円安進行、ドル円は145円台半ば。日米の金融政策の方向性の違いが再認識される
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14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は145円57銭と2022年11月上旬以来およそ9か月ぶりの水準を付けた。
昨年9月には政府・日銀は145円台で円買いドル売り為替介入に踏み切っていたが、当時の状況を振り返ってみたい。
2022年9月22日の日銀の金融政策決定会合では、全員一致で現状維持を決定した。この会合が初参加となった高田審議委員、田村審議委員も賛成に回った。つまり、異次元緩和の修正を求めるような反対意見は出されなかった。
市場では債券市場の機能低下などを意識して、反対票を投じるのではとの期待も一部にあったが、期待は裏切られた格好に。日銀としては緩和修正に一切の隙も与えないとの意向を示したともいえた。
財務省の神田財務官は22日の午後、外国為替市場で円相場が一時145円台に下落したことを受けて「相場が乱高下している。過度な変動、無秩序な動きは容認できない」と記者団に述べた。為替介入の可能性を問われて「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と語った。
この「スタンバイの状態」という表現のなかには、財務官が指示すれば、すぐに日銀がドル売り円買いに動くとの意味合いがある。それとともに、これには米国財務省の確認も取れているということでもあったと思われた。
22日の金融政策決定会合後の会見で黒田日銀総裁(当時)は、緩和修正するタイミングを問われ、「当面金利を引き上げるようなことはない」と答えた。これだけでも十分なところに、さらに黒田総裁は興味深い発言をしていた。当面とは3か月とかより長いスパンなのかという質問に対し、「当面というのは数か月の話ではなく2、3年と考えてもらっていい」と発言したのである。
これはのちに発表された検証の期間(1年から1年半)などを考慮すると、当時の執行部は本当にそう考えており、その考え方は総裁はかわっているが、たぶん現在もそれほど代わりないとみられる。
ということで、今回またドル円が145円台を付けたわけだが、今のところ政府・日銀は沈黙を保っている。
為替介入については米国サイドの理解を得る必要があるとともに、結果としてドル売りとなれば貴重な外貨準備を取り崩さざるを得ない。しかも介入に絶対的な効果があるとも思えない。