中東でのタンカー攻撃による原油価格への影響
中東の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡近くのオマーン湾で13日、タンカー2隻が攻撃を受けた。報道などによると、砲弾で攻撃されたもようで、船体が大きく損傷。国土交通省は、このうち1隻は日本の海運会社「国華産業」が運航するケミカルタンカーで、複数回の攻撃を受けたと発表した(時事通信)。
この事件に対し、米国のポンペオ米国務長官は記者会見で「イランに責任がある」と主張した。
安倍晋三首相は13日にイラン最高指導者のハメネイ師と会談していた。このタイミングでの、日本の海運会社が保有するタンカーへの砲撃があり、その背景にイランがいるのではとの憶測も広がり、あらためてイラン問題への難しさを浮き彫りにさせたことになる。
イランでは反米感情が強まり、米政権内ではボルトン大統領補佐官など対イラン強硬論が存在する。今回の安倍首相のイラン訪問は米国とイランの仲介を目的としていたようだが、結果として何かしらの進展はあったように見えず、今回のタンカーへの砲撃によって日本を含めてイランへの批判を強める可能性がある。
今回のタンカーへの攻撃により、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡が通れなくなるという不測の事態も招きかねない。特に日本は中東からの原油輸入に頼っている側面もあり、原油の供給が滞りかねない。
13日の原油先物市場ではWTI先物7月限が一時大きく上昇した。WTI先物7月限の引けは、1.14ドルの52.28ドルとなっていた。ただし、その前の日に米国の原油在庫が2017年7月以来の高水準に膨らんだことが嫌気されて、WTI先物7月限は2.13ドル安となっていたため、その分は戻し切れていない。
WTIのチャートからは下落トレンドが止まったように見えなくもない。しかし、まだその判断も早急か。世界的な景気減速により原油の需要が後退してくる可能性も高いが、中東の地政学的リスクの高まりによって供給側に問題が出てくる恐れもある。