グレタさんも抗議!女性達の首を絞める、投げ飛ばす―ドイツの「ナチス化」に国内外から批判 #ガザ
二度の大戦、そしてナチスの反省から、平和と人権を尊ぶ国-戦後、ドイツが内外に示してきた同国のイメージですが、それは、ガザ攻撃のあまりの悲惨さに世界が憤る中、露骨なイスラエル支持を続ける中で、最早、崩れ去ったと言っても過言ではないでしょう。
ドイツはイスラエルに兵器やその部品を提供し続け、同国の警察はデモの参加者を激しく暴行する等、ガザ攻撃反対運動を弾圧しています。そうした中、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは先日、ドイツを訪問し、ガザ攻撃反対デモへの弾圧やイスラエルへの兵器輸出を批難しました。
*本稿は、theletter で志葉が書いた記事を転載したものです。
https://reishiva.theletter.jp/
〇イスラエルのプロパガンダに毒されるドイツ
「かつてユダヤ人を迫害し大量虐殺してしまったことから、現代においてもドイツではイスラエルを批判し難い」―脱原発取材でドイツを訪れた際、現地の国会議員がパレスチナ問題に目をつむるドイツ政界について志葉に言った言葉を、ガザ攻撃が始まった昨年10月以降、度々、思い出します。
一方で、かつて志葉がガザで出会ったユダヤ系米国人の活動家もそうであったように、イスラエルによるパレスチナ占領や虐殺に反対し、抗議するユダヤ人の人々は大勢います。イスラエルが行っている国際法違反や戦争犯罪への批判は、反ユダヤ主義とは全く異なるものであるにもかかわらず、前者と後者を混同させるのが、イスラエルのプロパガンダです。そして、このプロパガンダに最も影響されている国がドイツでしょう。
〇異常なまでのイスラエル擁護
ハマスによる越境攻撃を受け、イスラエルがガザへの大規模攻撃を開始した際、それが未曽有の人道危機になることは容易に想像できたにもかかわらず、ドイツは露骨にイスラエルを支持しました。そして、避難所となっている国連管理の学校や病院が攻撃されるなど、イスラエルが戦争犯罪を繰り返しているのは、誰の目にも明らかであるにもかかわらず、ドイツのショルツ首相は、「イスラエルは国際人道法を遵守している」と、事実と全く乖離した発言をするなど、なりふり構わずイスラエルを擁護し続けてきました。
他方、ドイツにおいてもイスラエルのガザ攻撃は容認できないという人々もいて、抗議デモが行われていますが、これらのデモに対するドイツ当局の弾圧が「まるでナチスの様だ」とドイツ国内外で批判されています。ドイツでは、同国憲法によって、「すべてのドイツ国民は、事前の通知や許可なしに、平和的に非武装で集会する権利を有する」(ドイツ基本法第8条第1項)とされており、デモや集会には、ユダヤ人の平和運動家達も参加しているにもかかわらず、パレスチナ連帯のデモは「反ユダヤ主義」なものになりやすいとして、昨年10月以降、各地で行政裁判所の略式手続きで禁止されるということが相次いでいるのです。また、警察もその判断でデモを解散させることができるとされ、実際にデモを解散させています。
〇デモ参加者に激しい暴行
ドイツの中でも、特に首都ベルリンでは、警察によるパレスチナ連帯デモ参加者への激しい暴力が繰り返されており、アルジャジーラやトルコ国営放送等、中東系の各メディアが報道し、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルのEU支部も独立した調査を求めるまでになっています。デモ参加者らが撮影し、SNSに投稿された映像では、
・プロレス技のヘッドロックのように警察官が女性の首を絞めながら振り回し、投げ倒す
・女性を背後から警察官が思い切り突き飛ばす
・警察官が女性の首と腕関節を締め上げて連行
・警察官達が青年を地面に引き倒し、殴りつけたり、首を絞めたりする
・パレスチナの旗を持った少年を警察官達が追い回し、逮捕する
等の暴力的な振舞いが映っており、「恥を知れ」「ナチスが戻ってきた」「ドイツは今なおナチス」「ファシスト!」等、ベルリン警察やドイツ政府に憤るコメントが多数書き込まれています。
〇グレタさんもドイツ政府への抗議を呼びかけ
当局の弾圧にもかかわらず、ドイツでは集会やデモが続けられ、そこに子どもや若者の視点から温暖化対策を求め、世界の政治や社会に大きな影響を与えた環境活動家グレタ・トゥーンベリさんも参加しようとしました。ところが、グレタさんが参加する予定だった、ドイツ北西部の都市ドルトムントでのパレスチナ連帯キャンプは、それが過去4カ月間続けられていたものであったにもかかわらず、グレタさんの参加の直前に、強制撤去されたのです。これについて、グレタさんは自身のX(旧ツイッター)やインスタグラムで「もし、パレスチナ連帯キャンプに参加するなら逮捕する」とドイツ警察当局に脅されたことを明かした上で、「ドイツ政府は人々を黙らそうとしている」「パレスチナでの虐殺と占領に反対の声を上げた活動家たちが直面している弾圧に、私たちは立ち上がらなければなりません。ドルトムントでも、ドイツ全土でも、そして世界中でも。私たちは沈黙しません。パレスチナに自由を」と訴えました。
〇ドイツからの兵器がガザの人々を殺す
また、グレタさんは独立系メディア「red.」に対し、「ドイツはイスラエルのアパルトヘイト的なパレスチナ占領や虐殺に加担している」とコメント、ドイツのイスラエルへの軍事協力を批判しました。
グレタさんが指摘するように、ドイツは米国に次ぐ規模でイスラエルに兵器を供給しています。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2019年から2023年までのイスラエルの兵器輸入のうち、ドイツからのものは約30%を占めるとのこと。とりわけ、昨年10月以降、ドイツからのイスラエルへの兵器輸出額は急増し、一昨年が3,850万ユーロ(約62億8600万円)であったのに対し、昨年は3億2650万ユーロ(約533億円)にまで跳ねあがりました。この中には、防空システム関連の他、戦車砲弾や戦車用のエンジン、小火器、銃弾や軍用車両なども含まれているとのことです。つまり、米国産、イスラエル産の兵器のみならず、ガザの人々はドイツ産の兵器によっても殺されてきたのです。
一方で、実は今年3月以降、ドイツ政府はイスラエル向けの兵器の輸出の認可を行っていません。これは、国際司法裁判所(ICJ)が今年1月、イスラエルに対し、ガザでのジェノサイド(集団虐殺)を防ぐためにあらゆる対策を講じるよう暫定命令を下したことや、今年4月に欧州憲法人権センター(ECCHR)やパレスチナ人権センター(PCHR)などが「イスラエルへの兵器輸出は国際法に違反する」として起こした訴訟の影響があると見られています。
ただ、今月10日、ドイツのショルツ首相は、イスラエルへの武器輸出で近く、追加供給を行う意向を明らかにしています。1万6000人を超える子ども達を殺し、病院や国連の施設も攻撃、援助物資の搬入も阻害されるなど、ガザ攻撃がジェノサイドに類するものであることは明白となっている、この期に及んでなお、国内で反戦運動を弾圧し、イスラエルに兵器を輸出しようとするドイツ。最早、文明国のやることだとは思えません。グレタさんが訴えるように、日本も含む国際社会はイスラエルやドイツの政府に強く抗議するべきでしょう。
(了)