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「いいことが起こりそう」プロテスト最終日に双子の岩井姉妹に舞い降りた現象とは!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

 日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の難関のプロテストを潜り抜け、武蔵丘短期大学に通う大学1年生の双子の姉妹、岩井明愛(あきえ)と千怜(ちさと)が2人揃って合格を果たし、晴れてプロゴルファーになった。

 姉・明愛は2020年の日本女子オープンでローアマを獲得したため、最終テストのみの一発勝負。妹・千怜は3月に1次予選、5月に2次予選、そして6月に最終テストという3段階をすべて突破しての合格だった。

 2人揃って挑んだ6月22日から4日間の最終テストでは、3日目終了後にどちらも通算6アンダーで10位に並び、最終日は双子の姉妹が揃って同組になるという運命のような宿命のような珍しいペアリングになった。

 その最終日、明愛は6つスコアを伸ばす快進撃を披露し、通算12アンダーで堂々3位。千怜も1つ伸ばし、通算7アンダー、9位タイとなり、上位20位タイまでの合格ラインを2人揃ってクリアした。

 そこに至る過程で、双子姉妹は不思議なものを感じ、そして不思議なものを目にしたそうだ。

武蔵丘短期大学のユニフォームを着て、キャンパス内のゴルフ練習場を背景に記念写真
武蔵丘短期大学のユニフォームを着て、キャンパス内のゴルフ練習場を背景に記念写真

【双子のテレパシー!?】

「アマチュア最後のラウンドで、2人一緒に同じ組で回れて、嬉しかった」

 プロテスト合格から、わずか3日後、岩井姉妹は大学で授業を受けていた。

 埼玉栄高校を卒業後、今年4月から同じ埼玉県内にある武蔵丘短期大学へ進学した明愛と千怜は、どちらも「健康スポーツ」を専攻し、身体のコンディショニングやトレーニングに関する諸々を学んでいる。

 5歳で初めてゴルフクラブを握り、小学2年生でレッスンプロの指導を受け始め、数々のジュニア・タイトルを獲得してきた日々を、姉妹はいつも一緒に歩んできた。

 しかし、プロテストでは、千怜は1次から3段階、明愛は最終テストのみとなり、異なる歩み方、挑み方になった。

 1次、2次を必死に突破してきた千怜を明愛は常に励まし、最終テストで2人はようやく合流。そんな様子を傍から眺めていると、やっぱり双子はテレパシーで互いに引き合っているのだろうかと思えたりもしていたが、最終日を同組で回ることになったときは、「やっぱりテレパシーだ」と頷かずにはいられなかった。

 その現象は、双子の姉妹自身にとっても、それなりに不思議な現象だと感じられていたのだろう。

 プロテスト合格から3日後、大学の授業を終えた姉妹と向き合うと、姉・明愛は開口一番、「アマチュア最後のラウンドで、2人一緒に回れたので、、、」と感慨深げに言った。

千怜のバッグには、仲良しグループからサプライズで贈られた手作りのお守り。千怜は「これを握り締めて心を落ち着けた」、明愛は「ホテルの部屋で毎晩眺めて頑張ろうと誓った」
千怜のバッグには、仲良しグループからサプライズで贈られた手作りのお守り。千怜は「これを握り締めて心を落ち着けた」、明愛は「ホテルの部屋で毎晩眺めて頑張ろうと誓った」

【何かいいことが起こりそう】

 プロテスト最終日に起こった「不思議」は、それだけではなかったのだと、姉妹は明かしてくれた。

「14番のパー5のティショットを打つ前に、ふと見上げた空に、不思議なものが見えたんです。太陽の周りに虹が出ているみたいな感じで、すごくきれいだった」(明愛)

 姉妹と一緒に回っていたもう一人は、プロテスト2度目の挑戦だった小倉彩愛(さえ)だった。

「小倉さんも一緒に、3人でその不思議な太陽と虹を見て、きれいだね、何かいいことが起こりそうだねって言い合いました」(千怜)

 不思議な現象を見て感じ取った不思議な予感は現実となり、明愛は3位、千怜と小倉はともに9位タイで、3人ともプロテスト合格を果たした。

 「何かいいことが起こりそうだ」と感じて優勝する現象は、プロの世界でも、ときどき起こる。

 2012年の全米プロの開幕前、ローリー・マキロイはロッカールームへ足を運び、海が一望できる美しい窓外の景色を眺め、「何かいいことが起こりそうだ」と感じ、その通り、彼は勝利した。

 つい最近も、スペインのジョン・ラームがPCR検査で陽性判定を告げられ、単独首位で3日目を終えた米ツアー大会からの即座の棄権と隔離生活を求められたのだが、彼は落胆する代わりに「これはきっとハッピーエンドの物語だ。何かいいことが起こりそうだ」と感じ、それから2週間後、全米オープンを制覇した。

【準備完了の証】

 虹が太陽を取り巻く不思議な絵柄を目にしたことは、双子ではない小倉も一緒に目撃したのだから、双子ならではのテレパシーではないのかもしれない。

 「何かいいことが起こりそうだ」と感じて、その通りになる前例は、実を言えば、いくつもあったことを考えると、これも双子ならではの特殊な何かではないのだろうと思う。

 「調べたんですけど、なんか、ハロ現象っていうものらしいです」

 明愛がスマホで検索した画面を示してくれた。そう、太陽を取り巻く七色の光の輪は「ハロ現象」という光学現象だそうで、超常現象でも謎でもない。

 だが、プロテストの真っ只中で、岩井姉妹と小倉の3人は、ほんの一瞬、クラブを持つ手を止め、空を見上げる余裕があった。

 そして、空に展開されていた珍しい光学現象に気付き、それを「きれいだね」「いいことが起こりそうだね」と感じられる余裕があった。

 そう、彼女たちの心は、すでに合格するための準備が整った状態だった。だから「いいことが起こりそう」の予感は、そのまま現実になった。

 マキロイやラームの例も、よくよく振り返れば、彼らのメンタル面がメジャー制覇を成し遂げるために「レディ・トゥ・ゴー(準備完了)」になったからこそのメジャー制覇だったのではないか。

 心が準備完了とは、どういう状態なのか。きっとそれは、感謝の気持ちを抱き、謙虚な姿勢を保ち、ともに戦う他選手をも思いやることができるような、そういう状態なのではないだろうか。

 平たく言えば、ガツガツせず、ツンツンせず、「いい人」「素敵な人」になることができるかどうか。

 心がナイスでなければ、ナイスなゴルフはできないはずだから――。

 岩井姉妹のプロテスト最終日の目撃談を聞いて、私はそんなことを考えた。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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