丸山桂里奈、常にスイッチON!出し惜しみはしない
2011年にFIFA女子ワールドカップ(以下・W杯)で優勝し、国民栄誉賞を受賞した「なでしこジャパン」元選手の丸山桂里奈さん。昨年は「ブレイクタレント」部門で3位(ニホンモニター調べ)となり、まさかの“ぶっちゃけキャラ”と独特の存在感で、今やバラエティー番組では引っ張りだこ。その勢いは、さらに加速しています。そんな彼女の言動は“キャラ”なのか“素”なのか!?直撃してみました!
――タレント活動を始めて2年。忙しいですよね。
ありがたいですね。でも、現役の時も毎日練習して試合して…という感じだったので、忙しさでは、そんなに変わらないかも。
今年に入って1日も休んでいないんですが、ストレスが溜まるとかはなく。今までサッカーしかしてこなかったから、日々いろんな人に出会えて新しいことができているのが楽しいので、逆に休みはあまりいらないです。
――現役時代と変わったことは?
“おいしいもの”を食べるようになったことでしょうか。現役時代は、月曜から木曜にかけて“タンパク質”を取って、試合前の2日間だけ“炭水化物”…と、食べる物が全て決まっていたんです。
アスリートは、食べる物がパフォーマンスに直結するじゃないですか。だから、万が一体調を崩したりしないようにと、食事は全部自分で作っていました。“食べる”というよりは、身体やパフォーマンスのために“摂取する”というニュアンスでした。
でも、世の中にはいろんなおいしいものがありますよね。コンビニも、現役時代はほとんど行ったことなかったんですけど、コンビニスイーツとか本当にレベルが高くて。だから引退した今は、自分で作るより世にあるおいしいものを片っぱしから食べています。
――自炊していたってことは、料理は得意?
得意ってほどでもないですけど、普通に生活できるくらいには作れるかなと。今はいませんが、かつてカレシに作った時には「おいしい」って言ってもらいました。得意料理は「ガパオライス」。でも、最近は作りたいって思わないですね。作らなくても、おいしいものは外にたくさんあるので(笑)。
――タレントへの転身は、いつ頃から考えていたんですか?
現役時代から現在のホリプロに所属はしていましたが、当時はサッカーに集中していたので、そんなにテレビの仕事はやっていなくて。サッカーを辞めてテレビのお仕事を…となった時に、事務所の方たちが「これがいいんじゃないか、あれがいいんじゃないか」といろいろ考えてくれて、うまくタレントへのレールを敷いてもらったと思います。
昔から、明石家さんまさんや芸人さんにすごく憧れていて、実は一番リスペクトしているのはサッカー選手ではなく、芸人さんなんです(笑)。だから、そんな方たちと大好きなバラエティー番組で一緒にお仕事できるようになったらいいな、というのはずっと思っていました。
今、その願いがかなっている毎日です。でも自信はないです、サッカーなら自信ありますけど。芸能界で私は“青物”だし。
――“青物”…って?
赤ちゃんって、お尻が青いじゃないですか。芸能界での私は、まだそんな程度かと。今までサッカーしかしてこなかったから、テレビの世界で右も左も分からなくて、日々いろんな人に教えてもらっています。
――とはいえ、昨年は「ブレイクタレント」3位。自分のどこがウケたと思いますか?
私、自分が自分で分からないんです。自己分析・評価ができないから、仕事を終えて「ヨッシャー!」みたいな手ごたえも感じたことないし。サッカーだったら、いいプレーができなくても得点さえすれば“結果”を出したってことになりますけど、テレビの世界って目に見える“結果”が必ずしもあるわけじゃないですよね。だから、「全力でやる」ということだけを考えてやってきました。それがよかったのかな…。
お仕事をいただけるってことは期待されているってことなので、それに応えたくて。一生懸命やったからといって結果が残せるとは限らないですけど、がむしゃらにやることで、選んでくれた人に「選んでよかったな」って思ってもらえるようになりたいです。
――バラエティー番組で笑いを取っていることが、自信につながりませんか?
つながっていませんね。実は、収録などで自分がトークしている時って、他の人の笑い声があまり耳に入ってこないんですよ。自分の話したいことをどうにかうまく伝えたい…ということに集中するあまり耳が“閉じて”いるので、自信につながるような手応えなんて、感じたことないです。
サッカーだったら「これ得意だな」っていうプレーはありましたけど、今は、何が得意だなんてまだないし、勉強させてもらっています。
――ちなみに、現役時代の有名なエピソード「オフサイドを知らなかった」はネタではないんですか?
(当時なでしこジャパンを率いた)佐々木則夫監督も、その話をいろんなところで聞かれて「本当の話だ」と答えているんですが、私はルールを勉強しようとは思わなかったし、逆に今思えば、ルールを分かっていなくても“結果を出せていた”ということなんですよね。それもこれも、選手や周りの方が支えてくれたからであって、本当にいい環境にいたんだなと、改めて実感しています。
佐々木監督も、私みたいな“感覚で動くタイプ”には、理屈を教えるより自由に動かす方が選手として活きるからオフサイドを教えなかった…とも話されていましたね(苦笑)。
――芸能界では、露出し過ぎると飽きられる…とも言われますが?
私よく「ネタを出しすぎ」って言われるんですけど、ネタってそんなにないものなんですか?毎日生きていく中で新しい出来事ってどんどん出てくるじゃないですか。だから聞かれたことに対して、自分が今思っていることを100%返しているだけで。出し惜しみって言ってもそのやり方も分からないし、飽きられることを気にして目の前のことを一生懸命できなくなる方がイヤですね。
サッカーでも、もちろん目標はあるにせよ、1日1日を全力で臨んで、100%出し切っての練習や試合の積み重ねがW杯の優勝につながったわけで。この先どうなっていくか…なんてことはいちいち考えず目の前のことに“全力投球”するだけです。
――全力投球、疲れませんか?
よく「疲れないんですか?」って聞かれますけど、私は「ON」と「OFF」なんてないと思っています。生きている限りは「ON」!携帯電話と同じで、電源入れたら(=生まれてきたら)ずっと「ON」、充電切れたら「OFF」で、私にとって「OFF」は寝ている時くらいかな。
だから、家にいようが、カレシとデートしていようが、サッカーしていようが、お仕事していようが、常に「ON」で100%です。「ON」と「OFF」を切り替えることなく生きていく、というのがマイルール。そんな中で今一番大切なのがお仕事だから、自分が持っている力を全てそこに注いでいるというだけです。
――丸山さんといえば、駄菓子など手土産を持って楽屋あいさつに回るのが話題になってますよね。
これは、丸山家先祖代々伝わるものなんです。友人の家などに遊びに行く時には、親が「これを持っていきなさい」と、手土産を持たせる家だったんですよ。代々やってきたことだから、私も無理してやっているわけじゃないんです(笑)。
番組でご一緒した長嶋一茂さんから「そんなことをしていたら疲れるよ」って言われたんですけど、疲れるとかなくて、逆に楽しくて唯一の“趣味”みたいになっているんです。「買いに行くの大変でしょ」とか「お金使うでしょ」とかも言われるけど、買いに行く時に「あすはこの人とご一緒するからこういうものが好きかな」とか、1人1人を思い浮かべて探すのが楽しいんです。
例えばきょうだと、ヒロミさんはDIYをやるので、自分で組み立てる車のチョコをお渡ししました。手土産を通じて、私がワクワクさせてもらっているんです。
――私も以前いただきましたが、その手土産に書かれていたのが「とにもかくにも朝を楽しめる人間に生まれ 人間でよかったと思う日です」という哲学的なメッセージで驚きました。
あれは、大阪に結構遅い時間に“前乗り”した日で、翌朝が8時入りという状況で書いたメッセージなんです。
前夜寝るのが遅かったから早起きしたくない…とか思っちゃう人間じゃなくて、どんな時も「きょうも朝が来てよかった!」とか「きょうも太陽が味方についていますね!」とか。そんな、“朝を楽しめる人間になりたい”という意味を込めて。
手土産に添えるメッセージは、皆さんそれぞれで変えています。最近は、きょうという日をダイレクトに感じてもらいたいので、その日の朝にその日の気分で書くことを心がけています。
――今年はW杯、2020年はオリンピック。解説とか興味はありますか?
現役を引退して、解説をする方もいれば指導者になる方もいて。どちらもすでにたくさんいらっしゃるし、自分から「解説がやりたいです」とかはないです。
とはいえ、サッカーの仕事をしていない時でも、私にとってサッカーは“切り離せないもの”。例えば、メディアで私を紹介していただく際は、W杯準々決勝のドイツ戦で決めたゴールの映像がよく流れるんですね。そうすることで、日本の女子サッカーが世界一になって国民栄誉賞をもらったんだということを、改めて見ている人に伝えられるので、それも一種のサッカーへの恩返しだと思っています。
もちろんサッカーが好きだし、ずっと応援はしています。オリンピックに関することも、自分が必要とされたら全力で頑張ります。
サッカー選手って、求められれば移籍するじゃないですか。そういうのと同じで、私は必要とされるところには喜んで行って全身全霊をかけて臨みますし、必要とされなかったらそれはそれで応援する側に回りたいと思います。
――3月26日で36歳。女性としての未来図は?
40歳くらいまでには結婚したいですよね。普通だったら所属事務所にあれこれ言われたりするんですかね?その辺りはとても自由にさせてもらっていて、「カレシもどうぞ作ってください」って。縛りつけることもないし、いい意味で“飼い犬”みたい(笑)。いろんなところを走らせてもらって、見守ってもらっているような。
だからそんな状況になったら、例えば週刊誌に撮られる前に、逐一マネジャーさんに報告しておいて、もし報道が出ちゃったとしても、全て事務所は事実関係を把握している…という状態にしておきたいです。ただ、今は全然相手はいないんです。
――今後やってみたい番組や共演したい人は?
私、出ていない番組まだめちゃくちゃありますよ。そういえば、現役の時はよく「情熱大陸」(TBS系列)に出たい、なんて言ってましたね。今は“何に出たい”というよりは、サッカー選手なのにこういう一面があるんだ…ってギャップを感じてもらえるような番組が、うれしいかな。でも、端から端まで何でも出させてもらえたらありがたいです。
――女優のオファーが来たら?
それはもう、本当に頑張ってやります。演技経験は、今のところ「スカッとジャパン」(フジテレビ系列)だけですが(笑)。
今まで“テレビを見る側”で、1時間のバラエティーを撮るのに2時間も収録するなんて知らなかったんですけど、同じように、ドラマや映画もとんでもない時間を費やして撮るっていうじゃないですか。だからそれを経験できるチャンスが回ってきたら、すごく張り切るでしょうし、できるかできないかは分からないけど、とりあえず何でもチャレンジします。
だって、まだ見たことがない世界に連れて行ってもらえるのって、すごく魅力的なことですから。
(撮影:長谷川まさ子)
■インタビュー後記
実は、テレビで丸山さんを見て私も思っていました…「エピソード出しすぎ」「小出しにすればいいのに」って。でも、世界と戦ってきた人は、いつだって100%なんですね。出し惜しみなんて、丸山さんの辞書にはないんですね。だから今テレビで見せているのは、キャラではなく、“まんま”なんですよね。今回のインタビューで、その“まんま”は、「信念」と「瞬発力」と「気遣い」でできていると、私は感じました。今後、丸山さんが“見たことのない世界”でどんなことをキャッチし、表現していくのか楽しみです。
■丸山桂里奈
1983年3月26日生まれ、東京都出身。小学校6年生でサッカーを始め、 日本体育大学在学中にサッカー女子日本代表に選出される。
FIFA 女子ワールドカップには2003年と2011年の2度出場し、2011年のドイツ大会では準々決勝ドイツ戦で決勝ゴールを決め、日本の初優勝に貢献した。オリンピックは、2004年のアテネ、2008年の北京、2012年のロンドンと3度出場。2016年12月、現役を引退。現在はタレントとしてテレビ、ラジオ、雑誌などで活動中。