「豊かな伝統と文化」がトップ…アメリカ合衆国が抱く日本のイメージをさぐる(2022年公開版)
インターネットで情報が容易に手に入るようになったとはいえ、他国の実情を正確に把握するのは難しい。アメリカ合衆国の人達は日本にどのようなイメージを抱いているのだろうか。その実情を外務省が2022年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
日本に対するイメージとして、アメリカ合衆国の一般人はどのような姿を頭に描いているのだろうか。主要選択肢を用意し、それに同意できるか否かで答えてもらった結果が次のグラフ。「豊かな伝統と文化を持つ」が5割近くでトップ、「経済力・技術力が高い」「自然が美しい」が続く。
次いで「生活水準が高い」「アニメ・ファッション・料理など新しい文化を発信」が続く。「理解が難しい」「保守的で閉鎖的」「警戒を要する」「軍事的」などのネガティブな回答はさほど多くない。
これら値の経年推移を見ると、「理解が難しい」「警戒を要する」が漸減し、「自然が美しい」がこの数年増加傾向を見せているのが確認できる。
なお2017年度以降の分は一般人向けの設問の様式で大きな変更があったようで、複数の設問の結果において値が大きく減少する傾向が確認できる。対日だけでなく他の諸外国に対する設問でも同様の動きを示していることから、単純に対日感情の沈滞が生じたのではなく、設問が変わったことによる動きの可能性が高い。よって経年推移の検証では2017年度以降の分はグラフに反映をするものの、精査では2016年度までとは別のものとして精査する。
「経済力・技術力が高い」「国際社会でリーダーシップを発揮する」といったポジティブな要素で小さからぬ値の下落が起きているのも確認できる。絶対的な実情の低下か、相対的地位の下落かまでは確認できないが、アメリカ合衆国側の印象としてだけでなく、自国としての見解でも、あながち否定できないのも事実ではある。
2017年度以降に限ると、上位陣の「豊かな伝統と文化を持つ」「経済力・技術力が高い」「自然が美しい」「アニメ・ファッション・料理など新しい文化を発信」の項目で減少傾向が確認できる。日本への魅力が薄れつつあるのだろうか。
日本の対外アピールを考慮・考察する際には、日本人からの視点ではなく、今件のような海外からの視点を検証材料とする必要がある。さもなくば、的外れなプロモーションをするリスクが生じることになろう。特にエンターテインメント分野では日本国内における評価とアメリカ合衆国での実情に差が生じている感が強いので、注意すべきではある。
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※米国における対日世論調査
直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2021年12月~2022年2月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(連邦政府、大企業、マスメディア、労働組合、宗教団体、アカデミアなどで指導的立場にある人物)。一般人にはインターネット経由で、有識者には電話によるインタビュー形式で実施されている。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。