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新天地でPGとしての幅を広げようとしているテーブス海がリーグ優勝の先に見据える代表復帰とパリ五輪出場

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
アルバルク東京で存在感を発揮し続けるテーブス海選手(筆者撮影)

【開幕ダッシュに成功した就任2年目のアドマイティスHC】

 Bリーグの2023-24シーズンは第7節まで終了し、アルバルク東京が24チームで唯一1敗(11勝)を堅守し、開幕ダッシュに成功している。

 ここまでの東京が特筆すべき点は、何といってもディフェンスだ。12試合を戦いチームの平均失点は61.5点と、リーグで唯一60点台に止まっている。それだけデイニアス・アドマイティスHCの下、システマティックなディフェンスを展開している証左だろう。

 第5節で京都と対戦するため京都を訪れたアドマイティスHCに、チームが順調に勝ち続けていることを尋ねたところ、「単なる数字でしかない。それ以上にコーチとしてプロセスを重要視している」と、勝ち星以上にチームとしての成長過程に意識が向いていた。

 また同HCは「昨シーズンはすべてが新しい経験だった。リーグ、チームは(ヨーロッパとは)かなり異なり、バスケのスタイルも違っていた。昨シーズン序盤は適応する必要があると感じていた」と説明し、自身がBリーグに適応し、より効果的な戦術を展開できるようになったことを明らかにしている。

新加入のテーブス海選手に期待を寄せるデイニアス・アドマイティスHC(筆者撮影)
新加入のテーブス海選手に期待を寄せるデイニアス・アドマイティスHC(筆者撮影)

【今シーズンの成功のカギを握る新加入のテーブス海選手】

 そんなアドマイティスHCが今シーズンの成功を左右する存在だと考えているのが、新加入のテーブス海選手のようだ。その期待感は、彼の言葉からヒシヒシと伝わってくる。

 「新しいPGを迎え入れたのは、非常に重要な要素だ。カイはPGというポジションで日本の中で卓越した選手の1人であり、チームを高い目標に導いてくれる立場にあると思っている。彼の成長がチームの成長に繋がっていくだろう」

 テーブス選手といえば、2020年1月に留学先の米国から帰国し、21歳で宇都宮ブレックスに電撃入団して以来、188センチの長身PGとして常に注目を集める存在であり続けた。

 アドマイティスHCも、テーブス選手の類い稀なる才能とバスケIQの高さに大いに期待を寄せているのだ。

【新天地でPGとしての幅を広げようとしている長身PG】

 それでは当のテーブス選手は、新天地での役割をどのように捉えているのだろうか。

 「その点は試合によって変わることがあって、自分が積極的に点を取りにいかなければならない試合があれば、ディフェンスや(試合の)コントロールを求められることもあります。

 自分で毎試合判断し、どのようにチームに貢献できるか考えながらPGとしてリードしていくのが自分の役割だと思っています」

 テーブス選手によると、Bリーグ加入以来3シーズン過ごした宇都宮で試合のコントロールを学び、昨シーズン在籍した滋賀では爆発的な得点力を求められたという。

 そして東京ではディフェンスも含めそれらすべてをバランスよくこなし、チームを牽引していくことが求められているという。つまりPGとしての幅を広げようとしているわけだ。

 アドマイティスHCとも密に対話を続けながら、現在のテーブス選手は彼が求めるバスケに適応しようとしている。

ここまで42.7%と高いシュート成功率を残しているテーブス海選手(筆者撮影)
ここまで42.7%と高いシュート成功率を残しているテーブス海選手(筆者撮影)

【W杯での代表漏れという悔しさを乗り越え目指すパリ五輪出場】

 まだ25歳のテーブス選手は、今後長期にわたり日本代表も牽引していく存在だと期待される逸材でもある。それだけにトム・ホーバスHCの下、W杯アジア地区予選では出場メンバーに選ばれながら、今年8月の本戦で代表漏れしたことに「めちゃくちゃ悔しかったです」と本音を漏らす。

 今回のW杯で日本代表は、48年ぶりに自力でオリンピック出場権を勝ちとることに成功している。もちろんテーブス選手は、代表復帰とパリ五輪出場に意欲を見せている。

 「自分が代表から漏れた理由は明確でした。富樫選手、河村選手がいる中、自分がPGとしてコートに立ったときは彼らができないことをやる、特にディフェンスでその穴を埋め、オープンシュートはしっかり決めきるという自分が代表で求められる役割をこなせていなかった。次回呼ばれたときはその役割をしっかりこなそうという気持ちです。

 Bリーグとトムさんがやりたいバスケはちょっと違うので、代表に繋げていくためには1人の選手としてシュート成功率だったり、状況判断だったりをステップアップしていくことです。

 でも今一番集中しているのは、アルバルクというチームで優勝することしか今は考えていないので、それを考えて最優先にやっています」

 テーブス選手が話すとおり、彼がチームを優勝に牽引できていれば、間違いなくPGとして大きな成長を遂げたことを意味している。その先には間違いなく、代表復帰とパリ五輪のコートが近づくことになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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