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採用担当者を採用するときにみるべき5つのポイント。焦って採ると、採用のストッパーになってしまいます

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
採用担当者の採用は難しいものです。(写真:Paylessimages/イメージマート)

■採用担当者は引っ張りだこだが

コロナも(一応)明けて、景気がやや上向きになってきました。そこで既に人手不足現象が起こっています。それを受けて、多くの企業が「できる採用担当者」を採用したいと募集しています。

しかし、世の中には採用のスペシャリストはそれほどいません。ですから、焦って採用をすると、経験はあるけれども採用力は低い人を採ってしまいかねません。自社にフィットしない採用担当者を一度採ると、その影響は下手すると数年間の採用力の低下となって表れます。

そんなことなら、私はいっそポテンシャルある未経験者を採用担当候補として採用し、トレーニングした方が結局よいと思います。それでは採用担当者のポテンシャルとはなんなのか、私が重要だと思う5つの要素を述べてみたいと思います。

①「人に対する情熱」

採用担当者は人を信じ、期待する心がなくてはなりません。人は固定的な存在ではなく、環境との関係で容易に変化していくものです。相手が自分のことに興味があり期待していると思えば、それに応えようとします。採用面接を、裁判のように裁くのでなく、応募者の可能性を発掘する場とできたなら、その会社は労働市場から最良の人材を獲得する力を高めることでしょう。

②「人に対する冷静さ」

根本で人への信頼を失ってはいけませんが、人は自分自身は分からないため応募者の言うことだけを真に受けてもいけません。一旦「心理的事実」として聞き、それはそれとして語らない「本意」を汲み取ることが重要です。「本意」は「事実」から推定するしかありません。「事実」は、過去の具体的エピソード、面接の最中「いま・ここ」で起こっていること(ボディランゲージ等)を指します。応募者の自己解釈や自分の先入観を抜き、目の前の事実を冷静に見れば、正しい選考ができるはずです。

③「信念の強さ」

採用に限らないことですが、八方美人では人事はできません。しかし、人事をやりたいと言う人は優しい人が多く、ここで躓く場合が多いように思います。強い志望を持つ人を不合格にするのは大変辛いことですが、合わない人を採用するのはもっと不幸です。コネクションのある人への対応や、好き嫌いと自社の選考基準との乖離等、強く勇気を持って立ち向かわねばならない時が採用担当者にはあります。

④「受容性」

多様な価値観を受け入れたり、許すことを覚えたり、焦らずじっと待ったりするための優しさが採用担当には必要です。完璧な人など誰もいません。いもしない完璧な人を求めて、無意味な厳格さを打ち出しても、本当は出会えたはずの応募者を取り逃がしてしまうだけです。相手の不足するところは育成や他のメンバーがカバーする覚悟を持てばよいのです。それが組織の意味なのですから。

⑤「自己認知」

自分の「偏見」に自覚的であることです。そうであれば応募者への判断を修正することができます。しかし、自分が偏見を持っていることを認めることは辛いことです。乗り越えるためには、よき友人、同僚、先輩、上司等からフィードバックをもらうしかありません。そのためには批判に耐える勇気と、言いやすい雰囲気づくり(怒らない)などが重要です。

以上、自分でも完璧ではありませんし、両立することが難しいことばかりを勝手に挙げてしまいました。この5つのポイントは、会社によって重要性の度合いは変わると思いますが、一つのヒントとなれば幸いです。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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