遂に「新段階」へ突入か…米国の対北朝鮮制裁
オバマ米大統領は16日、北朝鮮への制裁を強化するため新たな大統領令を出した。1月6日の核実験や2月7日の事実上の長距離弾道ミサイル発射を受けたものだ。財務省はこれを受け、北朝鮮の2個人・15組織・船舶20隻を新たに制裁対象に指定した。
中でも注目されるのは、個人として制裁指定された2人の人物の素性だ。いずれも秘密警察・国家安全保衛部の要員であり、それぞれの駐在国であるシリアとエジプトで、北朝鮮の武器取引を担う「朝鮮鉱業貿易開発会社(KOMID)」のビジネスに携わっているという。
なぜ、彼らに対する制裁指定が重要なのか。理由はふたつある。ひとつは、シリアとエジプトが北朝鮮の兵器ビジネスの得意先であるため。もうひとつは、米国が北朝鮮に対する独自制裁で、「セカンダリーボイコット」(第三者制裁)条項を盛り込んでいるためだ。
北朝鮮はかつて、エジプトとシリアに空軍を派遣。中東戦争でイスラエル軍と戦っており、その後も両国に様々な武器を販売してきた。とくにシリアとの関係は密接で、金正恩第1書記とアサド大統領は頻繁にエールを交換し合っている。
(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘)
米国は昨年12月にも、シリアやロシア、ベトナムで活動する北朝鮮の銀行幹部を制裁指定している。いずれに北朝鮮の友好国であり、これらの国が制裁の「抜け穴」になっているものと疑ったのかもしれない。
(参考記事:米国、「シリア情勢」念頭に北朝鮮に追加制裁か)
しかし、このときと比べても、今回の新たな制裁指定は重要だ。
米国は2月に成立した対北制裁の強化法に、核・ミサイル開発につながる貴金属や黒鉛、アルミニウム、ソフトウエアを北朝鮮に販売したり供給したりする第三国の個人や団体なども制裁対象に含めることのできる、「セカンダリーボイコット」(第三者制裁)条項を盛り込んでいる。
つまり今回の2人の「武器商人」への制裁指定は、シリアとエジプトに対するけん制球にもなるわけだ。国連安保理ではこれまで、北朝鮮に対する制裁決議が繰り返し採択されてきたが、履行に積極的な国は必ずしも多くない。それどころか、世界情勢の不安定化とともに、北朝鮮製の武器に対する需要は伸びている可能性すらある。
(参考記事:北朝鮮の核兵器が「人気商品」になる可能性)
新たな段階に入ったと思われる米国の北朝鮮制裁が、こうした現状を変えられるかどうか。今後の動向を注視したい。