W杯から久しぶりの代表復帰。「いつでも準備はしている」と語る岡崎慎司の熱い思い
岡崎慎司が日本代表に復帰した。
昨年行われたW杯ロシア大会以来の復帰となり、久しぶりに日本代表のユニホームに袖を通すことになった。
振り返ると、W杯後の岡崎は苦難の連続だった。まず、足首の怪我。昨年4月に左足首を痛め、W杯ロシア大会で悪化させた。そのW杯で反対の右足首も痛め、今シーズンはスタートから出遅れていた。
8月のプレミアリーグ開幕時も特に右足首のコンディションが万全でなく、開幕2試合を欠場。第3節(8月25日)で実戦に復帰した後も、同時進行でリハビリをこなさなければならない状態だった。当時、岡崎も「試合に出たいからといって、焦って試合に出たり、練習するのではなく、自分の足と話し合っていかないといけない。時間はかかると思います。最低3ヶ月はかかる。10〜11月ぐらいまで少しストレスを抱えながらやらないといけない」と、慎重に回復させていきたいと話していた。
さらに、所属先のレスターが「世代交代」に本腰を入れたことが、状況を難しくした。当時32歳の岡崎のポジションには、11歳年下のイングランドU-21代表MFジェームズ・マディソンが新たに加わった。「背番号10」を与えたようにクラブの期待は大きく、マンチェスター・ユナイテッドとの開幕戦でも、マディソンが4−2−3−1のトップ下の位置で先発した。その後もマディソンが先発に入り、岡崎はベンチにまわる構図は続く。挽回したくても、フルスロットルでアピールできない、もどかしい状況が続いた。
そして、今年2月にクロード・ピュエル監督が解任され、新指揮官にブレンダン・ロジャーズ監督を迎えたことが決定打になった。ロジャーズ監督は、フォーメーションを4−3−3に固定。これまで岡崎は「2トップの一角」や「トップ下」を主戦場にしてきたが、チームが4−3−3に移行したことで、さらに苦境に立たされた。
最前線のCF(センターフォワード)には、チームの絶対的エースのFWジェイミー・バーディーが君臨し、その2番手にはナイジェリア代表FWのケレチ・イヘアナチョが入った。中盤「3」の位置も「2人のインサイドMF」と「アンカー」で構成され、ボールをキープしながらゲームをつくる、いわゆるMFの仕事が増えた。
そのため、岡崎の出場機会は途中出場に限定された。ゴールが欲しい展開で2トップに移行したときに出番の声がかかったり、4−3−3の両翼の位置で起用されるなど、出番は限られた。岡崎も「4−3−3に(自分が)当てはめられるかと言えば、それはなかなか厳しい」と、難しい現況であることを認めていた。
結局、今シーズンの岡崎は、国内リーグ戦の先発が1試合に終わり、途中出場が20試合。前述したように複数の事情があったにせよ、日本から欧州に戦いの場を移してから初めて、1度もネットを揺らすことができなかった。
こうして苦しいシーズンを過ごしてきた中でも、岡崎の日本代表への熱い思いは変わらなかった。W杯ロシア大会後は代表から離れたが、代表の試合は遠く離れた英国から映像で必ずチェックしていた。準優勝に終わったアジア後には、「全試合を見ました。残念。優勝してほしかった」と落胆し、「自分がいたら…」と悔しさものぞかせた。
代表メンバー発表の席で、日本代表の森保一監督は「最終節のチェルシーとの試合も映像ですけど、チェックさせてもらいました。十分、代表でもプレーできるだろうということで招集させてもらっています」と語った。プレー面での貢献に加え、岡崎の持つ豊富な経験を若手選手に伝えてほしいと述べた。
岡崎も自身の立ち位置を理解し、若手を引っ張っていってほしいとの要望に快く応じることだろう。ただ、本人としては、パフォーマンスで森保監督の期待に応えたいはずだ。
チェルシーとの今シーズン最終節後、南米選手権での代表入りの可能性について質問を受けると、「とにかく今の自分には、本能で貪欲にやれる環境が欲しい。そういうチャンスがあれば、いつでもやれる準備はしている。獣のような、自分がゴールに向かう迫力や感覚を取り戻すきっかけが必要なので」と熱っぽく語っていた。今シーズンに味わった悔しさや歯がゆさを、キリンカップと南米選手権で晴らしたい思いは強い。
そして、レスターとの契約が今シーズン限りで満了になり、新天地を探している岡崎にとって、南米選手権は絶好のアピールの場となる。今シーズン最終節後の時点で「僕にもわからない」と移籍先が決まっていないと明かしていたが、世界中のサッカー関係者が注目する南米選手権でインパクトを残せば、移籍交渉が一気に進む可能性がある。
今年4月で33歳になった岡崎は、並々ならぬ思いを抱いて日本代表に復帰する。