米国株式市場の指標の違いからみた今回の株価の調整
株式市場、債券市場そして外為市場などには、その市場動向を見るためのベンチマーク(指標)が存在している。たとえば米国株式市場の代表的なベンチマーク(指標)というべき株価指数が3つ存在している。ダウ平均とS&P500種、そしてナスダック総合指数である。
最も目にするのはダウ平均株価であろう。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出している指標であり、ダウ工業株30種平均、ダウ輸送株20種平均、ダウ公共株15種平均の3種類と、これらをあわせたダウ総合65種平均がある。通常、ニューヨークダウと呼ばれているものはこのうちのダウ工業株30種平均である。
1884年以降に公表されている歴史ある指標であり、その銘柄は時代の産業構造を反映して入れ替えられている。わずか30銘柄で全体の動きを示せるのかという問題はあるかもしれないが、トレンドは捉えることができているとみられ、その歴史に加えて指標としての使い勝手の良さなどから、米国株式市場の代表的な指標となっている。
これに対してS&P500種もS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出している代表的な株価指数となる。代表的な500銘柄の株価を基に算出され、機関投資家の運用実績を測定するベンチマークとして利用されている。こちらは1957年から算出されているものであり、ダウ平均に比べると歴史は浅い。銘柄数が多い分、全体の動向を把握しやすいが、ダウ平均に比べると一般の知名度は低い分、ダウ平均の動向の方が注目されやすい。
もうひとつの代表的な指標が、ナスダック総合指数となる。ナスダックに上場している3000以上の銘柄の全てを対象に時価総額加重平均で算出した指数となる。ナスダックにはアップル、フェイスブック、アマゾン、ツイッター、マイクロソフトなどいわゆる大手ハイテク企業、つまりそれは現在の米国経済を牽引している企業が多く含まれている。ダウ平均にもナスダック上場銘柄が含まれているが、ナスダック総合指数の方がハイテク株による影響を受けやすい。ダウ平均とナスダックの動きの違いなども、米国株式市場を見る上での参考となる。
ということを前提に今回の米国株式市場の調整についてみてみると、ダウ平均に比べてナスダックの方がチャートからみると大きな上昇トレンドが崩れた格好となっている。これからみると主要ハイテク株を中心に上昇してきた米国株式市場が、そのハイテク株主体に崩れてきたことが窺える。
それが果たしてFRBの利上げによるものなのか。それよりも米国と中国の貿易摩擦による影響がアップルなどを中心にじわりじわりと影響しつつあると見た方が良いのではないかと思われる。