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松井大輔は再びJリーグで輝くか? ポーランドとのリーグ間力量差から推し量る

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

「松井はレヒアにとって特別な存在だった」

サッカー日本代表として南アフリカ・ワールドカップ(W杯)での16強入りに貢献したMF松井大輔が、Jリーグに帰ってくることになりそうだ。来季はJリーグ2部(J2)で戦うジュビロ磐田による獲得が決定的だと、複数のメディアで報じられている。プロキャリアの約3分の2を欧州で重ねてきたMFは、果たして来季、どんなプレイを見せてくれるのだろうか。

フランスで長く活躍した松井は、今季からポーランドに戦いの場を移していた。移籍したレヒア・グダニスクではPKキッカーも任されるなど、厚い信頼を受けてチームの主力になっていたようだ。

松井の移籍で少し身近になりはしたが、ポーランドのリーグは日本からは縁遠く、実際のプレイを目にするのも簡単なことではない。ポーランドでの活躍は、Jリーグでの輝きに直結するのか? 磐田のファンには、特に気になるところだ。

単純なものさしにはならないかもしれないが、リーグのレベルの差は一つの目安にはなるだろう。今回、ポーランドのスポーツ放送局でエディターを務めるバルトロミエイ・ラビ氏にポーランドリーグの話を聞いた。

まず率直に松井に対する現地の評価を語ってもらうと、「レヒア・グダニスクはやや力が劣るクラブで、松井はこのクラブにとって特別な存在だった。技術が段違いだった」と実力を絶賛した。

その松井の技術も一つの基準として、ラビ氏は「エクストラクラサ(ポーランド1部リーグ)の選手は技術の点で、日本人選手よりも劣るということは知っておいた方がいい」と、ポーランドと日本の差を語る。

ただしポーランドの代表チームは、来年のブラジルW杯出場は逃したが、今回の欧州予選ではイングランド代表と引き分けたこともある。さらにクラブレベルでも、昨季のチャンピオンズリーグ決勝を戦ったドイツの名門ボルシア・ドルトムントに、ビッグクラブが熱視線を注ぐロベルト・レヴァンドフスキとヤクブ・ブワシュチコフスキ、ルカシュ・ピシュチェクという3選手を送り込んでいる。この事実は、ポーランドリーグの潜在的な力を示すのではないだろうか。

ラビ氏は、冷静に実情への意見を述べた。

「もちろん、ボルシア・ドルトムントには3人のポーランド人選手がいるが、ポーランド人の好選手はその3人しかいないというのが本当のところだ…。だから、もしもヨーロッパで素晴らしいキャリアを築きたいと思うなら、ポーランドからスタートしてはいけない!」

ポーランドからのステップアップは可能か?

ドルトムントが覇権を争うブンデスリーガは、東欧の選手にとってイングランドなど他の大きなリーグへ渡るステップアップの場となる事例が少なくない。日本人選手も、香川真司がドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した実例があるほか、清武弘嗣や長谷部誠にもイングランド行きの可能性が噂されたことがある。では、ポーランドの選手の流れに乗って、エクストラクラサを日本人選手がドイツや他国に渡るステップアップの場にすることは可能なのだろうか。

ラビ氏は、リーグに対して悲観的な見方を示す。「個人的には、ポーランドリーグは非常に深い危機に陥っていると思う。Jリーグや日本代表チームはポーランドよりも上であり、エクストラクラサは外国人選手にとって、大きなステップになるとは思えない」と、評価を下す。

松井のほかにも、今季のポーランド1部リーグで戦っているサムライがいる。

「ポーランドには、ほかにも2人の日本人選手がいる。赤星貴文と村山拓也だ。2人とも、エクストラクラサの中堅クラブであるポゴニ・シチェチンでプレイしている」

「ポーランドの監督やメディアは、彼らはとてもプロフェッショナルな選手であり、とても高い技術を備えていると評価している。実力は、ピッチで証明している」

彼らへの評価も松井同様に高いが、それでもステップアップは難しいかもしれないと語る。

「ポゴニ・シチェチンに所属する2人の日本人選手は、ともに20代半ばを過ぎている。他のヨーロッパのチームにジャンプアップするには、やや年を取っている。ドイツにも日本人選手はいるが、ヘルタ・ベルリンやハノーファー…、ましてやシャルケやレヴァークーゼンだなんて、念頭から外した方がいいだろう」

松井が来季のJリーグで活躍すれば、両国間の新たなものさしとなる。ポゴニ・シチェチンの2人のプレイも同様だ。

ポーランドと日本を結ぶサムライたちの活躍に期待したい。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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