると重量も苦にならないし、どこでも確実に足が着ける安心感から、逆に「どこでも行ける」と思えるようになる。
通常のアドベンチャーモデルは不整地での走破性を高めるために、サスペンションのストローク量を伸ばし、最低地上高を稼げるようにするのだが、新型アフリカツインは逆のアプローチできたと思った。つまり、どこでも足が着ける安心感を武器に行けるフィールドを広げ、一歩踏み込んでみようとする勇気と希望をユーザーに与えているのだと。これぞ、冒険への誘いである。
もちろん、よりガチなオフロード性能を求める一部のユーザーの声に応える形で、前後サスペンションのストローク量を増やした「S」仕様も期間限定で追加されたが、それとてシート高は870mm(ローポジションは850mm)と、このクラスのアドベンチャーモデルの中では低いほうである。こうしたユーザー本位の設定(特に日本人にとって)にホンダの良心を感じずにはいられないのだ。
足着き性の良さは最も「使える性能」だった
実際に仕事の移動などで都内近郊を走り回っていたのだが、たとえば道路の路肩や停止線手前のワダチなど、路面が窪んでいる場所で足を着くときでも神経質にならずに済むし、ガソリン満タン(24リッター!)のトップヘビー状態でも、さっと足が出るので安心感が違う。さらに裏技ではあるが、ライディングモードをフラットダート向きの「Gravel(グラベル)」 に設定すると、電子制御サスが自動的に減衰力を下げてソフトセッティングにしてくれるため、若干だが車高が下がってさらに足着きが良くなるのだ。加えてDCTは絶対にエンストしないので、渋滞路での低速バランス走行やUターンでも絶大な安心感を与えてくれた。
というわけで、新型アフリカツインは何よりも足着きに優れていることを再発見。地味なことではあるが、実は快適性や実用性、ひいては安全性にも直結している最も“使える性能”なのだと理解した。都会でも便利に楽しくラクに乗り回せる冒険マシンと結論づけたい!
※原文より筆者自身が加筆修正しています。