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パイロット間で話題沸騰中の神ワザ激揺れ着陸シーン

タワーマン元航空管制官
機体を右方向に曲げたまま着陸する飛行機(Photo: まこりげ)

近頃Twitterで、最終着陸体制の航空機が強風に煽られながらも見事に着陸に成功したとある動画が話題になっています。全日空のボーイング737型機が大阪国際空港(伊丹空港)に到着する直前から動画は始まります。飛行機は滑走路とは違う方向に機首を向けたまま、上下左右に振られながら降下を継続し、今にも着陸やり直し(ゴーアラウンド)になりそうな状況が続きます。滑走路に接地する直前でようやく安定したように見えますが、最後に強烈な突風に流され、主翼が地面に当たりそうになるほど傾きますが、パイロットの絶妙な操縦により持ちこたえて無事に着陸に成功します。

これは2020年1月8日、大阪国際空港のB滑走路(32L)に着陸したときのシーンです。そもそも航空機は、進行方向に正対する風を受けて飛行するほうが姿勢は安定します。大阪国際空港の滑走路は南北方向に2本設置されていますが、空港を設置する前からその地域の地上風を観測し、その傾向を見て滑走路の設置方向は決められています。海上や海岸付近にある空港、周辺に山々があったり丘などの高地にある空港は例外ですが、日本は全国的に夏は南風、冬は北風になる傾向にありますので、国内空港の多くの滑走路は南北を向いていることが多いわけです。(尚、大阪国際空港は、騒音の関係で都市部と反対側に飛行しなければならない特殊事情もあります)

ところが、この動画が撮影された時間帯においては、西南西方面から風が吹く、いわゆる横風が強かったことが機首の向きから読み取れます。通常、航空機が着陸するときは、接地点に向けて高度を下げつつ速度を落としながら滑走路の中心を外さないように航空機の姿勢を調整する操作を行います。通常であれば機首は真っ直ぐに滑走路の方向を捉えますが、横風強風時には横風に流されないように機首を風上に向ける操作を行います。カニ歩きのように横向きに進むためこの操作を「クラブを取る」と呼びます。通常、その姿勢のまま接地しても問題ないよう設計されていますが、ギア(タイヤ)へのダメージや衝撃緩和、接地後の制動を考慮して、接地する寸前には機首を真っ直ぐに戻す「デクラブ」操作を行うことも少なくありません。

筆者も管制塔にて、横風着陸で旅客の悲鳴が聞こえそうなほどグラグラと揺さぶられた挙げ句に、うまくいくこともあれば着陸をやり直し急上昇する航空機に対応する経験が数え切れないほどありました。横風着陸自体が決して珍しいというわけではありませんが、今回ご紹介する動画は最後までどうなるか分からない絶妙な着陸シーンとなっています。特に、一度姿勢を戻した後にもう一度クラブを取って二度目に切り返す瞬間は目が離せません。

事実、このTweetのリプライや引用リツイートを見ても意見は様々で、パイロットの技量を称賛するものもあれば、安全サイドを取って早目にゴーアラウンドしても良いのでは、といった意見もあります。いずれにせよ共感できることとしては、こんな吐き気のしそうな機内には出来れば乗り合わせたくないということでしょう。

フルバージョン(オリジナル動画)

ヘッダー画像提供者:https://ganref.jp/m/makorige

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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