人民元「¥」の表記で20倍の請求を受けないために 知っておきたい悪質通販サイトの手口と対策
カリグラフィーのガイドブックを販売する、日本の通販サイトで商品を買ったはずが…。
すべてが日本語で表示されている販売サイトで、商品に「¥1,680」の値段がつけられていれば、日本円の表記だと思うのが当然です。
しかし国民生活センターに寄せられた相談には、通販サイトから「1,680円」で、ガイドブックを購入したはずの女性が、クレジット決済の明細を見ると、商品の金額が20倍もの「32,916円」の請求になっていたといいます。
日本円(JPY)中国人民元(CNY)とも「¥」で表記のカラクリ
なぜ、こんなことになったのでしょうか。
日本円(JPY)も中国人民元(CNY)も「¥」で表記されます。
悪質な通販サイト業者は、購入者に「円」で購入したと思わせて、実は「人民元」での決済をさせていたというわけです。その結果、20倍もの金額になったわけですが、同センターにはこうした相談が複数あるといいます。
悪質業者の使うダマしの手口とは
そこで、悪質業者の使うダマしの手口と、騙されないための対策を考えます。
まず知っておいてほしいのは「誤認させる」のが、ネットでよく使われるダマしの手口であるということです。
おそらく皆さんのところにも、携帯電話会社や銀行、クレジット会社を騙っての偽メールが届いていると思いますが、これも私たちを本当の会社から来たと誤認させて、偽サイトにアクセスさせ個人情報を抜きとろうとするものです。
被害相談のあった販売サイトを国民生活センターの注意喚起からみてみます。
カリグラフィーの商品を購入するために「カートヘ入れる」をタップさせて、次に進むと、まず「注文概要・クーポン入力 ∨ ¥1680.00」という表示が出てきて、その下には「Eメール」や「配送先住所」として氏名などを記入させるようになっています。
そして「配送方法の選択へ進む」をタップすると、クレジットカード情報を記入させる決済画面となります。そしてクレジットカード情報を入れると、注文完了となります。
「∨」をタップしないと、人民元がわからないようになっている
ここには、カラクリがあります。
先の「注文概要・クーポン入力」の横にある「∨」の部分をタップすると、詳細な表示が出てきて、合計「¥1,680.00」の前に小さく「CNY」と書かれています。つまり人民元であることを表記しているのです。
つまり注文概要「∨」をタップしなければわからないわけで、おそらくほとんどの購入者がその部分をタップすることはないので、円だと思っての購入をさせられることになります。
ここには購入者の目線から本当の金額表示を隠して、ダマそうとする意図が読み取れますので、非常に悪質なサイトといえます。
他の被害が多発している恐れも。身に覚えのある方は、ぜひ確認を
筆者が心配しているのは、すでにこの手口が、カリグラフィーの商品だけではなく、他の商品でも行われているかもしれないということです。
というのも、この通販サイトは、これまでのクレジットカードを抜き取ることを目的にした偽通販サイトの特徴を備えているからです。
今回のサイトでも、正規の金額(¥2,100)に横線をつけて、安い値段(¥1,680)を表示しています。
これはまさに、偽サイトへ購入者を呼び寄せるために使われる手口です。偽通販サイトでは、様々な商品の写真を貼り付けて、たくさんのサイトを表示させて、購入者を募りますので、すでにカリグラフィー以外の商品がすでに存在していてもおかしくないわけです。
さらなる心配は、20倍もの高額請求をされた上に、クレジットカード情報も抜きとられている可能性です。
このサイトはこれまでクレジットカード詐取をしてきた、偽通販サイトの新たな形であるともいえます。
巧妙さ、続々
よほどの知能犯が考えた手口と思われますが、他にも、長年、詐欺事情を見てきた筆者をも唸らせる手口が存在しています。
注文後には「ご注文内容の確認」のメールも届ける用意周到さで、不正の発覚を遅らせる意図を感じます。
また20倍の金額とはいえ、購入者の値段が「3万2,916円」になっている点も巧妙です。
もしこれが数十万円もの高額であれば、クレジット会社から「本当にあなたが買ったのですか?」と連絡がくることでしょう。
しかしこの程度ですと、誰もが購入する金額なので、クレジットカード会社の側でも不正を検知するのは難しいと思われます。購入者、クレジット会社に不正と気づかせない巧みな手口を使っているといえます。
しかも今回は、購入者にPDFでガイドブックを送っているとも聞いていますので、商品を送るという3重の手法で不正の発覚を遅らせている点もみられて、巧みです。
悪質な通販サイトで騙されないために
今後も様々な商品の写真を貼り付けての騙しが通販サイトで行われる可能性はあると思います。「安い」から、すぐにタップしての購入ではなく、その前にちょっと立ち止まって、サイトを良く見るようにしてください。そして必ず、支払いの詳細の部分は見て、特に小さな文字にこそ、注意を払ってください。
またメールアドレスだけしか書いていない通販サイトからは購入しないことも勧めます。
今回の通販サイトも、同センターによると、連絡先としてメールアドレスはあるものの、販売業者の名称、住所、電話番号は表示されていなかったということです。
本来、特定商取引法において、通販業者はサイト上に名称、住所、電話番号などを表示しなければなりませんので、この点の確認は購入前にお願いします。
ただし、これまで偽サイトを調べてきて、住所が書いてある場合もありますが、架空の住所であることもあります。また、電話番号があっても通じないことも多くあります。その辺りにも気を留めて確認するのも良いと思います。
タップするだけで商品を購入できるのが、ネット通販の便利さですが、それを悪用しての手口も出てきています。
初見の業者からの購入の場合には、自分の目で確かめるというワンステップも必要です。
特に、すでにPDFの形で、数千円で商品を購入した覚えのある方は、もしかすると人民元の決済で被害に遭っていることもありえますので、利用明細を早急にチェックすることをお勧めします。