採用担当者トレーニング①面接の精度を上げるためには
今回から2回にわたり、採用担当者のトレーニングのポイントを、今回は「面接」について、次が「動機付け」について、どういうトレーニングをしたら良いかということのポイントをお話しいたします。
■トレーニングポイント①面接について
面接の訓練とは、別の言い方をすると面接の精度を高めることです。そう考えると、面接の精度というのはどのように下がっていくのか、その裏を考えればよいわけです。
面接の精度が下がる原因は大別すると3つあります。
1つ目は「インタビュー」。つまり評価に必要な情報がそもそも聞けていない、判断するために必要な情報が聞けていない、この段階で面接の精度が下がるというこです。
2つ目は、これが実は一番難しいところなのですが、集めた情報から「この人はこういう人だ」というアセスメント、つまり「見立て」のズレです。これが外れていても精度が下がってしまいます。
3つ目は「採用基準」つまり、評価する人が採用基準を正しく理解していない。こういう人は採るのか、採らないのか、どういう人を求めているのかという、会社におけるどんな人物像がハイパフォーマーなのかということがわかっていないということです。
この3つが面接の精度を下げるポイントです。そのため、トレーニングは、この3つを鍛えるということになります。
■面接の精度をあげる「インタビュー」について
まず、1つ目のインタビューについては、細かく言うとものすごくたくさんありますが、本稿では端的に一番重要なことを言わせていただきます。
それは、とにかく「ファクトベースであること」「事実を聞く」ということです。
色々な面接に同席させていただくと、多くの面接官というのは候補者が「思っていること」をたくさん聞いています。
例えば「あなたはこの事象についてどう思いますか?」ということです。私はこれを「何々ついてどう思うかね面接」などと表現したりしていますが、その他にも「この会社に入ってどんなことがやりたいですか」「5年後10年後どのようになっていきたいですか」「あなたの強み弱みは何ですか」というようなことも、「思っていること」を聞いていると言えます。
それに対して、あなたは「これまでどんなことをしてきたのか」「学生時代や前の職場でどんなプロジェクトをやってきたのか」などは事実を聞く質問です。事実≒過去のエピソードについてディテールを含めて聞いていくことがポイントになります。これが一つ目のインタビューに対するトレーニングのポイントです。
このトレーニングは、繰り返しインタビューをしていくしか身につけることはできません。一つのコツは、あっさりと聞くのではなく、具体的な事実がイメージできるまでしつこく質問するというのがポイントです。
というのも、日本人は、以心伝心とか、一を聞いて十を知る、空気を読むなど、要するに相手が言ってないことを察してこうではないかと考える能力が高いためです。それでは面接はダメなのです。面接は相手が言ってないことは、こちらが聞いていないということ、だから相手にきちんと言ってもらわないといけない訳です。
例えば、「わたしはカフェでバイトしていました」という時に、みなさんの頭に浮かぶのはいろいろなカフェでしょう。それが、スターバックスなのか、個人経営なのか、都会にあるのか学生街にあるのか、そういうことを相手は全然言っていないことが多い。だとすると、面接ではちゃんと裏を取るために事実を相手に聞かないといけません。しつこく2~3回は聞かないといけないかもしれません。
面接官 「アルバイトは何をしていましたか?」
学 生 「飲食店です」
面接官 「飲食店って何ですか?」
学 生 「カフェです。某外資系のコーヒーチェーン店です」
面接官 「某外資系のコーヒーチェーン店はどこですか?」
学 生 「スターバックスです」
面接官 「どんなスターバックスですか」
学 生 「東京駅にある1日1000人お客様が来るスターバックスです」
面接官 「それをどんな体制でやっていたのですか」
学 生 「学生アルバイト3名と社員の店長の4名です」 ・・・・続く
というような感じです。「飲食店」というキーワードはとても抽象度が高いので、これぐらいまで何度も聞かないと事実はわかりません。そして事実を聞かないと結局それらの難易度がわからないわけです。
ですから、「しつこく事実を聞く」ということがインタビューのポイントの基本になりますので、覚えておいてください。ただし、詰問調で聞いてしまっては印象が悪くなりますので、ご注意ください。
■面接の精度をあげる「アセスメント」について
2つ目のアセスメントは「人を表現する言葉を豊富にもつ」ということが、トレーニングのポイントです。基本的に人を表現する言葉を、私は「アセスメントワード」と言っています。
「ストレス耐性」「地頭がいい」「達成欲が高い」「好奇心がある」といった、多くの人を表現する言葉があり、多くの面接担当者の方が、それらを面接評定表などに記入していきます。
今言ったような言葉を私はビッグワードと言っています。これらは定義があいまいで多義的すぎる言葉だからです。
「コミュニケーション能力」という言葉を経団連の方が、「十数年間連続、企業が求める能力はコミュニケーション能力が1位です!」と発表していたりする訳ですが、それは当たり前のことだと思っています。
それはなぜかというと、コミュニケーション能力というのはとても多義的で、いろいろな人がいろいろなコミュニケーション能力の定義をしていて、そういう能力が必要だと言っているから1位なわけです。つまりコミュニケーション能力が何なのか、なんだかよく分からないという状態になります。これが面接の基準をアセスメントする時には、それではダメです。
人間は、語彙の細かさで見るものの解像度が変わってきます。例えば、青色という言葉しか知らなければ、群青色もライトブルーもスカイブルーも全部同じ青色になってしまうということです。これは人間を見るときも同じで、コミュニケーション能力と言ってしまうと、例えば論理的に筋道を立ててわかりやすく物事を話すというのもコミュニケーション能力だし、空気を読んで相手が言っていないことを察して理解するのもコミュニケーション能力です。けれども、これらのコミュニケーション能力の意味は全然違う訳です。
このようなことが、アセスメントの混乱を呼ぶ原因です。ですから、アセスメントのトレーニングは取りも直さず、人を表現する言葉アセスメントワードを正しく理解すること、会社の中ですり合わせる、例えば、うちの会社で表現するコミュニケーション能力とはどういう定義なのかということを社内で擦り合わせることです。
■面接の精度をあげる「ジャッジ基準」について
最後のジャッジ基準というのはどちらかというと、面接担当者の方々がトレーニングをするというよりも、人事担当者・面接担当者のトレーニングする側がきちんと定義して、それを担当者に正しく伝える、これに尽きます。
その定義をする時に、先ほどの「アセスメントワード」はもちろんきちんと定義することです。
また、あまりたくさんの基準があって多すぎると、あれもこれもと面接官というのも短い時間でジャッジができないので、「must条件はこれです」「want条件はこれです」というように分けておくということ、求める人物像を設計することが肝になってきます。
ですので、ここはトレーニングというよりは、人事部の方で面接官をトレーニングする側のトレーニングが重要になってくるのです。