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本気走りが楽しいMoto2ベースの3気筒ファイター! トライアンフ新型「ストリートトリプルRS」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TRIUMPH STREET TRIPLE RS 写真出典:Webikeニュース

Moto2エンジンを公道用に最適化

11月の初め、トライアンフの「新型ストリートトリプルRS」のメディア向け試乗会が富士スピードウェイで開催された。日本屈指の高速サーキットでの全力の走りをレポートしたい。

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まず新型はどこがどう変わったのか。2020モデルの最も大きな特徴はMoto2エンジンがベースになっているということだ。

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既報どおり、2019シーズンからロードレース世界選手権Moto2クラスの独占的エンジンサプライヤーとなったトライアンフは、従来型ストリートトリプルRSの水冷3気筒DOHC4バルブ765ccをベースにMoto2エンジンを開発。

動弁系やピストン、クランク、ミッションなどほとんどの内部パーツの改良によりMoto2仕様では140psオーバーの最高出力を実現。そのエンジンを再び公道用として最適化して搭載したのが新型である。つまり、究極の性能と耐久性が求められる最高峰レースでとことん鍛えられて帰ってきたのだ。

ミッドレンジを力強く電制も進化

スペック的にはEuro 5適合はもちろん、79Nm/9,350rpmの最大トルクに加えミッドレンジのトルクを9%増加。最高出力は123ps(91kW)/11,750rpmと数値的には従来と変わらないものの、こちらも同様に中間域で9%高められている。

また、吸排気系の改良により滑らかなレスポンスとクリアな排気音を実現。ボディワークも刷新されLEDヘッドライトや新型サイレンサーなどが採用され、より洗練されたアグレッシブな外観へとアップグレードされた。

足まわりも前後サスペンションにSHOWA製ビッグピストン倒立フォークとオーリンズ製STX40、およびブレンボ製 M50ラジアルモノブロックを採用するなど強化。

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さらにTFT機能も強化されGoPro接続システムなどを搭載、クイックシフターや5種類のライドモードを装備するなど電子制御も進化した。

シャープに彫りも深く洗練された

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まずスタイリングだが、ちょっと見では従来型との違いが分かりづらいのは毎度のこと。派手に外観をいじらず、じっくりと中味を熟成させていくのがトライアンフ流だ。

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でもよく見ると、シャープにエッジの効かせたボディラインとアイブロウのようなDRLが付いたデュアルLEDライトが目に入る。ライポジは低めのワイドバーに高めのシート(825mm)のファイタースタイルで従来どおり。スリムな車体に跨りやや前傾姿勢をとると、それだけでスポーツマインドに火が付く。

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よりパワフルだが滑らかで扱いやすい

排気音は以前よりクリアで雑味が消えた感じ。クランクマスが減ってエンジンパーツの加工精度が上がったからだろう。エンジン回転もより滑らかかつ緻密でシュンシュン回るようになった。

車体のディメンションや前後サスなどの足まわりは従来型RSを踏襲しているようで、軽快なフットワークとしっとりとした“猫足”は健在。最初に走ったショートコースでは中量級ならでは(といってもナナハン以上なのだが)の軽やかなハンドリングが印象的だった。同じトライアンフの3気筒1050ccネイキッドのスピードトリプルと比べてもパワーでは敵わないが、明らかに切り返しが軽く扱いも楽だ。

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従来型と乗り比べてみた感想だが、車体に安定感が増した気がする。きっとパワーの出方がスムーズになったことで、スロットルオフからオンにかけての繋がりが滑らかになり、依って姿勢変化も穏やかになったのだろう。

スロットルも開けやすくなり、中間トルクも増したおかげでコーナー立ち上りでもより強力に加速できるようになったし、同じ理由でスロットルオフでのコーナー進入速度も上がっている。新たにOE装着されたピレリ・ディアブロ・スーパーコルサSP V3の威力もたしかにあると思うが。

240km/hオーバーから余裕で減速

本コースではさらに高速安定性が際立った。車体から受けるフィーリングはしなやかで、ガチッとした剛性感ではないのだが、それでも富士SWの超高速コーナーでも不安は一切なかった。

最初はスポーツモードで走っていたが、ほぼ全てのコーナーの立ち上がりでトラコンのインジケーターが点滅してしまう。自分では気づかないがスライドが始まろうとしているのをマシンが感知して介入しているわけだ。

タイムラグもなくかなり高精度とみた。その分、立ち上がりの加速が一瞬鈍るので、試しに最強のトラックモードにしてみるとこれがドンピシャ。9%増量した図太いミッドトルクを余すことなく路面に叩きつけながらぐんぐん加速。1.5kmのホームストレートでは、より見やすくなったTFTメーターの数字が240km/hに達するのが確認できた。

スポーツするのが最高に爽快で楽しい

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クイックシフターはアップ&ダウン対応でしかもクラッチにはスリップアシスト機構が装備されているためコーナリング中のシフトアップも思いのまま。コーナー手前ではノンクラッチのままガツガツとギヤを落としても大丈夫など、走行中はほぼクラッチ操作が必要ないのも強み。

これはサーキット走行では大いに助かるし安心である。もちろん、ブレンボ製ラジアルポンプ&キャリパーの“真綿でジワッと絞める”ようなシュアなタッチと強力な制動力も素晴らしく、187kgの軽量コンパクトな車体と相まってストレートエンドの150m看板過ぎからでも十分な余裕をもって減速させることができた。

サーキット試乗会ということで、ついついスポーツ性能に偏った評価になってしまうが、逆に言えばそこが新型ストリートトリプルRSの真骨頂。走りの爽快感や楽しさは掛け値なしである。さすがはMoto2由来のサラブレッドだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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