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出版物の売り場毎の販売額推移をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 昔も今も書店は出版物との出会いの場所に違いは無いが(写真:アフロ)

インターネット以外は減少継続中な直近の流れ

昔は本屋でしか手に入らなかった出版物も、今ではコンビニやネット通販など多様なルートで購入ができる。購入ルート別の販売動向を日販の『出版物販売額の実態』最新版(2017年版)を基に確認する。

昨今では電子書籍の流通も進んでいるが、電子書籍でも少なからずは取次を経由しており、一般書籍とさほど変化は見られない。直近年度分となる2016年度では電子出版物の市場は2164億円で、これはインターネット経由の出版物の通販(インターネット専業店を経由して販売された出版物推定販売額。アマゾン経由なども含む)を超え、コンビニ経由すら超える額となっている。しかしながら今記事はあくまでも「出版物」を対象としているため、数字には反映していない。

なお「その他取引経由」とは生協ルート、駅販売ルート、スタンドルートの合算。昨今では駅売店の一部が大手コンビニチェーン店によってコンビニ化されているが、これはコンビニの値として計上されている。

また「出版社直販」という項目があるが、これは出版社が取次を通さずに直接販売店や読者に出版物を販売するルートを指す。具体的な例としては個人読者以外に学校や研究施設、教育機関、企業などが相当する。グラフ記載の際には、通常の販売ルートとは多少色合いが異なるため、項目順としては最後に並べている。

さてそれでは早速、主要販売ルート別の推定出版物販売額を直近5年間の動きで見ていく。元データはもっと細かい部分まで出ているが、億円以下は四捨五入で掲載。書店ルートがトップなのは当然だが、コンビニが現時点では第2位のポジションについているのが分かる。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2012~2016年度年)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2012~2016年度年)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2012~2016年度)(比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2012~2016年度)(比率)

電車通勤をしている人にはお馴染みの駅売店を含む「その他取次経由」は、金額ベースでは789億円。インターネットルート(アマゾンジャパンや楽天ブックスなども、把握できる範囲で含む)は1831億円、全体比は10.6%。インターネット経由の出版物販売は、成長率こそ著しいものの、現状では出版物販売全体のシェアを食い荒らすほどのものではないことが分かる。立ち位置としては広告業界における既存媒体広告(いわゆる「従来型広告媒体」「4マス」)と、インターネット広告のような関係と表現できよう。また、この5年間に限れば、インターネット以外の主要ルートすべてで販売額が漸減している実情がうかがえる。このままの販売状況が継続すると、早ければ来年度にもコンビニとインターネットとの順位が入れ替わることになりそうだ。

長期動向の確認

より長い期間での推移を見るため、今資料にデータとして収録されている過去の分を元に、積み上げグラフと比率グラフにしたものを生成する。長期データは1973年度以降の値が取得可能だが、過去3回に渡り算出方法の変更が行われているため、変更開始年度には「*」をつけている。その前後の値に完全な連続性は無い。

また今件では電子書籍は含まれていない。さらに2006年度まではインターネット経由の数字は「その他」項目に区分されていたが、2007年度以降は別個の項目として新設されている。「出版社直販」は2006年度分から新たに計上されている(そのため販売総額が大きく底上げされている)。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)(1973~2016年度)(*はその年度から算出方法切替)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)(1973~2016年度)(*はその年度から算出方法切替)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)(1973~2016年度)(*はその年度から算出方法切替)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)(1973~2016年度)(*はその年度から算出方法切替)

算出方法の変更が行われた年度の前後で大きな変化が生じているが、それを除けば1996年度をピーク(「出版社直販」を加えれば2006年度がピーク)とし、それ以降はほぼ右肩下がりの販売額状況にあることがあらためて確認できる。特に算出方法を最後に変更した2006年度以降は一度も盛り返しを見せることなく、額は落ち込む一方。

戦後直後の出版ブーム期を除けば、雑誌点数は2005年前後、新刊の書籍点数は2013年をピークにようやく減少を見せ始めたが、それまでは増加の一途にあった。しかしながら販売総額はすでに前世紀末にピークを迎えていたことになる。

また返本率は書籍などで3割、雑誌に至っては4割に達している。このことから、読者側の趣味趣向の多様化により、雑誌や書籍の販売点数は増えても1種類あたりの発行部数が減っていると見るのが推論としては正しいようだ。良く言えば趣味趣向の多様化に対応した戦略、うがった見方をすれば「数撃ちゃ当たる」「ノリと勢いで新刊を出し、ロングセラー的な売り方にはあまり注力しない」的な表現が当てはまる。さらにヒットする・しないで作品の販売動向が二極化する傾向も見受けられる。

他方、書店数は減少する一途をたどっているが、それにも関わらず、書店の販売比率(全出版物販売額比)は大きな減り方を示していない。

↑ 総書店数・総売り場面積推移(経済産業省・商業統計調査より)
↑ 総書店数・総売り場面積推移(経済産業省・商業統計調査より)

ここ10年では数%ポイント、前世紀からの動きでも(算出方法が代わっているが)20%ポイント足らずの減少でしかない。これは販売「額」を見ればお分かりの通りで、書店の販売「額」そのものは減少しているものの、それ以上に他の区分、とりわけコンビニや駅売店を含めた「その他取次経由」の販売額が減少しているのが要因。

一言で表現すれば「書店以上に他の小売で出版物の売れ行きが減り、相対的に書店での販売額比率は大きな減少をしてはいない」ことになる。書店の相次ぐ閉店、そして連動する形で販売機会の減少が声高に叫ばれているが、「リアルな購入機会の減少」事案は、それ以外の場所でもっと深刻化している。さらに似たような現象、額面は減退中であるものの、全体比率はほぼ横ばいの動きは出版社直販でも生じており、興味深い傾向には違いない。

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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください

(C)日販 営業推進室 書店サポートチーム「出版物販売額の実態 2017」

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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