男性は実収入27万6809円、黒字8万9477円…一人身で働く若者世帯のお財布事情
苦しい生活を送っているとのイメージがある、一人身で働く若者達。どのような日常生活を過ごしているのか、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果を基に、お金の面から確認する。
今記事における勤労者(働く人)とは世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人を意味する。そして単身世帯は当然当事者が世帯主。ただし世帯主が社長、取締役、理事など会社団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」となる。また個人営業の人や自由業者、そして無職の人は勤労者には該当しない。
次に示すのは、お金のやりくりの内容。実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ見ていく。また、実収入から非消費支出を引いたものが可処分所得となるが、可処分所得における黒字の割合を黒字率と呼んでいる。
・実収入=勤め先収入+その他収入
・実支出=非消費支出+消費支出
・実収入=実支出+黒字
・可処分所得=実収入-非消費支出
・黒字=可処分所得-消費支出
=実収入-(消費支出+非消費支出)
・勤め先収入+その他収入=非消費支出+消費支出+黒字
=非消費支出+可処分所得
まずは男性。これらは1か月あたりの値。
非消費支出は14.6%。食費で13.9%、住居費で13.8%と大きな割合を示し、交通・通信費も負担が大きい。とはいえ、食費も月に4万円には届かず、家賃も平均ではあるが4万円未満。医療費などは2000円強で済んでおり、教養娯楽には2万円近くが費やされている。そして貯蓄などに回される黒字は9万円近く。
女性になると大きく様変わりを見せる。
女性は男性と比べて実収入金額が低いため、やりくりも多少厳しいものとなる。食費は5千円強ほど下がるが、セキュリティなどを考慮するためか住居費は男性よりもむしろ上。光熱・水道費も高くなる。また、被服や履物なども男性と比べて2倍近く高い。「その他の消費支出」額も男性よりかなり高めの額を示しているが、これは理美容サービス、美容品、身の回り用品などがかさんでいるため。結果として黒字額は男性と比べて3万円以上少なく、5万円強にとどまってしまっている。
食料の内訳も男女では大きな違いが見えてくる。
男性の外食額が女性と比べて大きいのは、就業先の昼飯の事情によるもの。単身世帯で自前のお弁当を作り持参するのは、女性はともかく男性ではやや難儀なものとなる。
価格がそのまま量の多少を意味するわけではないが、男性は調理食品、飲料、酒類が多く、女性は穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜・海藻、果物、油脂・調味料、菓子類が多い。男女それぞれの一人暮らしにおける食生活が垣間見れて興味深い。特に男性は調理食品が女性より1700円ほど多く、中食に頼りがちな感はある。
今件はあくまでも平均的な若年単身勤労者世帯のお財布事情であり、実情はその立ち位置によって大きな違いを見せる。すべての若年単身勤労者世帯がこのような金銭事情にあるとは限らないことに留意が必要。
一方、晩婚化に伴い今後さらに増加するであろう若年単身者の実情を知る上で、よい指標となることに違いはあるまい。
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※全国家計構造調査
家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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