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ウクライナ軍がロシア揚陸艦ノヴォチェルカスクを撃沈、停泊時を狙う巡航ミサイル攻撃で4隻目の大型艦撃破

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍より2023年12月26日の戦果:揚陸艦1撃沈、自爆無人機13撃墜

 12月26日未明、ウクライナ軍はクリミア半島フェオドシヤ港を巡航ミサイルで攻撃し、停泊していた揚陸艦ノヴォチェルカスクを撃沈しました。揚陸艦は輸送していた弾薬に引火して誘爆したのか大爆発を起こして吹き飛び、船体は海面下に沈み上部構造物が僅かに海面上に確認できるだけです。損傷はあまりにも激しく浮揚しても修理は非現実的で、廃艦は必至です。

ミサイル被弾後に炎上、誘爆の様子 ※大音響注意

※停泊位置の状況

  • 写真上:揚陸艦ノヴォチェルカスク(過去の健在な時代)
  • 写真下:揚陸艦ノヴォチェルカスク(被弾後の停泊位置)
  • 赤枠:艦橋、黄枠:マスト、青枠:煙突、緑枠:後部57mm連装機関砲

※マクサーの精細な衛星画像。船体が原形を留めていない。

※揚陸艦の前半分は吹き飛んでいる。

 攻撃はウクライナ軍のストームシャドウ(または同型のSCALP-EG)巡航ミサイルによるものと推定されます。フェオドシヤ港の周囲にはS-400防空システムも配備されていましたがロシア軍は対応できませんでした。ストームシャドウで停泊時の艦艇を狙い始めて4隻目の撃破となります。亜音速の巡航ミサイルであるストームシャドウがロシア軍の防空網を突破できる能力を持つことを示し続けています。

 これでロシア-ウクライナ戦争でロシア海軍黒海艦隊の大型艦(ここでは1000トン級以上)の撃沈または廃艦相当の大破は7隻目になります。全てミサイルによる戦果です。水上戦闘艦2隻、潜水艦1隻、揚陸艦3隻、補助艦1隻の喪失です。

  1. 2022年03月24日:揚陸艦「サラトフ」 トーチカU弾道ミサイル ※ベルジャンシク停泊時
  2. 2022年04月13日:巡洋艦「モスクワ」 ネプチューン対艦ミサイル ※オデーサ沖の洋上
  3. 2022年06月17日:外洋曳船「ヴァシリー・べフ」 ハープーン対艦ミサイル ※ズミイヌイ島沖の洋上
  4. 2023年09月13日:揚陸艦「ミンスク」 ストームシャドウ巡航ミサイル ※セヴァストポリ入渠時
  5. 2023年09月13日:潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌ」 ストームシャドウ巡航ミサイル ※セヴァストポリ入渠時
  6. 2023年11月04日:コルベット「アスコリド」 SCALP-EG巡航ミサイル ※ケルチ停泊時
  7. 2023年12月26日:揚陸艦「ノヴォチェルカスク」 ストームシャドウ巡航ミサイル ※フェオドシヤ停泊時

※上記は掃海艇や哨戒艇など小艦艇の喪失は除いたもの。
※なお2023年8月4日にノヴォロシク港で揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」がウクライナ軍の自爆水上ドローンの襲撃で損傷しましたが、浸水し大傾斜したものの港内の浮きドックに入渠が確認された後に約3週間で修理し出て来たので、小破程度の損傷で済んでいます。

 ロシア海軍黒海艦隊は開戦初期にオデーサ沖の洋上で旗艦である巡洋艦「モスクワ」をウクライナ軍の地対艦ミサイルで撃沈され、さらにズミイヌイ島の攻防戦で外洋曳船「ヴァシリー・べフ」を地対艦ミサイルで撃沈されるに至って、不用意にウクライナ沿岸に近付けなくなりました。黒海艦隊は開戦3ヵ月ほどで積極的な行動ができなくなり、課せられた戦闘任務は遠くから巡航ミサイルで長距離対地攻撃を行うくらいになります。

 そのため大型艦の喪失は1年以上出ていなかったのですが、ウクライナ軍が2023年9月からストームシャドウ巡航ミサイルでクリミア半島の港に居るロシア艦艇を狙い出してから被害が急増し、僅か3カ月間で4隻の大型艦を撃破され失っています。

 なおロシア海軍黒海艦隊の揚陸艦は開戦直前に北方艦隊とバルト海艦隊から6隻の揚陸艦が増援として回航されており、元から所属していた7隻の揚陸艦と合わせて合計13隻となっていましたが、揚陸艦は3隻が撃破され10隻が残存しています。

 また逆に開戦前に黒海から遠征して他の海域に居たフリゲートなどがトルコの海峡封鎖で戻れなくなった例もあります。つまりロシア海軍はウクライナ侵攻にあたって揚陸艦の不足を感じて増援を送っていましたが、水上戦闘艦の増援は送らなかったばかりか他海域に居た艦を呼び戻すこともせず、必要性が低いと軽視していました。しかしそれは開戦後の巡洋艦モスクワの喪失で誤りだったことが直ぐに判明してしまいます。もしも開戦前に強力な防空艦を何隻か増援で送り込んでいたなら、巡洋艦モスクワの喪失やズミイヌイ島の放棄は無かったかもしれません。

ロシア海軍黒海艦隊の揚陸艦

【元からの所属7隻】

1171型揚陸艦(タピール級)

  • ニコライ・フィルチェンコフ
  • オルスク
  • サラトフ ×喪失

775型揚陸艦(ロプーチャ級)

  • アゾフ
  • ヤマル
  • ツェーザリ・クニコフ
  • ノヴォチェルカスク ×喪失

【開戦直前の増援6隻】

775型揚陸艦(ロプーチャ級)

  • オレネゴルスキー・ゴルニャク(北方艦隊)
  • ゲオールギイ・ポベドノーセツ(北方艦隊)
  • カリーニングラード(バルト海艦隊)
  • コロリョフ(バルト海艦隊)
  • ミンスク(バルト海艦隊) ×喪失

11711型揚陸艦(イワン・グレン級)

  • ピョートル・モルグノフ(北方艦隊)
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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