「大曲の花火」開催目前!競技花火大会をもっと楽しむために知っておきたいポイントは?
8月最後の土曜日、2024年8月31日に、いよいよ「全国花火競技大会」(大曲の花火)が開催されます。こちらは、2024年で第96回大会となる歴史ある花火大会で、花火競技大会最高峰の賞である内閣総理大臣賞が授与されます。
内閣総理大臣賞が授与される花火大会は、この大曲の「全国花火競技大会」と、茨城県土浦市で開催される「土浦全国花火競技大会」の2つのみ。つまり、現在の最高レベルの技術とアイデアを競う花火を見ることができるのです。
【全国花火競技大会(大曲の花火)】
開催日時:2024年8月31日(土)昼花火17:10~/夜花火18:50~
開催会場:秋田県大仙市大曲 雄物川河畔「大曲の花火」公園
「大曲の花火」公式サイト
台風10号の影響が懸念されていましたが、大会運営は8月28日時点で開催決定と告知しています。
「花火競技大会」って、どうやって競うの?
それぞれの煙火店が規定の花火玉を打ち上げ、その技術や発想などを競います。規定は競技大会により異なりますが、「全国花火競技大会」では、「昼花火」「10号玉・芯入割物」「10号玉・自由玉」「創造花火」の4種目で競います。
「昼花火の部」は文字通り明るい日中に打ち上げます。色付きの煙や発光などで表現を競います。
「夜花火の部」は、各煙火店が「10号玉・芯入割物」「10号玉・自由玉」「創造花火」の順に3種目を打ち上げます。
「花火競技大会」では、順番に淡々と花火を打ち上げるので、見慣れていないと違いや良し悪しがあまりわからないし、最初はその面白さが感じられないこともあります(もちろん、最初から魅了される人もいますが)。
花火の優劣をどう判断するのか?については、「盆の良さが…」「消え口が…」などの基準があるのですが、それを見極めるよりも、競技花火大会の面白さを味わってもらえたらと思うので、ここでは記載していません。
では、どうその面白さを味わうのか? まず、打ち上げる煙火店に注目してみるのはどうでしょう?
「推し煙火店」をもて!
スポーツでもそうですが、応援したい選手やチームがあると、その競技に嵌りますよね。とはいえ、ある程度花火の知識がなければ、どんな煙火店があるのかもわからないと思います。もし煙火店についてあまりご存じなければ、以下のようなポイントに着目してみてください。
地元の煙火店を探せ!
「大曲の花火」の公式サイトには、すでにプログラムがアップされています。公式サイトを見ると、出場する28の煙火店も記載されています。所在する都道府県も書かれているので、地元の煙火店を探してみましょう。やっぱり地元の煙火店だと親近感が湧きますよね。
第96回「全国花火競技大会」公式プログラム
好きな地域の煙火店を探せ!
とはいえ、出場する煙火店の地域は割と偏っています。地区予選があるわけではないですし、そもそも花火の盛んな地域とそうでない地域があったりもします。
地元の煙火店は出ていない、ということなら、昔住んでいたとか、旅行で行って楽しかった、というような「ご縁のあった」地域の煙火店の注目してみましょう。
好きな花火大会を担当していた煙火店を探せ!
それもいまいちピンとこない…という方は、これまで見た花火大会で好きだった花火大会や印象に残っているプログラムはありませんか? その花火大会やプログラムを担当した煙火店が出場している可能性もあります。
たとえば、「長岡花火」に感動したとしたら…
「フェニックスすごい感動した!」という方は。
長岡花火を支える新潟の煙火店のうち、新潟煙火工業と阿部煙火工業に注目してみてください。
「大河ドラマの『天地人』の花火、めっちゃかっこよかった!」という方は。
「天地人花火」担当の茨城の野村花火工業に注目すると良いと思います。ちなみに野村花火工業は昨年2023年の優勝者なので、今年は特別プログラムを担当されます。
たとえば、「なにわ淀川花火大会」が良かった!としたら…
「YOASOBIの『アイドル』、めっちゃ最高やったわ~!!」という方は。
長野の信州煙火工業が打ち上げていたので、ぜひ注目を。
「フィナーレ凄すぎて泣いたわ~!」という方は。
担当した長野の伊那火工 堀内煙火店の作品はお見逃しなく!
そんな感じで、好きだった花火大会やプログラムから「推し」を見つけるのも1つの手です。
ん? 好きな花火大会はあるけど煙火店がわからない?もしくは出場していない?
では、ちょっとミーハー路線から攻めてみましょうか。
「推し」に協力した煙火店を推せ!
今年、花火師がメインの役どころで登場するドラマが2つあったのを覚えているでしょうか?
『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』
2024年4月~6月にかけてテレビ朝日系で放送されたドラマで、高橋一生さんが主人公;望月星太郎を演じていました(シーズン1は2023年1月~3月の放送)。
花火師が主人公、煙火店が舞台ということで、打上げや花火玉作製の場面なども描かれていましたね。
こちらの花火監修を担当していたのが、東京の丸玉屋小勝煙火店。150年以上の歴史を誇る煙火店で、現在も東京の隅田川花火大会の打ち上げを担当しています。
ドラマの中で、望月煙火店の「紅(べに)」が取り上げられていましたが、丸玉屋小勝煙火店は実際に2023年の各地の花火競技大会で印象的な紅色を多用した「妖艶」というテーマの作品を出品していました。ちなみに今年の作品も「妖艶」シリーズのようなので、紅に期待です!
『君が心をくれたから』
フジテレビ系列で1月~3月に放送されたのがこのドラマ。主人公・永野芽郁さんが演じる逢原雨が思いを寄せた、山田裕貴さん演じる朝野太陽は煙火店の息子でした。太陽は、ストーリーが進行する中で、花火師になる決意を固めていきましたね。
このドラマに、花火師所作指導として協力していたのが、群馬の菊屋小幡花火店の社長・小幡知明さん。菊屋小幡花火店は明治5年創業の老舗で、2023年の土浦全国花火競技大会では総理大臣賞を受賞。大曲の全国花火競技大会でも2018年に内閣総理大臣賞を受賞しており、今、ノリに乗っている煙火店です。
同じく花火師所作指導に名を連ねていたのは、愛知の磯谷煙火店社長・磯谷尚孝さん。江戸時代の「日本三大花火」の1つ、三河の地に拠点を置く煙火店で、こちらも全国花火競技大会で2回の内閣総理大臣賞を受賞しています。
所作指導ということで、山田裕貴さんや遠藤憲一さんに演技指導するような場面もあったのかも?と想像すると、ファンの人にとってはちょっと特別な存在では?
キリンビール「晴れ風」CM
キリンビールが2024年に新たにリリースしたビール「晴れ風」では、「花火応援プロジェクト」を展開しており、この夏のCMでは花火師さんも登場しました。
今田美桜さんが振り向いた先に立っていた方々は、茨城の野村花火工業の法被を着ていましたね。真ん中に立っておられたのは、現社長の野村陽一さん。2024年7月時点で、内閣総理大臣賞受賞を大曲で9回、土浦で12回受賞しており、これはぶっちぎりの成績。いつ、どこで上がっても完成度の高い五重芯花火や、繊細なスターマインの表現で多くの人を魅了しています。
目黒蓮さんが語り合い、「晴れ風」で乾杯を交わしているのは、山梨のマルゴーの社長、齊木智さん。まるで電飾を仕込んでいるかのように複雑に光が変化する時差式花火や、鮮烈といえるほどのカラフルさで知られる煙火店です。2007年に土浦で、2022年に大曲で内閣総理大臣賞を受賞するなど高く評価されています。
いがかでしょう?あなたの好きな俳優さんと関わったことのある煙火店なら、応援してみたくなりませんか?
注目作品を発見せよ!
では、今度は作品からアプローチしてみましょう。作品タイトルからどんな花火か予想してみて、そのうえで実物を見ると答え合わせのようで面白いですよ。もう一度プログラムのリンクを貼っておきますね。
第96回「全国花火競技大会」公式プログラム
10号玉・芯入割物の部を見ると…
「芯入割物」とは、丸い花火の内側にさらに小さな円の入った、すなわち同心円状の花火のこと。三重芯(みえしん)とは、芯が三重に入り、全体で4つの層に見える花火、四重芯(よえしん)は芯が四重に入り、全体で5つの層…という感じで、「●重芯」の●+1の数の層になっている同心円状の花火です。
「全国花火競技大会」では「三重芯以上」という規定があるので、プログラムには「三重芯変化菊」「四重芯変化菊」などの名称が並んでいます。
単純に考えて、層が多い方が作るのが難しそうですよね? 確かに、三重芯より四重芯、四重芯より五重芯の方がより難度が高いと言えますが、花火は結局、打ち上げてなんぼ。完成度の高い三重芯や四重芯が、五重芯より評価されることもあるのです。
とはいえ、今回、五重芯を出品する煙火店5社は、いずれも毎回完成度の高い作品を仕上げてくる煙火店。個人的には、「10号玉・芯入割物」の部はこの5社のうちのいずれが優勝するのでは…と予想しています。
五重芯を打ち上げる煙火店は、打上順に、11番:野村花火工業(茨城)、19番:小松煙火工業(秋田)、23番:山﨑煙火製造所(茨城)、24番:響屋大曲煙火(秋田)、25番:菊屋小幡花火店(群馬)。
23番~25番と連続する五重芯、野村花火工業と山﨑煙火製造所の茨城対決もアツい!
また、多くが玉名の終わりが「変化菊」であるなか、2番:芳賀火工(宮城)の「三重芯変化スパンコール」、5番:筑北火工 堀米煙火店(茨城)の「三重芯錦先紅光露」などが、「変化菊」とどう違うのかなども意識して見ると面白いですよ。
さらに玉名の先頭には「昇曲付」などと書かれていますよね。花火玉が昇っていくときに、すーっ尾を引いたり、小さな花火がはじけたりするでしょう? これはその部分を表しています。出品作の多くが「昇曲付」「昇曲導付」であるなか、8番:髙田花火工業(福岡)は「昇り紅フラッシュ電光付」、12番:太陽堂 田村煙火店(長野)は「昇り雄花」となっています。これも「昇曲導」などとどう違うのか、注目してみてください。
ちなみに、打ち上げ前には玉名の読み上げがあるので、パンフレットが頭に入っていなくても、なんとなく上記のことが頭の片隅に残っていれば大丈夫です。
10号玉・自由玉の部を見てみると…
「10号玉・自由玉」は、芯入割物の部の花火とは重複しないものという規定なので、その名の通り各社ともかなり自由に独創的な作品を打ち上げます。
ユニークなタイトルをつけていることも多く、どんな花火が上がるのか、想像がつかないことも多いです。
たとえば、17番:三遠煙火(静岡)の「みんなでスズメバチをやっつけろ!ミツバチの必殺技『熱殺蜂球!!』」。いやすでに必殺技の読み方がわかりません。これ、たった一発の玉で表現するんですよ?ちょっと想像がつかないです。三遠煙火は「いないいないばあ」という、ぱっと開いた花火から最後にスマイルが浮き出てくるという十八番があるのですが、ユニークな発想の作品が多いので、どう表現してくるのかとても楽しみです。
文字数多めの三遠煙火に対し、たった一文字「雫」と題した自由玉を打ち上げるのが、23番:山﨑煙火製造所(茨城)。シンプルすぎてむしろいかようにも表現できそうだからこそ、「これか!」という表現に期待したくなります。
似たようなタイトルの作品を見比べてみるのも楽しいです。
たとえば、14番:齊木煙火本店(山梨)は「Rainbow Fall」、15番:磯谷煙火店(愛知)は「虹色に輝く」と、どちらも虹をタイトルにしています。似ているのか?それとも全く違うのか? 順番が並んでいるので、忘れる前に頭の中で比べることができそうです。
創造花火の部を見ると…
「創造花火」は、既定の大きさと数量の花火で、題名のイメージを表現します。音楽も入りショー的要素もあるので、見ていて楽しい種目だと思います。
こちらでは、10号玉・自由玉と同じタイトル、または同じイメージを想起させる作品がよく見られます。
自由玉と創造花火のタイトルが同じなのは、9番:信州煙火工業(長野)「信州の星空」、12番:太陽堂 田村煙火店(長野)「山紫陽花―幽邃に咲く花-」、28番:篠原煙火店(長野)「ホワイトモーション」です。奇しくもすべて長野勢ですね。創造花火は自由玉の延長的な作品なのか? 切り口をまったく変えてくるのか?同じタイトルだからこその面白さがあります。
ほかに、2番:芳賀火工(宮城)は自由玉が「楽譜から飛びだす音符たち♪」、創造花火が「一緒に歌おう♪ドレミのうた」でいずれも音符がテーマになりそう。27番:北日本花火興業(秋田)は自由玉が「巫女舞神楽」で創造花火が「神隠し~八百万の神々が集う地へ~」と、いずれも神がテーマのようです。
ポイントは、創造花火は花火玉の大きさが最大5号玉で(規定が以前と変わっていなければ)、10号玉の自由玉と全く同じ玉は使えないということ。大玉1発の自由玉と、それより小さい複数の花火玉を使う創造花火で、同じ(または類似の)テーマをどう表現するのか、注目です。
また創造花火にも、どんな作品になるのか想像がつかないタイトルがあります。7番:新潟煙火工業(新潟)の「ママありがとう、私を産んでくれて。」は、絵本や歌のタイトルなら中身を想像できますが、花火となるとどう表現するのか、想像がつきません。
15番:磯谷煙火店(愛知)の「驚異の成功率!無双する天才3Pシューター」も、タイトルだけみると某人気アニメのアノ人を想像するのですが、愛知出身の3Pシューターである有力なバスケット選手が実在するとか…?
作品を想像し始めると妄想が尽きないのですが、このくらいにしておきましょう。ぜひ事前に、ざっとでもプログラムに目を通して、どんな花火なのかな?と想像してみてください。
きっと、実際に見た時の感動や面白さが段違いになりますよ!
ちなみに私は、諸事情により今年は現地での観覧ができません。なので、テレビ放送を録画して、じっくり鑑賞しようと考えています。
興味はあるけど現地までは行けない、という方も、涼しいおうちでテレビでゆっくりご覧になってみてください!
【テレビ放送予定】
NHK BS・BSP4K・BS8K
「生中継!秋田大曲 全国花火競技大会2024」
放送時間:2024年8月31日(土)18:50~21:59