保守派と進歩派の「上映禁止」と「鑑賞奨励」の対立の中、韓国映画「ソウルの春」がついに1千万人を突破!
今月12日にこの欄で「韓国人は政治、歴史ものが好き!?44年前の軍事クーデターを扱った映画『ソウルの春』が爆発的ヒット!」と題して先月22日に封切りされ、話題となっている映画を紹介したが、予想通り、昨夜観客が1千万人を突破した。公開されてからまだ33日しか経っていない。韓国の人口は約5150万人なので国民の5人に1人はこの映画を観たことになる。
(参考資料:韓国人は政治、歴史ものが好き!? 44年前の軍事クーデターを扱った映画「ソウルの春」が爆発的ヒット!)
韓国の映画、ドラマは日本でも人気を博しているが、今年上映された韓国映画の中で1千万人もの観客を動員したのは5月31日に公開され、7月1日に1千万人に達したマ・ドンソク主演のシリーズ映画「犯罪都市3」(1千68万人)以来である。韓国映画史上、観客1千万人越えは22番目の快挙となる。
映画そのものは日本で言うところの「お堅い映画」である。それも44年前に発生したクーデターを扱っている。
当時、長期政権の座にあった朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が1979年10月26日に側近の情報部長に暗殺された混乱の隙を突き、後に大統領になった全斗煥(チョン・ドファン)少将ら若手将校らが同年12月12日に決起した「粛軍クーデター」を題材にしているのである。
一言で言えば、軍部の鄭昇和(チョン・スンファ)陸軍参謀総長兼戒厳司令官ら軍主流派と全斗煥国軍保安司令官ら少壮将校らとの9時間にわたる一触即発の暗闘を描いた実録映画である。
それが何とも不思議なことに爆発的なヒットとなったのである。
その理由については▲9時間の暗闘を1時間半で解りやすく、興味深く描写するなど作品の出来が良かったこと▲「国際市場で会いましょう」のファン・ジョンミンや「私の頭の中の消しゴム」のチョン・ウソン、「KCIA 南山の部長たち」で朴正煕大統領役を演じたイ・ソンミンなど人気のある実力派、演技派俳優が出演していること▲歴史的な事件、特に暗黒史への20~30代の若い層の関心が予想外に高かったことなどが挙げられている。
この他にもクーデターが発生した12月12日を前に、それも全斗煥氏の命日(2021年11月23日)の前日に公開されたことや全斗煥氏の孫がこの春に当時軍が武力鎮圧した光州民主化運動被害者らの墓地を参拝し、被害者や遺族に謝罪し、関心を集めていたこと▲死去から2年経っても全斗煥氏の埋葬地を巡って候補地で反対運動が起きたこと等のタイミングも重なったようだが、この映画の上映を巡って保守派と進歩派の間で上映禁止と鑑賞奨励の対立、騒動が起きたことも話題を集めた一つの要因となったようだ。
全斗煥役の主演のファン・ジョンミンにとっては2014年に上映された朝鮮戦争の南北離散家族を扱った「国際市場で会いましょう」(1426万人)、2015年に上映された刑事ものの「ベテラン」(1341万人)に続き、3本目の1千万観客動員作品となった。
なお、韓国で最初に1千万人を突破した映画は2003年に上映された金日成(キム・イルソン)主席を暗殺する北派工作員部隊を扱った実録映画「シルミド(実尾島)」である。