母子世帯のお財布事情をのぞいてみる
一か月のお金のやりくりの中身
結婚や子育ての概念、価値観の変化、就労市場の変動、さらには社会保障の実情に対する注目の高まりなどを受け、母子世帯に対してスポットライトが当てられる機会が増えてきた。その平均的なお財布事情を、総務省統計局の「全国消費実態調査」の結果から確認していく。
今回取り上げる世帯における「母子世帯」とは、言葉通り母親と子供から成る世帯のこと。父親が世帯内に居ない事由は問われていない。用語の定義としては「母親と18歳未満の未婚の子供の世帯」とある。
実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ見ていく。
お金に関する各用語の関係は次の通り。
・実収入=勤め先収入+その他収入
・実支出=非消費支出+消費支出
・実収入=実支出+黒字
・可処分所得=実収入-非消費支出
・黒字=可処分所得-消費支出=実収入-(消費支出+非消費支出)
・勤め先収入+その他収入=非消費支出+消費支出+黒字=非消費支出+可処分所得
なお母子世帯のうち子供が1人の世帯においては、実収入だけでは生活費をまかないきれないため、実支出と帳尻を合わせるために貯蓄の切り崩しが行われている。実収入の部分に「+不足分」が加わっているのはこのためである。他方、子供が2人以上の世帯ではそのような状況は生じていない(実収入>>実支出となり、黒字がわずかだが計上される)ため、実支出のみとなっている。無論あくまでも平均的な数字の上での話。
まずは母子世帯のうち子供が1人のみの世帯。
収入は就労による収入に加え、その他(多分に社会保障給付)などでまかなわれる。それだけではわずかだが実支出をカバーしきれず、不足分は貯蓄の切り崩しで補っている。
非消費支出は12.2%。住居費は13.5%とやや大きめ。そして食費の割合は19.8%と大よそ2割を示している。食費そのものの額はある程度を維持しなければならず、使える金額が限られるために、割合が大きくなる次第(エンゲル係数は22.6%)。交通・通品費も負担が大きく13.7%。医療費などは4600円ほどに抑えられている。
子供が2人以上になると、ぎりぎりだが黒字が出る。
その他収入の多分が社会保障給付などでまかなわれていることに変わりはない。エンゲル係数が高めで、交通・通信費の負担も大きい。子供が2人以上いるのにも関わらず、保険医療の額面が5000円台に留まっている状況には、多分に不安感を覚える。
一応黒字は数字の上では出ているものの、平均的な金融資産の純増率は、子供1人同様にマイナス。消費性向は97.9%。資産のやりくりの中で生じた誤差の範囲であることが分かる。
食卓事情を金額面から
各値について一般的な世帯との比較をしても良いのだが、すべての項目で行ったのでは雑多に過ぎる。そこで食料関連にスポットを当て、さらに詳細な項目から金額を比較する。対象となるのは若年夫婦勤労者世帯のうち、世帯主が30代前半の世帯。平均世帯構成人数は3.47人。18歳未満人数は1.42で、大よそ夫婦2人に1.5人近くの子供がいる計算。ちなみに母子世帯のうち2人以上の子供がいる世帯では、その平均構成人数は3.20人となっている。当然母親は1人のみであることから、子供の数は2.20人となる。
構成人数、構成者の内容(大人か子供か、同じ大人でも男女の違い)、さらには生活様式の違いにより、消費する食品の料や種類は大きく異なる。その上、年齢によって摂取種類・量は多分に変化する。そのため今件はあくまでも参考値でしかないが、主食となる穀物はあまり差異が無く、外食や飲料、野菜・海藻などでは大きな違いが生じている。
菓子類に差があまり出ていないのは子供の数に大きな違いが無い、むしろ母子世帯のうち子供が2人以上世帯の方が多いがため。また調理食品の額が母子世帯・子供2人以上世帯の方が高く出ているのは、母親の就業で自炊をする時間が取れず、調理食品で食事をまかなう事例が多いからだと推測される。
繰り返しになるが、今件はあくまでも平均的な母子世帯のお財布事情。実情は母子世帯に至った状況、そして現在置かれている環境によって多種多様。今件属性におかれているすべての人が、同じような内情とは限らないことに留意が必要。
他方、今後ますます注目を集めるであろう母子世帯の内部事情を推し量るのには、有益な値であることも変わりあるまい。
■関連記事: