目上の人ではあるけれど、場所や状況で変わる「先生との会話で敬語は必要か」の認識
学校内では就学している先生と生徒との間には、年齢の差だけではなく勉学を教示する側・される側の立ち位置なども合わせ、一般的には目上・目下の関係がある。目上の人には敬語を用いて話しかけるのが普通だが、状況によってはその必要が無い場合も考えられる。就学している側を生徒(中高生)と仮定した状況下では、敬語の必要性を人々はどのように考えているのか。文化庁が2016年9月に発表した調査結果の概要「平成27年度「国語に関する世論調査」の結果について」(2016年2月から3月にかけて全国16歳以上の男女を対象に個別面接調査方式で実施。調査対象総数は3589人・有効回答数は1959人。属性別の回答者数、ウェイトバックの是非は非公開)の内容をもとに、確認していくことにする。
次以降に示すのは、中学生や高校生が担任の先生に対し、どのような場面でなら敬語を使うべきか、使う必要は無いか、話題などによりけりだと思うかを答えてもらったもの。回答者の年齢が16歳以上であるため、自分の実情に当てはまる人もいるかもしれないが、質問は「べきか」であり、回答者が認識している一般論で答えてもらっていることになる。
まずは学校内で何らかの教示を受けている状況。
場合によりけりだとの意見は2割近く、敬語の必要は無いとの意見は1割強。多数は状況に関わらず敬語を使うべきだとしている。
経年変化を見ると多少のぶれはあるものの、敬語を使わないとの回答が減少し、敬語を使うべきとの意見が増加している。就学などの場面で生徒が先生に対する時には、一様に敬語を使うべきとの意見がさらに多数を占めつつある。
続いて休み時間の場面で。場所を職員室、学校の廊下と異なる設定をした上での質問となる。
職員室での場合には周囲、やり取りが聴こえる範囲に他の先生がいることが多々あること、職員室そのものが先生の専用の場であることなども合わせ、敬語を使うべきだとの意見が多数派、7割を占めている。他方廊下でのやり取りの場合は、場所の問題に加え、交わされている内容が多分にフランクなものである可能性もあることから、「話題による」の回答率が多めとなっている。
他方、場所が職員室であろうと廊下であろうと、教示を受けている時同様に、時代の流れに連れて敬語を使うべきとの意見は増加を示している。
最後は学校外。高校ならともかく、中学では結構ありがちな状況だ。
学校内の廊下でのやり取り同様、「話題による」の回答率が比較的高めで、敬語を使うべしとの意見は6割強。ただしこちらも現在に近づくにつれ、敬語使用を求める意見が多くなっているのが確認できる。
回答者の年齢階層別の動向が知りたいところだが、残念ながら今回の報告書では未公開で、その内情は分からない。ともあれ、回答者の限りでは、状況によって求める強さに多少のぶれがあるものの、敬語が求められると考えている人が多数派であることに違いは無い。そしてどのような場面でも、先生とのやり取りでは敬語を使うべきとの意見が増えているのは確かではある。
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