「若年層3人強と団塊世代1人は同じ重き」昨年末衆議院選挙の世代別投票率分析
人口も投票率も団塊世代は若年層より大きく勝る
社会や政治に対する年齢階層による意見力の違いは、多数の調査結果で示唆されている。各年齢区分の人口そのものの違いに加え、投票率・有効回答率の差が結果として大きな差異を導いてしまう。今回は2015年2月20日付で総務省から発表された値をもとに、直近となる昨年末2014年12月14日に実施の衆議院議員選挙、つまり第47回衆議院総選挙における投票者ピラミッドなどを作成し、世代間の意見力、政治への影響力を確認していく。
次に示すのは、選挙の際に抽出された188投票区(47都道府県×4投票区)における男女別及び年齢区分別の投票動向を調査した結果を基に、各年齢区分の投票率、そして各値を基に概算した総有権者数、投票数をグラフにしたもの。
少子化の進行で若年層の人口は他の年齢階層と比べると少なめとなる。さらに投票コストは若年層の方が高い。投票に参加するための時間や手間が惜しく、直接すぐに自分自身へ成果が返ってくるようには見えない現状から、選挙への優先順位が下がり、投票率は低くなる。当然、選挙権を持つのに投票しない人(男女とも薄い部分)が増え、若年層における有効投票者数は減少してしまう。
世間一般には「若年層と団塊世代層で政治に対する意見力は2倍から3倍の差がある」と言われている。今回の結果で見る限り、人口数=有権者数では無く投票者数で「20代前半」と、最も投票者数の多い年齢区分となった「男女とも60代後半」(団塊世代層が該当)との差を試算すると、男性では3.80倍、女性では3.68倍の差が出ており、その言葉がむしろ過小評価であることが分かる。投票を受ける政治家の視点では、特定世代に向けた政策を立案する場合、若年層3人強と団塊世代1人は同じ重きとの計算になる。
例えば男性20代前半から支持を集めそうな施策をした場合、投票に結びつきそうな想定投票リターンを1.00とすると、同じ政治リソースを男性60代後半に向けて投入すれば、想定投票リターンは3.80が期待できる。投票されるか否かの観点では、投票しない有権者は精査に値しないので、グラフ上における薄い色に該当する人は考慮対象外となる。これでは政治家諸氏がシニア層の方ばかり向き、若年層を軽視しても仕方がない。
前回の衆議院総選挙と比較すると
前回の衆議院選挙、つまり2012年12月に実施された第46回衆議院総選挙の結果から、世代別の投票率の差異を算出すると、若年層から中堅層の選挙離れが進んでいるのが分かる。
2014年12月の衆議院総選挙は解散の公知から投票までの期間が短かかったため、各党の政策アピールが十分でなく、違いが見い出しにくかったこと、解散の事由が明確でないとの解釈もあったこと、さらに投票当日は北日本で寒波や大雪などが生じており気象条件の上で投票の足が引っ張られたことを受け、投票機運は低下。結果として投票率は全世代で下げる形となった。
減少幅が大きいのは若年層~中堅層。特に30代から40代前半の減少ぶりが著しい。団塊世代に向けて減少幅は次第に縮小し、元々投票率の高かったシニア層と若年層との差がますます開く結果となっている。
政治家の立場からは「若年層3人強と団塊世代1人は同じ重き」との認識がされてしまう。これが「ゆがんだ状態」なのは間違いない。いわゆる「1票の格差」問題と同様に重大な事案である。そしてその現実を知りながら、「あきらめてしまう若年層」「自分の既得権益を手放すのが惜しく、不公平を是正する動きを見せない高齢層、特に団塊世代」の双方の意識が、問題解消の妨げとなっている。
投票は権利ではあるが罰則付きの義務ではないからと消極的になるのではなく、さまざまな工夫を凝らし「グラフ上側の、薄い色の部分を濃い色で塗りつぶしていくか」、つまり「若年層の投票率を上げていくか」を考えねばならない。投票しない、意見を発しない限りは存在しないのと同じ扱い。男性ならば20代前半と60代後半との間に開いている3.80倍という投票者数の差異も、仮に有権者全員が投票すれば大よそ1.51倍にまで差を縮める事が可能となる。
若年層では相対的な「投票コスト」の高さが投票のハードルとなっている。そのハードルを押し下げるには他国の状況も検証し、良い施策は積極的に導入検討課題とすることが求められる。また、見方を変え、ハードルが高くとも喜んでそれを飛び越え投票に足を運ぶように、政治を執り行う側も若年層に向けたアピールが求められよう。
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