離島や地方を四半世紀に渡って飛び続けたANAのボーイング737-500「スーパードルフィン」が引退
国内の離島路線や地方路線を中心に日本の空を1995年7月に就航した「スーパードルフィン」の愛称で親しまれたANA便のボーイング737-500型機が6月14日にラストフライトを迎えた。
1995年に就航以来、離島や地方路線を支えた
ボーイング737-500型機「スーパードルフィン」は、1995年7月に当時のエアーニッポン(現在はANAと統合)便として福岡~鹿児島線で就航した。エアーニッポンよりも「ANK」といった方が思い出す人も多いだろう。就航以降、約四半世紀にわたって延べ25機が日本の空を飛び、北海道の利尻から沖縄の石垣島まで日本全国、特に離島や地方路線を中心に投入され、就航からずっとイルカのロゴがエンジンに描かれているロングセラー機であり、イルカのロゴを見て昔のことを思い出す人も多いようだ。
現在はANAグループのANAウイングスが運航しており(ANA便名で運航)、退役が進むなかで、最後の1機(機体番号JA306K)が6月14日にラストフライトを迎えた。
筆者は昨年9月28日に福岡空港で開催された退役イベント「退役記念ファン感謝祭」を取材する機会があったが、その際には「初めて乗った飛行機がスーパードルフィンだった」や「地方から就職の時に利用した」などのエピソードが紹介されていたが、特に地方の人にとっては、人生の節目で利用した思い出深い飛行機であったことは間違いない。
車で例えるとコンパクトスポーツカーのようなエンジン音
整備士にとってもボーイング737-500型機のエンジンは、「車で例えるとボーイング777型機が高級サルーンであるならば、ボーイング737-500型機はコンパクトスポーツカーのようなエンジン音であり、エンジン音だけで機種がわかる」と話すなど、ロングセラー機ならでは思い出が詰まった飛行機だったそうだ。また、エンジンの形が地面との間隔を確保するために「おむすび型」になっていることでも知られている。
ラストフライトは福岡発羽田行き
昨年12月には退役記念のデカール(イルカの横に花束)も貼られ、ラストフライトへ向けてのカウントダウンが始まった。そんな矢先に新型コロナウイルスの影響で多くの便が運休となったことで最後に乗ることができなかったファンも多かったなかで、突如ラストフライトの1週間前に、6月14日の福岡発羽田行きのANA254便羽田行きが最終便になることが発表された。
その段階ですぐに126席の飛行機は満席となった。筆者はラストフライトを福岡空港で出発セレモニーを取材した。
出発前にはセレモニーを実施。500人を超えるパイロットが乗務
最終便出発前には福岡空港の搭乗ゲート前ではセレモニーが実施された。新型コロナウイルスの影響もあって簡単なセレモニーとなった。
ボーイング737-500型機運航乗務員室長の西堀浩生機長から挨拶があり、「25年間当たり前のように福岡空港を離陸・着陸してきたので明日からそのチャンスが全くなくなることは、心に穴がポッカリ空いたような寂しい気持ちです。25年の間に500人を超えるパイロットがこの飛行機に乗務してきたなかで同じ気持ちだと思います。この飛行機はパイロットの思い通りに動いてくれる素直で操縦しやすい飛行機であり、短い滑走路でも着陸できることから日本全国の多くの離島や地方、その他大都市を含めて、綺麗な景色を見ることができました。例えば利尻空港では利尻富士を見ながら着陸するなど、全国の綺麗な景色を堪能することができたのはこの飛行機の性能のお陰だと思います。皆様25年間、本当にありがあとうございました」とスーパードルフィンの思い出を話した。
写真の展示などで盛り上がる
福岡空港のゲート前では特別ムービーが流されたほか、ゲートから機内へ向かう通路ではボーイング737-500型機関連の写真が飾られ、ラストフライトに搭乗するファンが見入っている光景が見られた。
スタッフがお見送り。25年の歴史に幕を閉じる
そして、最後のお客様を乗せた定期便ラストとなるANA254便は定刻の13時15分に出発し、別れを惜しむかのような雨の中でスポットから離れ、羽田空港へ向けて福岡空港を離陸した。この日の福岡は雨予報だったが、出発の際には雨も止んだことから、ANAグループの社員が2メートルの距離を保ちながら横断幕を持ってお客様を乗せた最後のフライトを見送った。
羽田空港には15時03分に到着し、約25年、四半世紀にわたって運航したロングセラー機「スーパードルフィン」の人生が終わった。