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国民の不信高まるマイナンバーカード。iPhone対応への期待と不安

石川温ケータイ/スマホジャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

マイナンバーカードへの国民の信頼が揺らぎつつある。

コンビニでマイナンバーカードを使って住民票の写しや戸籍証明書などを交付する際、別人の証明書が発行されるという不具合が今年3月以降、横浜市や川崎市などで発生している。

 また、マイナンバーカードと一体化した保険証明証を医療機関で利用した際、本人では無く、別人の情報が紐付けされていたケースもあったという。

 さらに、同じくマイナンバーカードに紐付けて登録する「公的受取口座」に関しても、別のマイナンバーが登録されていたトラブルが確認された。

 住民票の写しや戸籍証明書の交付に関してはシステムの設計ミスであり、保険証明書や公的受取口座の紐付けは、人為的なミスのようだ。

 とはいえ、システムを発注した側はきちんとシステムが稼働しているか、しっかりとしたチェックをすべきだろうし、紐付けの人為的なミスに関しては、人のミスをきちんと自動的に発見できるシステムを組み込んでおけばよかったのではないか。

 マイナンバーカードに対して、国民の不信感は根強いものがある。こうした不信感を払拭し、「マイナンバーカードは便利だ」と思わせるよう、政府やデジタル庁はしっかりと国民を守る責任を感じて欲しい。

 実際、マイナンバーカード自体の技術はいまのところ強固であり、使い勝手もとても便利だ。住民票の写しや戸籍証明書の交付に関するトラブルも証明書交付サービスのシステムに不具合があったということで、マイナンバーカード自体の設計が悪いわけではない。

 

 筆者は今年3月、法人を設立した。法人を設立するとなると、公証役場や法務局、年金事務局、税務署、都道府県税事務局など、いろんな役所に手続きしにいかなくてはならず、膨大な時間を費やすことになる。

 ただ今回は普段、お世話になっている税理士さんと行政書士さんがいたので、公証役場と法務局、税務署には行ってもらった。しかし、年金事務局と都道府県税事務局に関しては、マイナンバーカードを使った「e-govポータル」から電子申請を行ったのであった。

 結局、どこにも出向くことなく、マイナンバーカードとパソコンだけで法人を成立することができた。

あとで調べたら、デジタル庁では「法人設立ワンストップサービス」というサイトを立ち上げており、マイナンバーカードだけで法人設立に関するあらゆる申請・届け出ができるようにもなっていた。これをもっと先に知っていれば、税理士さんや行政書士さんに頼まなくても良かったかも知れない。

 そんなマイナンバーカードだが、5月11日からはAndroidスマートフォンに搭載できるようになった。iPhoneに関しても、準備が進んでいるとされている。

 しかし、一方で、政府ではスマートフォンの「サイドローディング」を実現させようと動いている。サイドローディングとは、公式のアプリストア以外からアプリをダウンロードできるようにしようというものだ。

 日本の政府としては、グーグルやアップルがアプリストアを独占することで、高額な手数料収入を得ているのはけしからんという理屈のようだ。他のアプリストアがあれば、競争が起き、手数料が下がるのではないか、期待しているようだ。

 しかし、公式のアプリストア以外からアプリをインストールできるようになると何が起こるのか。実際は、ウィルスやマルウェアといったスマートフォンのデータに対して悪さを行うようなアプリが流通し、個人情報が脅かされる可能性が極めて高くなるとされている。

 iPhoneのAppStoreは、アプリの審査が厳しいため、こうした悪さを働くアプリが流通することはない。だからこそ、iPhoneはウィルス対策などをする必要なく安心して使うことができる。iPhoneが登場して15年近く経過するが、大きな問題が起きていないということは、AppStoreがきちんとアプリを審査し、ユーザーを守っている証拠でもある。

しかし、AppStoreを通さなくてもアプリを配信できるようになると、「個人情報が盗まれた」ということにもなりかねない。

今後、マイナンバーカードがiPhoneに入った場合、マイナンバーカードの情報はセキュアエレメントというチップに保管されるので不正利用されることはないとされている。

しかし、将来的にアプリ連携部分で不正を働くアプリが出てくる可能性もあるし、さらに「iPhoneがウィルスに感染すると個人情報が流出する」という評判が流れれば、仮にマイナンバーカードの情報は強固に守られていたとしても、誰もiPhoneにマイナンバーカードを入れようという気にはならないだろう。

日本のスマートフォンユーザーの半分が持つiPhoneがマイナンバーカードに対応すれば、行政サービスのDX化は一気に進み、それこそ役所に行って何時間も待つなんてことからもおさらばできるだろう。

マイナンバーカードのiPhone対応を成功させるためにも、サイドローディングを実現させ、iPhoneに大きな穴を開けるなんてことは辞めるべきだろう。

 

 

ケータイ/スマホジャーナリスト

日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、日経TRENDY編集記者としてケータイ業界などを取材し、2003年に独立。現在は国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップル、海外メーカーなども取材する。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。ニコニコチャンネルでメルマガ「スマホ業界新聞」を配信。近著に『これからの5Gビジネス』(エムディーエムコーポレーション刊)がある。

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