米LPGAワン会長、突然の辞意の背景と今後の行方が気になる
米女子ツアーのLPGAを11年間に亘って率いてきたマイク・ワン会長が、6日(米国時間)に突然の辞意を表明。米ゴルフ界のみならず世界のゴルフ界に衝撃が走った。
あまりにも突然のことで、ワン会長が具体的に2021年のいつまで会長職を務めるのかも、会長の後任候補も、すべてが未定だが、ワン会長が発した言葉をストレートに受け止めて咀嚼すれば、辞任を決めた理由は、何か特別なコトが起こったからではなく、「やり尽くして、もはや特別なコトが起こりそうもないほど安泰だと思うから」という達成感、満足感のようである。
今年2月で56歳になるワン会長のビジネスキャリアは、1987年、プロクター&ギャンブルから始まった。ブランド・マネージャーとなって、製品のブランディングに携わったワン会長は、その後、1990年代の半ばごろからウイルソン・スポーティング・グッズ・カンパニー、そしてテーラーメイド・ゴルフ・カンパニーでゴルフビジネスに携わり、2000年代にはホッケー関連のビジネスやホッケーの普及にも尽力した。
多彩なキャリアとビジネス手腕を見込まれ、米LPGA会長に就いたのが2010年1月のこと。当時、年間24試合しかなかった米女子ツアーを、この11年間で年間34試合まで拡大し、年間賞金総額も41.4ミリオン(約42億円)から76.45ミリオン(約78億7400万円)に大幅アップさせた。
だが、2021年の年明けに、ワン会長はこう語った。
「もしも、LPGAの未来が不確実だったら、私は決して、このツアーから離れようとは思わなかった」
言い替えれば、「もう大丈夫」ということ――だからこそ、LPGAの将来未来は後進に託し、自分自身は別の道を歩もうと心を決めたのだそうだ。
ワン会長は「いつもドキドキ、ワクワクしていたい」と言う。だが、ここ数年はそういう高揚感やスリルを感じることはなかったそうで、辞意を表明しようと決めた日の朝は「この4年間で初めてワクワクしながら目覚めた。いい気分だった」。
ドキドキ感、ワクワク感は仕事に対する最大のモチベーションという意味なのだろう。
「そもそも私は『ひっくり返す男』と呼ばれてきた」
米LPGA会長に就任したときも、米女子ゴルフ人気がすっかり低迷し、運営も財政も困窮もしていた米女子ツアーの現状を「いい方向へ、ひっくり返そう」とドキドキ、ワクワクしていたのだそうだ。
ツアーを安定させた今、今度は自分のモチベーションを別のフィールドで活かしていきたいとワン会長は語った。
米メディアは、USGA(全米ゴルフ協会)のマイク・デービス会長が2021年いっぱいで引退し、USGA会長職が空くことに着目し、ワン会長が新会長に就いてUSGAを率いていくのではないかと見ている。
だが、ワン会長は現時点では「それは時期尚早」としながらも、「確かに、そういうチャンスはある」とだけ答えた。
ワン会長のリーダーとしての能力と手腕は実証済みだ。どの機関、どの場所であれ、今後もゴルフ界の発展のために、ドキドキ、ワクワクしてほしいと願わずにはいられない。