政府・日銀による24年ぶりドル売り円買い介入、用意周到な部分と想定外の出来事
22日に実施された為替介入について、再度、確認してみたい。
21日のFOMCで政策金利の0.75%引き上げを決め、3.00~3.25%とした。3%を超えるのは2008年1月以来、約14年半ぶりとなる。ドットチャートでは、政策金利見通しは中央値が4.4%となった。
これを受けて米10年債利回りは一時、3.64%と2011年2月以来水準を付けたが、株安などを受けて押し目買いが入り、米10年債利回りは3.53%にむしろ低下していた。
ただし、外為市場では日米の金融政策の方向性の違いを意識した円売りドル買いが入り、ドル円は144円台を付けていた。
22日の日銀の金融政策決定会合では、全員一致で現状維持を決定した。今回、初参加となった高田審議委員、田村審議委員も賛成に回った。
市場では債券市場の機能低下などを意識して、反対票を投じるのではとの期待も一部にあったが、期待は裏切られた。日銀としては緩和修正に一切の隙も与えないとの意向を示したともいえる。
財務省の神田真人財務官は22日午後、外国為替市場で円相場が一時145円台に下落したことを受けて「相場が乱高下している。過度な変動、無秩序な動きは容認できない」と記者団に述べた。為替介入の可能性を問われて「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と語った。
この「スタンバイの状態」という表現のなかには、財務官が指示すれば、すぐに日銀がドル売り円買いに動くとの意味合いがある。それとともに、これには米国財務省の確認も取れているということでもあったと思われる。
日銀の金融政策決定会合後の15時半から黒田総裁の記者会見が始まった。全員一致での現状維持であったことも考慮すると、黒田総裁の揺るぎない緩和姿勢に変化はないであろうことは想像ができた。
実際に黒田日銀総裁は記者会見にてフォワードガイダンスに関して、「当面、変更は必要と考えていない」とし、緩和修正するタイミングを問われ、「当面金利を引き上げるようなことはない」と答えた。
これだけでも十分なところに、さらに黒田総裁は興味深い発言をしていた。
当面とは3か月とかのスパンなのかという質問に対し、「当面というのは数か月の話ではなく2、3年と考えてもらっていい」と発言したのである。
個人的には2~3年というのは市場の噂などで何となく聞いていたことで、やはりそうだったのかと合点がいった。
むろん、それが正しいとは思えず、2、3年どころか現在の政策は2、3か月も持たないだろうとの認識ではあったのだが、黒田総裁の真意というか、現在の日銀執行部の考え方がこの発言ではっきりした面もあった。
さらに日本時間の16時半に、スイス国立銀行(中央銀行)が0.75%の大幅利上げを決定したことが伝わった。これにより、スイスもマイナス金利を脱却したことになる。頑なに緩和継続する日銀の存在が浮き立つ格好となった。
ドル円は日本時間午後4時37分に145円90銭をつけ、146円に迫った。スイスのマイナス金利解除とともに黒田総裁の「2、3年」も影響した可能性はあった。
これは実際には想定していた発言ではなかった可能性もある。いずれにしても黒田総裁の会見などで、ドル円がターゲットとされる146円に接近した際には介入を実施するとの暗黙の了解があったのではなかろうか。
そして17時あたりに、財務省は24年ぶりとなる円買いドル売りの為替介入を実施したのである。
前回、ドル売り円買い介入が実施されたのは1998年6月17日であったが、この際のドル円の水準が146円台となっていた。そして、黒田日銀総裁は当時、財務官に次ぐ国際金融局長であった。今回の介入には黒田総裁も一枚かんでいたであろうことは当然ありうる。