JR東日本のモバイルSuicaの活用法。自動改札機で精算なし、個人間送金を可能に、ビッグデータの利用
JR東日本は交通系ICサービス「モバイルSuica(スイカ)」の位置情報データを活用し、自動改札機で精算しなくても鉄道に乗れるようにする。スイカの個人間送金を可能にし決済機能も高める(9日付日本経済新聞)。
モバイルSuica(モバイルスイカ)は、JR東日本が提供するアプリ。「おサイフケータイ」対応の携帯電話及びApple Pay・Google Pay対応機種を含んだスマートフォンにおいて利用できる。
モバイルSuicaはカード形のSuicaと同様にIC乗車カードのほか電子マネーとしても利用することができる。
JR東日本はこのモバイルSuicaの機能を発展させて、カードではできない携帯のアプリ機能を利用しての自動改札機で精算しなくても鉄道に乗れる機能を加える。
記事には改札フリーは、モバイルスイカの位置情報にひも付く沿線上の移動データを基に、出発から到着駅までの運賃を徴収できる仕組みを想定するとあるが、これだけではどのようなシステムになるのかわからない。
これは利用者の利便性というより、1台あたり数千万円かかるとされる改札機の更新や修繕にかかる維持管理コストの削減という意味合いが大きいようである。
さらにこれまでせっかくの電子マネーの機能が生かされていなかったことから、スイカの個人間送金を可能にし決済機能も高めるようである。
日経新聞によるとモバイルスイカの累計登録は3147万で、キャッシュレス決済ではPayPay(約6600万)やd払い(約6300万)を追うそうである。
JR東日本のインターネット銀行「JRE BANK(JREバンク)」とも連携し利便性を高めれば、決済手段としてのスイカの魅力が高まる。ポイントなども加われば、登録数や決済頻度の向上を見込める。
移動や決済のビッグデータの質と量が向上すれば、マーケティングなどに利用でき、こちらの価値はかなり大きなものとなる。
そもそも電子マネーそのものの普及目的として、利用者にとっては現金を持たずとも良い上、利子相当ともされるポイントが貯まることが利点となる。
サービス提供者にとっては利用者のデータ活用が大きな目的となろう。
JR東日本にとっては、まず交通系サービスが主目的であったが、電子マネーとしてのデータの活用を今後さらに探っていくものと思われる。
ただし、JR東は2013年に移動データの外販サービスを試みた。JR東はスイカの利用履歴などに伴うビッグデータを日立製作所に販売していたが、2013年7月に「利用者への事前説明が不足していた」として継続的なデータ提供を中止した。
たぶん「外販」というところが反発を受けたとみられるが、ビッグデータの活用には利用者も注意を向けているので、細心の注意も必要となろう。